ミュゼプラチナム、支払い遅延と資金調達 ~運営会社「MPH」三原社長、単独インタビュー~ 2024/12/16
脱毛サロン大手「ミュゼプラチナム」の運営会社社長・三原孔明氏と幹部が東京商工リサーチ(TSR)の単独取材に応じた。サロンの運営母体と株主は幾度となく変わってきたが、現在はMPH(株)(TSR企業コード:036547190、東京都港区)によって運営されている。
「ミュゼプラチナム」を巡っては、10月24日に破産開始決定を受けた船井電機(株)(TSR企業コード: 697425274)との関係性を指摘する情報が拡散している。また、給料遅延や家賃滞納などの情報もある。三原社長は、「給料などの支払遅延は事実」と認めた上で、「(現運営会社は)船井電機とは一切関係ない。資金繰りは回復しており、反転攻勢を目指す」と意気込みを語った。
MPHの三原社長、取締役の惠良司氏など幹部のインタビュー要旨は以下の通り。
※インタビューは12月5日に実施。
―MPHが事業を承継した経緯は
船井電機が破産開始決定を受ける前の2024年9月、MPHは(株)ミュゼプラチナム(TSR企業コード: 035757078)※1から事業を引き継いだ。承継前の運営会社は多額の負債を抱え、民事再生など法的整理の話もあった。だが、グローバルブリッジファンド合同会社(TSR企業コード:698497082、千代田区、以下GBF社)が、事業としての「ミュゼプラチナム」の再建に手を貸してくれた。知見のあるメンバーを含めて事業を再出発させた。
―債務の支払遅延による差押の話がある
過去の運営会社から株式分割によりMPHが設立されており、大半の債務は引き継いでいない。取引を継続するため、化粧品や物流など取引先への債務はMPHが引き継いでいるが、公租公課は引き継がない形式だった。
一方、分割前の法人が残した社会保険料の滞納については、社会保険庁(日本年金機構)と見解に相違があった。前提として、我々は適法に連帯債務を負わない方法で会社分割をしており、船井電機グループだった「ミュゼプラチナム」運営2社目の(株)MIT(TSR 企業コード:300036639、大田区)の負債はMPHが負うものではないと認識している。一方、社保庁はそうではないという意見で、我々の信販会社やクレジット会社の口座に差押が入り、一時的に資金繰りが悪化した。「税金逃れ」のような言われ方をしているが、その点については見解が異なる。
信販会社などにご理解をいただき、クレジットカードが使えないということはない。支払いを求められている社会保険料については、差押口座の残高が滞納額に達した。このため、これからは売上を運転資金に使うことができる予定だ。
―売上や集客の状況は
サロンの売上は2種類ある。新規顧客売上と既存顧客売上だ。前者は広告費に比例して伸びる。ただ、新規のみに頼る営業手法では運営を維持することは難しく、既存顧客売上を柱として構築しなくてはならない。
2024年10月の既存顧客売上は、前年同月比で約2.5倍となった。脱毛以外のフェイシャルメニューの販売が主体だ。現在、広告費を豊富に支出できてはいないが、今後、通常通りに広告費をかけると黒字化できる。先月も全国の店長と会い、研修を開催した。モチベーションも向上している。
―従業員給料や家賃の支払い状況は
経営の安定化と事業の成長に向けて資金調達の準備を進めており、社保庁からの差押を考慮しても支払う準備はできていた。だが、船井電機に関する報道やSNSで誤った内容を含む情報が拡散されたことを受け、予定していた出資者からの入金が一時中断した。給料日前日(11月24日)にまとまった金額を入金いただく形で出資者と調整していたが、土壇場になって追加の説明資料が必要となった。
給料が遅配した11月25日以降の現場トラブルはゼロではなかったが、全従業員に社長名でお詫びのメッセージを出し、12月2日に従業員の疑問に回答した。12月5日で(支払予定給与額の)80%を支払い、12月6日には払い終わる。給料の遅配で困窮する従業員には、救済窓口を設けてフォローしている。
テナント家賃などの支払い遅延も12月中旬には解消予定だ。
―現在のサロンの運営状況は
現在、「ミュゼプラチナム」の店舗は166店舗ある。2024年2月に「キレイモ」※2を承継するなど店舗が重なる首都圏、関西圏は店舗数が少し過剰なため、調整していく。脱毛機械の性能が向上し、従来の約1.5倍の処理能力になり、150くらいが適正な店舗数と考えている。
また、設備はあるが、スタッフが足りず稼働できていない店舗もある。エリアごとの商圏や人員配置の観点からも150店舗が適正と思う。従業員のリストラはまったく考えていない。
―今後の資金調達は
投資家からこれから資金が入ってくる。ミュゼは、毎月最低でも15億円くらいは資金が必要だ。12月の資金調達はクリアできる見込みで、今後キャッシュフローが安定し、年内に正常化を目指す。
資金調達は、GBF社を窓口として一本化し、GBF社経由で個人の投資家からも資金を調達している。
SNSなどを中心にネガティブな情報が広まっているが、反転攻勢をかける。積極的に正常な情報を発信していく予定だったが、正直そこまで手が回らなかった。
さらなる新設分割の予定はない。美容脱毛業界は、競合他社が減少しており、残存者利益が見込める。美容脱毛+フェイシャルなども含めた総合エステ化を目指す。累計の顧客数は約450万人で、過去3カ月以内に来店したアクティブ顧客は約100万人いる。その部分をしっかりとマネタイズしていく。
※1 脱毛サロン「ミュゼプラチナム」3社目の運営会社。
※2 GFA(株)(TSR企業コード: 295641762)より承継。
2024/12/16
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年12月13日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)
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