こうして倒産した

2012年(平成24年)3月度こうして倒産した・・・
新藤電子工業(株)
  • 東京
  • 電子回路開発製造
負債総額
266億5000万円
 

 新藤電子工業(株)(TSR企業コード:290897963、墨田区横網1-10-5、設立昭和46年10月、資本金2000万円、田中規幸社長、従業員370名)とグループ7社の計8社は、3月9日に東京地裁に会社更生法の適用を申請した。監督委員兼調査委員は長屋憲一弁護士(千代田区平河町2-4-13、電話03-5226-1122)が選任された。新藤電子工業(株)の負債総額は、グループ会社間の相互の債務保証を含めて266億5000万円。

 新藤電子工業は、電子部品のTABテープ(液晶パネルの表示用半導体)のパイオニア企業で、グループに印刷、製版、不動産業ほかの企業を抱えていた。デジタル機器や携帯端末に使用されるパッケージ基盤であるTABテープを主力商品とし、千葉県柏市、茨城県那珂市に工場を開設。大手家電メーカーなどを販売先に、ピークの平成13年1月期の年商は277億9817万円を計上していた。その後、業績は一進一退で推移したが、同19年3月期(同15年から決算期変更)は家電メーカーなどの在庫調整や製品不具合などで売上高は前期比64.7%に落ち込んでいた。さらにリーマン・ショックのほか、円高影響や海外メーカーとの価格競争で同23年3月期の売上高は92億1500万円にまで落ち込み、採算も悪化していた。

 なお最近は液晶パネルメーカーの内製化や薄型テレビの価格下落により、国内の液晶フィルム基盤メーカーが液晶パネル用フィルム基盤事業から相次いで撤退し、新藤電子工業が国内では唯一のメーカーだった。

【同時に会社更生法を申請した7社は下記の通り、負債は相互の債務保証分を含む】

(1)(株)新藤(TSR企業コード:290079594、オフセット印刷、同所、設立昭和20年6月、資本金3000万円、同社長、負債270億200万円、従業員74名)

(2)新藤販売(株)(TSR企業コード:296097896、紙工品製造販売、同所、設立平成16年8月、資本金1000万円、同社長、負債241億円、従業員21名)

(3)日星ビスコム(株)(TSR企業コード:295562536、写真製版、同所、設立昭和46年11月、資本金1000万円、同社長、負債239億2400万円、従業員30名)

(4)新藤テクニクス(株)(TSR企業コード:294113592、ラベルシール印刷、同所、設立昭和55年12月、資本金2000万円、同社長、負債241億9100万円、従業員11名)

(5)東京保全(株)(TSR企業コード:291244157、不動産管理業、同所、設立昭和22年10月、資本金1000万円、同社長、負債243億3300万円)

(6)新藤マイクロテクニカ(株)(TSR企業コード:293732388、電子部品製造、同所、設立昭和52年8月、資本金1000万円、同社長、負債17億円、従業員42名)

(7)新藤アセット(株)(TSR企業コード:291501370、不動産賃貸・管理業、同所、設立昭和50年5月、資本金1000万円、同社長、負債6億5000万円)

(株)C&I Holdings
  • 東京
  • 持株会社
負債総額
66億1300万円
 

 (株)C&I Holdings(TSR企業コード:570975018、台東区寿1-5-10、設立昭和56年11月、資本金147億2179万円、松本信彦社長、従業員7名)は、3月12日に東京地裁に民事再生法の適用を申請した。監督委員には渕上玲子弁護士(日比谷見附法律事務所、千代田区有楽町1-6-4、電話03-3595-2062)が選任された。日本振興銀行関連で破綻した上場企業(廃止を含む)は、中小企業信用機構(株)(平成23年1月、民事再生法申請、ジャスダック)以来で3件目。負債総額は66億1300万円。

 同社は、中堅中小企業の情報サービスを目的に(株)ベンチャー・リンクとして昭和61年3月に設立された(平成6年6月、株式の額面金額変更のため昭和56年11月設立の同名会社を存続会社として合併)。会費制の会員企業に対し、ビジネスマッチングの相手企業紹介や教育研修、コストダウン提案などを行う事業を主力としてきた。平成4年にはレストランFC加盟店の募集代行業務を開始。同11年にはベンチャーキャピタル事業会社のリンク・インベストメント(株)を完全子会社化するなどで業容を拡大し、同13年には東証1部に上場。同14年5月期にはピークとなる年商約202億9400万円を計上していた。

 しかし、景気低迷で顧客中小企業の厳しい事業状況が影響し、平成15年5月期の年商は約157億1500万円に減少。営業赤字から最終利益も赤字を計上し、以降も売上は低迷し利益は殆どの決算期で赤字となっていた。このため同21年2月には日本振興銀行などと業務提携、中小企業振興ネットワークに参加していたものの、同21年12月期(同18年に決算期を12月に変更)の年商も約20億5400万円に落ち込み、27億2100万円の大幅赤字を計上。売上高減少、連続赤字などにより継続企業の疑義注記(GC注記)が付されていた。同22年9月1日には、商号をベンチャー・リンクから現商号に変更すると同時に、会社分割して新たに(株)リンク・インベストメントおよび(株)FCエデュケーションを設立。それまでの(株)リンク・インベストメントを(株)ベンチャー・リンクに商号変更し、当社は持株会社として、傘下にベンチャー・リンク(株)、FCエデュケーションなどの企業を抱える形に業態を変えていた。

