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「労働者派遣法の改正に関するアンケート」調査

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公開日付:2015.12.22

 2015年9月30日、改正労働者派遣法が施行された。今回の改正は1986年の法律施行以来の大幅見直しで、専門業務と自由化業務の区分をなくし、派遣期間の見直しや事業の登録制から許可制への変更などが骨子となっている。
 東京商工リサーチでは、今回の改正の影響について全国の企業を対象に「労働者派遣法の改正に関するアンケート」を実施した。この結果、改正は8割の企業で、内容は7割の企業で認知されていたが、派遣社員の利用企業のうち「メリットはない、わからない」と答えた企業が約6割にのぼるなど、改正の意図が浸透していない実情もうかがえた。
 アベノミクスの第2ステージとなる「新三本の矢」が発表され、このなかで女性や高齢者の就業機会の拡大も盛り込まれている。改正労働者派遣法が今後、国内の雇用情勢にどう影響を与えるのか注目していく必要があるだろう。


  • 本調査は2015年11月11日~20日の期間にインターネットによるアンケートを実施し、有効回答を得た全国3,851社を集計・分析した。

Q1.9月30日に労働者派遣法が改正されたことを、ご存じでしたか?
  ~改正の認知度は8割~

 有効回答のあった3,851社のうち、3,106社(構成比80.7%)が労働者派遣法が改正されたことを認知していた。「知らなかった」との回答は745社(同19.3%)にとどまった。
 メディアなどでも大きく取り上げられ、改正されたことに対する認知度は約8割に達し、総じて認知度は高かった。

Q2.労働者派遣法がどのように変わったか、ご存じですか?
  ~内容の認知度は約7割~

 改正された派遣法の内容を「概ね知っている」、「よく知っている」、「少し知っている」を合わせると約7割、2,758社(構成比70.7%)の企業が知っていると回答した。
 「あまり知らない」、「ほとんど知らない」は合計1,130社(同29.3%)だった。派遣社員と雇用契約を結んでいる企業を中心に、改正内容の認知の高さがうかがえた。

Q3.現在、貴社では派遣会社を利用していますか?
  ~利用の有無は拮抗、大企業ほど高い利用率~

 現在、派遣社員の受け入れなどで派遣会社を「利用している」と回答したのは1,856社(構成比48.2%)だった。一方、「利用していない」は1,946社(同50.5%)で、ほぼ2分された。「回答できない」、「わからない」は49社(同1.3%)だった。
 産業別では、「利用している」の比率が最も高かったのは金融・保険業で76.1%(71社のうち54社)だった。次いで、情報通信業70.9%(179社のうち127社)、運輸業63.3%(158社のうち100社)が上位3産業となった。受付業務や付帯業務が比較的多い産業で利用する比率が高い傾向がみられた。
 一方、「利用していない」は農・林・漁・鉱業が最高で83.3%(6社のうち5社)。次いで、建設業73.5%(563社のうち414社)、卸売業57.9%(1,075社のうち622社)と続いた。建設業は、法令で派遣社員が携わることが制限されている職種が多いことが影響し、卸売業は必要に応じて派遣会社の利用を判断する企業が目立った。
 企業規模別では、「利用している」が最も多かったのは、年間売上高が「100億円以上」で、構成比が79.9%(1,117社のうち893社)だった。次いで、「50億円以上100億円未満」が同62.1%(425社のうち264社)、「10億円以上50億円未満」が同39.9%(1,248社のうち498社)、「5億円以上10億円未満」が同22.5%(462社のうち104社)、「1億円以上5億円未満」が同13.3%(489社のうち65社)、「1億円未満」が同10.8%(74社のうち8社)と続き、売上規模が大きくなるにつれて派遣社員の利用率が高い。

Q4.派遣会社を利用しない理由は何ですか?
  ~正社員などで対応が約5割~

 派遣会社を利用していない企業1,946社のうち、回答のあった1,931社では「正社員で業務をこなしている」が983社(構成比50.9%)で過半数を占めた。次いで、「直接雇用することで従業員の定着を目指している」が679社(同35.2%)、「その他」141社(同7.3%)、「コストがかさむ」110社(同5.7%)、「労働者派遣法の改正に対応できない」18社(同0.9%)の順だった。
 「その他」では、「過去に利用していたが役立たなかった」(21社、その他に占める構成比14.9%)、「正社員のほかアルバイトや外注などで対応」(20社、同14.2%)、「(建設業、警備業など)業種などの制約があり派遣会社を使えない」(15社、同10.6%)、「時期や内容により必要に応じて利用」(13社、同9.2%)、「企業規模が小さいなどで必要性がない」(12社、同8.5%)といった回答が目立った。

派遣法改正アンケートQ4

Q5.利用する派遣会社数は前年と比較して変化していますか?
  ~変化なしが約7割 中堅企業で増加~

 派遣会社を利用している1,856社のうち回答のあった1,689社では、利用の変化について「変わらない」、「わからない」が1,188社(構成比70.3%)で最多だった。次いで、「増えている」が303社(同17.9%)、「減っている」が198社(同11.7%)の順だった。
 企業規模別では、「増えている」と回答した比率は年間売上高が「10億円以上50億円未満」が21.5%(469社のうち101社)で最高。次いで、「5億円以上10億円未満」が21.4%(98社のうち21社)、「50億円以上100億円未満」が18.7%(241社のうち45社)、「100億円以上」が16.0%(794社のうち127社)、「1億円以上5億円未満」が9.7%(62社のうち6社)だった。売上高が5億円から50億円規模の中堅企業での利用で増加している傾向が目立った。
 一方、「減っている」との回答の比率は年間売上高が「1億円以上5億円未満」が22.6%(62社のうち14社)で最高。次いで「50億円以上100億円未満」が14.5%(241社のうち35社)、「10億円以上50億円未満」が13.2%(469社のうち62社)、「100億円以上」が9.8%(794社のうち78社)、「5億円以上10億円未満」が8.2%(98社のうち8社)の順。

