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2016年度「コンプライアンス違反」倒産動向

 2016年度(2016年4月-2017年3月)に業法・法令違反や脱税、粉飾決算、偽装など「コンプライアンス違反」が一因になった倒産は178件(前年度191件)発生、2年連続で前年度を下回った。
 企業にコンプライアンス順守の意識が浸透すると同時に、全体の企業倒産が各種支援策に支えられて低水準をたどり、コンプライアンス違反が一因となった経営破綻が表面化しにくい状況も影響しているとみられる。
 2016年度の違反内容別では、明らかな業法・法令違反、脱税・滞納など「税金」関連が増加した。大手企業を中心に、好業績が目立つなかで、経営不振から抜け出せず苦境が続く中小企業の一面を浮き彫りにしている。


  • ※本調査の「コンプライアンス違反」倒産は、建設業法、医師法などの業法違反や特定商取引法などの法令違反、粉飾決算、脱税、詐欺・横領、不正受給などを対象に、2016年度の倒産企業から抽出した。

リスク管理としての「コンプライアンス」

 企業経営では「コンプライアンス(法令遵守)」が重要視されている。直接的な法的違反でなくとも、「倫理や社会貢献などに配慮した行動」に反した社会的な不適切行為は、消費者、取引先などの信頼を失い、業績悪化や事業継続が困難に至るケースも多い。規模を問わず、企業にとってコンプライアンスはリスク管理という観点から経営の最重要課題として認識されつつある。

「コンプライアンス違反」倒産は178件、2年連続減少

 2016年度に「コンプライアンス違反」が一因となった倒産は178件(前年度比6.8%減、前年度191件)で、2年連続で前年度を下回った。コンプライアンス意識の浸透と同時に、緩やかな景気回復と金融機関が中小企業のリスケ要請に柔軟に応じるなどの政策効果もあって企業倒産を抑制しており、「コンプライアンス違反」企業の経営破綻が表面化するケースが少なくなっているとみられる。
 しかし、中小企業は大手に比べ業績回復のピッチが鈍く、今後の景気動向によっては「コンプライアンス」違反が露呈して経営破綻するケースが増える可能性も残している。

コンプライアンス違反関連倒産 月次推移

違反内容別、「業法・法令違反」や「税金」関連が前年度より増加

 コンプライアンス違反で倒産した178件を違反内容別でみると、建設業法や医師法などの業法違反、金融商品取引法や特定商取引法などの法令違反、行政処分、代表者の逮捕などを含む「その他」が79件(前年度比12.8%増、前年度70件)で最多だった。
 次いで、脱税や滞納などの「税金関連」が64件(同25.4%増、同51件)で、この2要因だけが増加し全体の8割(構成比80.3%)を占めた。
 一方、補助金や介護・診療報酬などの「不正受給」が11件(前年度比21.4%減、前年度14件)、不正な会計処理や虚偽の決算書作成などの「粉飾」が10件(同64.2%減、同28件)、賃金未払いや最低賃金法などの「雇用関連」が前年度同数の9件だった。雇用調整助成金の不正受給の動向が注目されていたが、「不正受給」は11件で21.4%減少した。

脱税や滞納、「税金」関連のコンプライアンス違反の動向に注目

 2016年8月に国税庁公表の「2015年度租税滞納状況」によれば、税金の滞納残高(国税が納期限までに納付されず、督促状が発付された金額)は、1999年度以降、17年連続で減少し、ピーク時(1998年度、2兆8,149億円)の34.7%にとどまっている。
 しかし、2015年度の新規発生滞納額は、前年度より16.1%増加し、税目では消費税の割合が高くなっている。消費税の滞納は、預かり消費税の運転資金などへの流用も指摘されており、緩やかな景気回復の動きが企業全般に行き届いていない可能性もある。脱税や滞納などは業績不振が背景にあることも多いだけに、今後も脱税や滞納など「税金」関連のコンプライアンス違反の動向には留意することが必要だ。

