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2020年3月期決算  上場企業「継続企業の前提に関する注記」調査

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公開日付:2020.07.07

 2020年3月期決算を発表した上場企業2,386社のうち、決算短信で「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」(以下、GC注記)を記載した企業は25社だった。また、GC注記には至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」(以下、重要事象)は53社だった。
 GC注記と重要事象を記載した企業数は合計78社で、前年度本決算(2019年3月期)の58社から20社増加(34.4%増)し、2013年3月期(73社)以来、7年ぶりに70社を上回った。
 78社のうち、新型コロナウイルス感染拡大の影響を要因としたのは25社(構成比32.0%)で、外出自粛や臨時休業など、緊急事態宣言のダメージが消費関連業種を中心に鮮明に出た。
 GC注記・重要事象の企業数はここ数年、上場企業の好調な決算を背景に50社台にとどまっていた。ところが2月以降、新型コロナの影響を受けて上場企業も経営環境が一変。急激な業績悪化でGC注記・重要事象の記載企業が急増している。

  • 本調査は、全証券取引所に株式上場する3月期決算企業を対象に、2020年3月期の決算短信で7月6日までに発表された「GC注記」及び「重要事象」を記載した企業の内容、業種を分析した。

GC注記は9社、重要事象は25社が新たに追加

 GC注記企業は2019年9月中間決算から4社増加し、25社だった。中間決算(21社)からは1社がGCを解消し、4社が2020年3月期本決算が未発表の状態。ここに9社が新たにGC注記を記載した。カーエアコン用のコンプレッサーで世界2位のシェアを持つサンデンホールディングス(株)(東証1部)は初めてGC注記を記載した。米中貿易摩擦などから中国・インド市場向け販売が低迷、さらに、新型コロナウイルス感染拡大で、グループの海外工場が休業に追い込まれるなど厳しい業況が続いた。決算発表と同時に、関連4社とともに事業再生実務家協会に事業再生ADRを申請したことを公表し、金融機関およびリース会社を対象に債務整理を協議する。
 重要事象の記載企業は2019年9月中間決算から19社増加し、53社となった。中間決算(34社)から解消したのは3社で、2社はGC注記を記載、2社が決算未発表。ここに1社が決算期変更で加わり、25社が新たに重要事象を記載した。
 2020年3月期は新型コロナに伴う決算作業や監査の遅延の影響で、上場企業の多くで決算発表の遅延が生じた。7月6日現在、3月期決算企業の17社が決算短信の公表に至っていない。なお、この17社のうち、6社が中間決算ではGC注記・重要事象を記載しており、今後同期のGC注記・重要事象企業はさらに増え、80社を超えることが見込まれる。

202003GC1

GC注記・重要事象記載 本業不振が8割

 GC注記・重要事象の記載を理由別に分類すると、64社(構成比82.0%)が重要・継続的な売上減や損失計上、営業キャッシュ・フローのマイナスなどの「本業不振」を理由としている。
 次いで「新型コロナによる悪影響」を理由としたのが25社(同32.0%)と3割を占め、コロナによる業績への悪影響がGC・重要事象企業数を押し上げた。
 以下、「財務制限条項に抵触」15社、「資金繰り悪化・調達難」が10社と続く。
 このほか、1年以内に解消できない場合、原則として上場廃止となる「債務超過」や金融機関への返済猶予や取引先への支払遅れが発生している「債務支払条件変更・遅延」など重大局面が続く不振企業も存在している。
 ※重複記載のため、構成比合計は100%とならない

202003GC2

業種別では製造業が約4割

 GC注記・重要事象の記載企業78社の業種別は、製造業が34社(構成比43.5%)で最多。中堅規模のメーカーなどが多くを占めるが、自動車部品大手のサンデンホールディングス(株)(東証1部)がGC注記を記載。このほか、電線御三家として知られる(株)フジクラ(東証1部)や、油圧機器大手のKYB(株)(東証1部)などの業界大手企業でも、大幅赤字によるローン契約の「財務制限条項の抵触」を理由に重要事象を記載した。

新型コロナ影響ありの25社 小売・サービスで約7割

 新型コロナを要因の一つとした25社の業種別では、小売業が11社(構成比44.0%)で最多。次いでサービス業と製造業がともに6社(同24.0%)で続いた。
 小売業・サービス業の2業種で約7割を占めた。緊急事態宣言による営業自粛要請を受けて、臨時休業した居酒屋などの外食産業をはじめ、アパレル販売、ホテル運営、美容室経営、スーパー銭湯やテーマパーク運営など、消費関連業種の企業を中心に業績悪化が表面化した。




 上場企業の倒産はリーマン・ショックの2008年度の45件をピークに減少をたどり、2019年度の発生はゼロだった。倒産の減少とともにGC注記と重要事象の記載企業は減少してきた。
 しかし、5月15日、東証1部上場の(株)レナウンが民事再生手続きの開始決定を受け、16カ月ぶりに上場企業の倒産が発生した。レナウンは消費増税、暖冬などで重衣料が苦戦。さらに、中国の親会社グループに売掛金回収難が生じ、経営悪化が表面化。直近決算で初めてGC注記を記載していた。こうしたなか、新型コロナウイルスによる販売先の休業や消費減退による売上不振が直撃し、子会社から民事再生法の適用を申請された。
 2020年3月期決算では、インバウンド消失、外出自粛による売上不振など、新型コロナの影響を色濃く受けた業種を中心に、新たにGC注記・重要事象を記載した企業が目立った。
 ただ、実質的な影響は第4四半期(1-3月)のみで、本格化するのは今期決算以降となる。
 今期(2021年3月期)の業績見通しは、約6割が新型コロナを理由に「未定」としている。感染拡大の終息のメドが予測しづらいなか、グローバル展開する上場企業の企業業績には不透明感が漂っている。引き続き、経営状況を示す重要なシグナルとして、GC注記・重要事象の動向を注視していく必要がある。

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