知りたい項目を押さえる

取引先企業の情報をどこから入手するのか。企業情報は多岐に渡って存在しているのですが、実は与信管理に必要な情報の多くは、社内で賄えることが多いのです。最終判断に必要な情報の種類と入手先を整理します。

企業情報の入手先

通常、取引先のどこを見ればよいでしょうか。利益を出していればよい、自社ビルだったら大丈夫!審査業務がルーチン化されてしまい、決まった項目ばかりを見ているのではないでしょうか。まずは企業情報を取得する上でどこに必要な項目があるのか、今一度整理しましょう。取引先の企業情報の入手方法を大きく3つに分けると下記のように分類されます。

取引先の企業情報の入手方法

このように企業情報の所在は多岐に亘ることがわかります。
ここで注目していただきたいのは、上記項目のうち社内で賄える項目がたくさんあるということです。外部機関に審査業務の一部を担ってもらうことはコストの削減に繋がりますが、最終判断を行うのは審査の責任者や経営者になります。

最初にアプローチをかけるのは、営業担当者です。成約をして、継続的に取引を行うことが最終的なゴールとなりますが、ただ闇雲に案件を取って来るだけではいけません。支払い能力があるかどうかを直感的に判断することが営業担当者の隠れた業務でもあります。新規・継続取引に関わらず、アプローチ先がどのような企業体質であるのか、多角的な視点から判断するにはどうすればいいのでしょうか。

○○が知りたい!!

既存取引先については社内に多くの情報が蓄積されているため関係部署(経理部・営業部など)が保有する情報を調査します。特に担当者個人がさまざまな情報を保有している場合もあるため、本人に面談し情報を聞き出すことも肝要です。

基本情報

  • 営業部門では… 事前に公式な企業ウェブサイトの有無を確認して、訪問時に商品パンフレットや会社案内をもらうよう心がけましょう。
  • 経理部門では… 入手項目の信憑性を調べるために、まず本社所在地は商業登記簿に記載されているものと同一であるか、公表の役員名に差異は無いかなど調べることが基本です。この作業により実質的な会社経営者がほかに存在した、など重要な情報が発覚することがあります。
東京商工リサーチでは、基本項目は「インターネット企業情報サービス(tsr-van2)」をご用意しています(企業情報は1,200円/社)。

財務内容

  • 営業部門では… ベストは決算書(事業報告書)をもらうことですが、決算書をもらう仲になるまで付き合いを深めるのは相応の時間を要します。そこで訪問した際にその企業の財務内容や資金繰りを把握する手がかり、を商談の中で見出すことが重要です。利益率や決済状況、所有不動産、在庫など、どんな些細なことでも構わないので、目で見て、耳で聞き、肌で感じた情報を審査担当者と共有することがポイントです。
  • 経理部門では… 現場の意見を収集したうえで、どれだけ数字を把握・推定することができるかが、命題になります。決算書を入手できずとも、決算公告の有無確認や、Webサイト中で売上高だけでも把握することで、業界水準値との比較ができます。
東京商工リサーチでは、「tsr-van2」のメニューに財務分析表をご用意しています。既に仕入れている情報と仕入れることができなかった情報をうまく使い分けましょう。そのほか業界財務の平均数値が記載されているCD-Rはベンチマークとして有効です。  中小企業経営指標

代表者情報

  • 営業部門では… 担当が社長でない場合でも先方社長の人柄や性格、経歴全般のヒアリングを心がけましょう。
  • 経理部門では… 取引先経由の評判やWebサイト上の情報を収集します。有名企業でなくとも、業界紙や新聞に有効な情報が記載されている場合があります。
東京商工リサーチでは、全国の調査スタッフが取材した情報をファイルにて用意、代表者の学歴や趣味などを収録しています。 TSR企業情報ファイル

取引先情報

  • 営業部門では… 付き合いの長い同業者に評価をヒアリング。
  • 経理部門では… 取引開始経緯や取引条件、今までの決済状況などを確認します。
東京商工リサーチでは、「tsr-van2」の企業相関図を見ればバッチリ。仕入先・販売先ともに2次先まで見ることができるため、潜在的なリスクの洗い出しが可能です。

そのほか、支払い振り(checkポイント:同業者評価、資金の流動性、月商何カ月分のキャッシュを持っているか)、同業者情報(checkポイント:取引先の評価、噂)、資本背景(実質的なオーナーの特定、商業登記簿での比較)など、の項目も重要で、上記に挙げた項目はすべて「TSR REPORT」に収録されています(※取材状況により収録項目は異なる)。

Point

入手情報を分類・整理し、欲しい項目に対してどの情報を用意すればよいか、精査することで、これまで気に留めることのなかった小さな情報の間に関連性を見出すことが、倒産シグナルを見つける近道となります。

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