全国企業倒産状況

2016年11月の全国企業倒産693件

2016年11月の倒産

倒産件数が693件 11月としては26年ぶりに700件を下回る

 2016年(平成28年)11月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が693件、負債総額は5,944億8,400万円だった。
倒産件数は、前年同月比2.5%減(18件減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。11月としては1990年(633件)以来、26年ぶりに700件を下回る低水準。依然として、金融機関が中小企業のリスケ要請に対応しているほか、財務内容に改善の兆しがみえる企業への貸出増も影響しているとみられる。
一方、負債総額は、前年同月比319.6%増(4,528億3,400万円増)と大幅に増加した。月次負債が5,000億円を上回ったのは、2013年4月(負債6,859億8,700万円)以来、3年7カ月ぶりのこと。増加要因としては、プラズマテレビ・ディスプレイ製造のパナソニックプラズマディスプレイ(株)(大阪・負債5,000億円)が特別清算を申請し、製造業としては戦後最大の倒産が発生したことが影響した。この1件だけで、11月負債総額の8割(構成比84.1%)を占めた。ただし全体としては、負債1億円未満が500件(構成比72.1%)と7割を占め、依然として小規模倒産が過半であることに変化がない。

企業倒産月次推移


  • 大型倒産:製造業としては戦後最大となるパナソニックプラズマディスプレイ(株)(負債5,000億円)が特別清算を申請
  • 従業員数別:5人未満の構成比が74.0%、8カ月連続で70%を上回る
  • 法的倒産の構成比が90.7%、3カ月連続で高率の90%台
  • 原因別:「事業上の失敗」が前年同月より4割増(前年同月比40.9%増)
  • 「チャイナリスク」関連倒産が13件、6カ月ぶりに前年同月を上回る
  • 「熊本地震」関連倒産が1件発生、累計9件
  • 業種別:老人福祉・介護事業(4→9件)、飲食業(43→57件)などで増加
  • 中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)が、4カ月連続ですべて(構成比100%)

産業別 10産業のうち5産業で件数増加 運輸業が今年最多

 2016年11月の産業別倒産件数は、10産業のうち5産業で前年同月を上回った。
このうち、飲食業や老人福祉・介護事業などを含むサービス業他が180件(前年同月比10.4%増)で4カ月連続で前年同月を上回った。また、件数は少ないが農・林・漁・鉱業が8件(同100.0%増)で3カ月連続の増加。情報通信業が31件(同29.1%増)で2カ月連続の増加。卸売業が118件(同7.2%増)で3カ月ぶりの増加、運輸業は今年最多の30件(同15.3%増)で4カ月ぶりに前年同月を上回った。
一方、不動産業は24件(同7.6%減)で6カ月ぶりに前年同月を下回った。また建設業125件(同9.4%減)と小売業91件(同6.1%減)はともに3カ月連続の減少、製造業が今年最少の84件(同25.0%減)で2カ月連続で減少した。金融・保険業が2件(同81.8%減)で2カ月ぶりに前年同月を下回った。

2016年11月の産業別倒産

産業別倒産月次推移

地区別 東北の倒産件数が5カ月連続で前年同月を上回る

 2016年11月の地区別件数は、9地区のうち東日本の4地区で前年同月を上回った。
増加地区の内訳は、東北が29件(前年同月比3.5%増)で5カ月連続で前年同月を上回った。また、北海道21件(同40.0%増)で4カ月ぶり、関東290件(同1.0%増)と中部88件(同7.3%増)は、ともに3カ月ぶりに増加に転じた。産業別では、東北が運輸業(ゼロ→3件)や不動産業(1→3件)などで増加をみせた。また、北海道は小売業(2→6件)、関東では、卸売業(43→65件)や運輸業(10→14件)の増加が目立ち、中部は、飲食業などを含むサービス業他(17→33件)で件数を押し上げた。
この一方、近畿166件(前年同月比9.7%減)と北陸13件(同27.7%減)および四国10件(同23.0%減)は、2カ月連続で前年同月を下回った。九州が51件(同13.5%減)で2カ月ぶりに減少した。このほか中国が前年同月同数の25件だった。

2016年11月の都道府県別倒産

地区の範囲は以下に定義している。

  • 東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
  • 関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
  • 中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
  • 北陸(富山、石川、福井)
  • 近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
  • 中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
  • 四国(香川、徳島、愛媛、高知)
  • 九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)

当月の主な倒産

[負債額上位5社]

  1. パナソニックプラズマディスプレイ(株)/大阪府/プラズマテレビ・ディスプレイ製造/5,000億円/特別清算
  2. エヌエー工業(株)/兵庫県/アルミスラグ製造加工/54億4,700万円/特別清算
  3. 千代田産業(有)/栃木県/パチンコホール経営ほか/54億4,200万円/破産
  4. 南部バス(株)/青森県/路線バス・高速バス事業ほか/26億円/民事再生法
  5. 岩田光学工業(株)/秋田県/各種レンズ製造/20億1,200万円/民事再生法

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