負債5千万円未満の小規模倒産が2割を占める

 コンプライアンス違反で倒産した178件の負債総額は、1,145億7,000万円(前年度比59.2%減、前年度2,809億8,000万円)と大幅に減少した。前年度は年金資産消失事件を引き起こした(株)MARU(旧・AIJ投資顧問)(負債1,313億円)の大型倒産で負債総額が膨らんだのに対して、2016年度は負債5千万円未満が36件(構成比20.2%、前年度30件)と小規模倒産が2割を占め、さらに負債10億円以上の大型倒産は26件(前年度比18.7%減、前年度32件)と減少したことが影響した。

産業別、サービス業他が最多の63件

 産業別では、サービス業他が63件(構成比35.3%)で最も多かった。次いで、建設業26件、製造業25件、卸売業20件、小売業18件、運輸業12件、情報通信業7件、不動産業6件、金融・保険業1件だった。
 最も多かったサービス業他では、医療、老人福祉関連が12件、飲食業関連が10件、労働者派遣業が6件、ホテル・旅館が4件など。これらの中には、経営不振から介護報酬や診療の不正請求などに手を染めたケースや飲食業での食中毒事故などがみられた。

主な倒産事例、老舗企業や有名出版社も

 主な倒産事例では、社長交代で過去の簿外債務など不適切な会計処理が表面化した、昭和25年創業で老舗の非鉄金属専門商社だった藤崎金属(株)(TSR企業コード:291048676、東京、負債17億7,400万円、破産)。
 日用雑貨品店「Plus Heart」を中心に、異業態店舗を直営92店舗、FC店28店舗を展開しながら、粉飾決算を続けていた(株)プラスハート(TSR企業コード:571286518、大阪、同40億円、民事再生法)。
 元代表らが定期購読者に対して儲け話を持ちかけ、出資法違反容疑で逮捕された雑誌出版の(株)ニュートンプレス(TSR企業コード:291863663、東京、同18億3,600万円、民事再生法)。
 震災復興関連の補助金の不正受給が発覚した、大型インクジェットプリンター製造販売の(株)ルキオ(TSR企業コード:295863617、東京、同27億7,400万円、破産)など。

介護福祉業界 倒産急増の陰で増加する不正行為

 2016年の老人福祉・介護事業の倒産は、2000年の調査開始以来、最多の108件と急増したが、介護福祉の現場ではコンプライアンス違反が増えている。
 2017年3月に公表された厚生労働省の調査によれば、2015年度に介護報酬の不正請求や法令違反で介護保険法に基づき指定取消などの処分を受けた施設や事業所は過去最多の227カ所にのぼった。指定取消の理由は、「不正請求」が最も多く、「書類提出命令に従わない」「虚偽報告」が続く。
 倒産事例では、サービス付き高齢者向け住宅を経営していた(株)エヌ・ビー・ラボ(TSR企業コード:363772618、神奈川、負債14億2,000万円)は、2016年8月に虚偽申請により介護報酬を不正に請求したとして、埼玉県から介護保険事業者等の指定取消処分を受けた。この結果、信用失墜に拍車がかかり破産を申請した。


 コンプライアンスの徹底が金融機関の融資継続の条件や、企業間の取引条件にも重要な要素になっていながら、コンプライアンス違反企業は後を絶たない。
 3月27日に破産申請した格安旅行会社の(株)てるみくらぶ(TSR企業コード:296263001)は、昨年9月末時点ですでに約75億円の債務超過に陥っていたが、財務内容を隠ぺいしたまま破産直前まで営業を続け、約9万人にのぼる被害者をトラブルに巻き込んだ。さらに複数の粉飾した決算書を作成していた。
 倒産企業では、長引く経営不振から「背に腹は変えられず」不正に手を染めた企業も少なくないが、金融機関や取引先に正確な情報開示がこれまで以上に求められる時代では、一時しのぎはできない。コンプライアンス違反倒産の動向は、景気回復の波に乗れずに業績改善が遅れた企業の一端を映す「鏡」ともなるだけに、今後の動向を注視する必要がある。

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