 しかし、融資を受けていた日本振興銀行が平成22年9月10日、民事再生法の適用を申請し経営破綻したことを契機に新規融資が見込めなくなった。このため、事業を縮小し再建を目指してきたものの、同22年12月期は年商14億2987万円に対し赤字28億4841万円を計上、債務超過を理由に2011年10月には上場廃止となっていた。

福岡酒類販売(株)
  • 福岡
  • 酒類販売
負債総額
38億6500万円
 

 福岡酒類販売(株)(TSR企業コード:870066390、福岡市博多区板付6-11-9、設立昭和24年7月、資本金3000万円、濱田洋行社長、従業員70名)は、3月19日に福岡地裁へ破産を申請した。負債総額は38億6500万円。

 同社は、昭和6年5月創業の地場最大手の老舗酒類問屋として、酒小売業者や卸業者に販路を形成、規制緩和後はコンビニ向け販売に注力するなど独自の視点で業界をリードし、専売特約店であるアサヒビールの「スーパードライ」のシェア拡大もあって、ピーク時の平成8年12月期の売上高は約205億3900万円を計上していた。しかし、その後は消費低迷のなか、単価下落、販売先の選別、決済処理変更による空容器代金との相殺、単価の安い発泡酒の浸透などで減収傾向を辿り、同21年12月期の売上高は約145億5900万円にまで落ち込み、収益も悪化していた。

 こうしたなか、平成21年12月期には株主総会で当時の代表取締役社長が経営能力に不満を持つ株主から退任を命ぜられ、退任を支持する株主が議決権の過半数を上回り、解任が決定するなどお家騒動が発生していた。この騒動で顧客が脱落したため、顧客離れが進むのを避け売上を維持するため低価格販売に拍車が掛かり、業績低迷が続いていた。

野尻眼鏡工業(株)
  • 福井
  • 眼鏡枠製造
負債総額
37億3800万円
 

 野尻眼鏡工業(株)(TSR企業コード:600050939、鯖江市鳥羽町110-1、設立昭和42年1月、資本金9800万円、福永邦男社長、従業員50名)は、3月30日に福井地裁へ破産を申請した。負債総額は37億3800万円。

 同社は、昭和22年8月創業で、金無垢やライセンスブランドの高級メタルフレームをメインに製造していた。同業他社に先駆けて中国に進出し、チタンフレーム製造やOEM生産も手がけ、ピークの平成9年12月期には年商44億円を計上していた。しかし、最近は景気低迷の影響から高級品の販売が減少し、また、中国進出に伴う投資負担等から借入依存型の資金繰りが慢性化していた。業績回復が見られず、同22年12月期には売上が15億9200万円まで低下し、年商の2倍近い借入金も重荷となって4期連続の赤字を計上していた。

(株)ベリーズ
  • 宮城
  • 子供服、雑貨類販売
負債総額
37億1900万円
 

 (株)ベリーズ(TSR企業コード:142100749、仙台市若林区卸町東2-2-1、設立平成10年6月、資本金1000万円、安達耕一社長、従業員198名)は、3月30日に仙台地裁へ民事再生法の適用を申請した。監督委員には佐々木洋一弁護士(渡邊大司・佐々木洋一共同法律事務所、仙台市青葉区一番町1-4-20、電話022-266-1231)が選任された。負債総額は37億1900万円。

 同社は、子供服小売業者。子供向け洋服を中心としたオリジナル自社ブランド「Berry‘s Berry(ベリーズ・ベリー)」に取組み、東日本を中心に全国に直営店(海外1店舗を含む)やFC店を約100店舗展開していた。「子供服は消耗品」との基本理念の下に月間で約50種の新作をリリースし、販売が好調でも追加生産を行わない「少量限定生産」に徹した「完全売切制」でリピーターを確保。積極的な多店舗展開を実施して、地元を代表する子供服メーカーに成長、平成21年3月期にはピークとなる43億4306万円の売上を計上した。

 しかし、景気低迷で売上が伸び悩む中、平成22年3月期には中国の製造委託会社の人件費増加に加え、為替予約差損に伴う特別損失計上により約1億9637万円の最終赤字を余儀なくされた。同23年3月期も店舗数の減少や夏季の売上減少に加え、東日本大震災の影響などから売上は25億1000万円にまで激減。震災による特損のほか、為替予約取引解消に伴う特損が加わり約8億円の最終赤字を強いられた。資金繰り悪化から、支払サイト延長や各金融機関へのリスケなどで凌いできたが、先行きの見通しが立たず、民事再生法の下での事業再建を選択した。

戦後歴代の大型倒産

日本の戦後歴代の大型倒産を
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