Q6.現在の全従業員のうち、派遣社員の比率はどれくらいですか?
  ~5%以下が最多で約6割を占める~

 派遣社員を利用している企業のうち、回答のあった1,689社では、全従業員に占める派遣社員の比率が「5%以下」が1,054社(構成比62.4%)で、約6割を占め最多だった。次いで「6~10%」が288社(同17.1%)、「回答できない、わからない」が157社(同9.3%)と続く。「31%以上」は20社で、内訳は卸売業が6社、製造業と情報通信業がそれぞれ5社、運輸業が4社だった。
 企業規模別でみると、どのレンジでもトップは「5%以下」で、概ね5割から7割の構成比だった。利用比率「5%以下」で最も構成比が高かったのが売上高「50億円以上100億円未満」で69.7%(241社のうち168社)、最も低かったのが売上高「1億円未満」で50.0%(6社のうち3社)だった。規模別での派遣社員の比率に大きな差はみられず、過半数の企業で派遣社員が全従業員に占める比率は5%以下にとどまっている。

Q7.今回の改正によるメリットは何ですか?
  ~「ない・わからない」が約6割~

 派遣会社を利用している企業のうち回答のあった1,689社では、「メリットがない、わからない」が989社(構成比58.6%)と、約6割を占め2位以下に大差をつけた。次いで、「正社員化を見据えた良い人材確保」は273社(同16.2%)、「派遣社員のモチベーション向上を期待」が136社(同8.1%)、「業務ローテーションが進展する」が118社(同7.0%)、「人員が固定せず活性化が進む」が103社(同6.1%)、「その他」が70社(同4.1%)の順だった。
 「その他」の中には、「(産休など)欠員補充や臨時対応での利用なので改正の影響はない、あるいは少ない」との回答が22社あり、今回の改正で取り急ぎ対応する必要性が低いとみる回答が目立った。このほか「派遣期限の抵触日の管理がしやすくなる」が5社(同7.1%)、「人を交代させることで継続的に派遣を利用できる」が5社(同7.1%)だった。

派遣法改正アンケートQ7

Q8.今回の改正によるデメリットは何ですか?
  ~「ない、わからない」が約5割~

 派遣会社を利用している企業のうち回答のあった1,689社では「デメリットはない、わからない」との回答が839社(構成比49.7%)で約5割を占めた。次いで「スキルレベル維持に不安」が351社(同20.8%)、「雇用不安等による派遣社員のモチベーション低下」が224社(同13.3%)、「仕事を教える手間がかかる」が169社(同10.0%)、「その他」が59社(同3.5%)、「人間関係構築に時間がかかる」が47社(同2.8%)と続く。
 「特になし、わからない」がほぼ半数を占めたものの、実務レベルでの懸念や手間に関する不安の声も散見された。

Q9.今回の改正に対して今後どのように対応しますか?
  ~「未検討」が過半数~

 派遣社員を利用している企業のうち、回答のあった1,689社では「未検討」が921社(構成比54.5%)で最多だった。次いで、「制限期間満了で正社員登用を検討する」が388社(同23.0%)、「部署を変えて派遣社員として引き続き利用する」が208社(同12.3%)、「その他」が172社(同10.2%)と続く。今後、どう対応するかを決めていない企業が過半数を占めた。
 「その他」とした172社では、「派遣社員を減らす、派遣の契約を継続しない」が22社(構成比12.8%)、「正社員を増やす、派遣社員を正規雇用する」が21社(同12.2%)で、利用する側の正社員へのシフト指向がうかがえた。また「派遣は短期利用とする」が17社(同9.9%)だった。

派遣法改正アンケートQ9

Q10.今後、派遣会社に一番求めることは何ですか?
  ~人材のスキルが約6割~

 派遣会社を利用している企業のうち回答のあった1,689社では、派遣社員に一番求めることは「質(スキル)の高い人材」が1,056社(構成比62.5%)で、過半数を占めトップだった。次いで「弾力的な業務対応」が392社(同23.2%)、「コストダウン」が144社(同8.5%)、「未回答」58社(同3.4%)、「幅広い年齢層の人材」が39社(同2.3%)の順だった。
 派遣会社へ期待することは圧倒的に「有能な人材」であることが、改めて確認される結果となった。


 労働者派遣法の改正による「メリットがない、わからない」と答えた企業が6割にのぼったことなどから、法律の改正・修正は多くの賛同を得られない実態がうかがえる。また、実際に派遣先で働く派遣社員の声が反映されていないとの声も聞こえてくる。
 派遣会社を利用しているのは、従業員数の多い大手企業ほど多い傾向があるが、今後の対応について「契約を継続しない」「パートやアルバイトで補填する」といった声も聞かれるなど、現実には正規労働者を増やす方向からは、やや外れた受け取り方をされている。
 また、「派遣会社の淘汰が進む」(10社)との回答もあり、派遣会社の許可制への移行が派遣元・派遣先ともに必ずしもプラスに働いていないとの感想も透けてみえた。
 今回の改正については、施行までの期間が短いなど社会的議論が詰めきれていないとの指摘もある。今後はさらに実態把握と説明を重ねることで、個々の派遣社員が望む仕事、受入側の派遣社員への要望、双方の理解を深め、お互いのメリットを追求することが求められている。

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