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2013年度 空港ターミナルビル経営動向調査

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公開日付:2014.10.30

 全国の主な空港ターミナルビル経営会社(以下、空港ビル会社)56社の2013年度決算(2013年4月-2014年3月期)の売上高は2,567億円で前年度より4.3%増だった。売上高トップは国際線の増便などで大きく売上を伸ばした日本空港ビルデング(羽田)で、2位以下を大きく引き離した。
 増収が約7割(42社、構成比75.0%)を占め、経常赤字は3社にとどまり、景気回復や航空旅客数の増加を背景に好決算が目立った。また、自己資本比率50%超の空港ビル会社は56社中、46社と8割超を占め、空港ビル会社は高収益で健全な財務体質を堅持している。
 ただ、仙台空港を皮切りに空港運営のコンセッション(運営権)方式による民間委託が本格的に始まっており、これまでの第三セクター方式中心の空港ビル経営も転換点を迎えつつある。


  • 本調査は2008年度より4回目。TSRデータベースに基づく主な空港ビル会社56社の2013年度決算内容を調査した。

売上高 羽田空港が断トツのトップ 福岡と伊丹が逆転

 売上高トップは日本空港ビルデング(羽田)が1,183億4,300万円でトップだった。羽田空港の国内線の発着枠拡大や、アジア諸国からの観光客増を追い風に前年度比6.9%増と好調を持続し、2位の北海道空港(新千歳)の2倍超、空港ビル全体の売上の46.1%を占めた。3位には福岡空港ビルディング(福岡、前年度4位)が入り、4位の大阪国際空港ターミナル(伊丹、同3位)と前年度から順位が逆転した。福岡空港もLCC参入効果や円安による訪日観光の割安感からアジアからの旅客が大幅に増えて航空旅客数が過去最高を記録し、空港ビル会社の売上増に繋がった。

空港ターミナルビル経営会社売上高ランキング

旅客数増加で空港ビル会社の7割超が増収

 56社の2013年度の売上高合計は2,567億700万円で、前年度より4.3%(106億5,400万円)増加した。増収は42社、減収は14社だった。
 航空旅客数はリーマン・ショック以降、減少をたどっていたがLCCの就航や景気回復効果で2012年度から増加に転じた。2013年度も国内線7.7%増、国際線6.2%増(対前年度比、国土交通省調べ)と伸長し、各空港ビル会社も売上を伸ばした。
 売上高増加率では、上位7社までが前年度比10%以上の伸び率だった。前年度比195.7%増と突出した岩国空港ビルは2012年12月の開港以来、初めて年間を通した営業活動だったことで売上高が3倍増となった。前年度比26.4%増の函館空港ビルディングは、集客力のある大型イベントの開催、台湾線の増便などが寄与し、売上高ランキングでも前年度12位から10位にアップした。
 売上高減少率のワーストは那覇空港ビルディングだった。これは直営事業部門の業務委託化に伴う売上計上方法の変更に伴うもの。関西国際空港と伊丹空港の経営統合で新会社:新関西国際空港(株)の完全子会社となった大阪国際空港ターミナルは、経営統合により関西国際空港で行っていた物販事業の一部店舗を再編したため物販収入が減少した。

空港ターミナルビル経営会社2013年度業績

経常損益 日本空港ビルデング(羽田)がトップ 赤字企業は52社中3社

 経常損益が判明した53社中、黒字は50社(構成比94.3%)で、赤字は3社(同5.6%)だった。経常利益のトップは日本空港ビルデングで42億2,900万円(前年度比52.8%増)と、2位以下を大きく引き離した。以下、福岡空港ビルディング、那覇空港ビルディング、大阪国際空港ターミナル、北海道空港と続き、旅客数の多い大規模空港ビル会社が上位を占めた。
 経常利益でワーストだった福島空港ビルは、原発事故の影響で国際定期便の運休が続いたことで2期連続の経常赤字に陥った。ただ、東京電力からの営業損害の賠償金が特別利益に加わり、最終黒字は確保した。

空港ターミナルビル経営会社2013年度経常利益ランキング

経常利益率 民間へ売却予定の仙台空港ビルが全国トップ

 経常利益率ランキングでは仙台空港ビルが34.5%でトップだった。同空港は民営委託の第1号案件として運営権者となる民間企業の選定が進められている。2016年3月を予定している民営化に伴い、仙台空港ビルは他の航空関連の第三セクターとともに運営企業への売却が決定している。
 仙台空港ビルの収益は着陸料値下げ等の施策の財源にもなり、運営を希望する企業にとっても魅力的な収益である。民営化に伴い、これまで以上に復興を担う被災地の拠点空港としての役割に大きな期待がかかっている。
 このほか、経常利益率20%台が8社(構成比15.0%)、10%台が25社(同47.1%)と10%以上が半数を超え、空港ビル単体でみると高い収益力を持っていることがうかがえる。

空港ターミナルビル経営会社2013年度経常利益ワーストランキング

自己資本比率 50%以上が8割以上

 56社の自己資本比率は平均は69.0%。自己資本比率80%台が13社で最も多く、次いで90%台12社、70%台9社、50%台8社と続く。自己資本比率50%以上が46社(構成比82.1%)と8割以上を占める。債務超過は新潟空港ビルディングの1社のみで、安定した収益で財務内容の健全な空港ビルが多く、これまでの利益蓄積で高い自己資本比率を堅持している。

空港ターミナルビル経営会社2013年度自己資本比率

国管理空港 一体経営でも経常黒字は3割

 国土交通省は国が管理する27空港について、国が管理運営する滑走路など(航空系事業)と、空港ビル会社が管理運営する旅客ターミナルなど(非航空系事業)について2012年度の収支状況を試算した。航空系事業と非航空系事業を単純合算した試算では、経常黒字は新千歳、広島、松山、長崎、熊本、宮崎、鹿児島、小松の8空港(構成比29.6%)で、19空港(同70.4%)が経常赤字だった(一般会計受入を各空港の歳入に含めず、空港整備事業費などを歳出計上したうえで企業会計の考え方を取り入れた試算) 。
 経常赤字額が多額の羽田(東京国際)は発着枠拡大に伴う空港整備費や支払利息130億4,100万円の営業外費用を計上。また、福岡、那覇は地権者へ支払う土地建物借料の重い負担が課題になっている。
 27空港の収支合計は営業収益3,702億1,200万円に対し、営業赤字142億3,200万円、経常赤字291億9,600万円で、航空系事業と非航空系事業を単純合算しても国管理空港の全体収支はマイナスとなっている。空港ビル経営など非航空系事業が堅調な業績推移をたどる反面、航空系事業の赤字体質が際立っている。

活発化する民営化議論 3セク空港ビルにも空港改革の波

 2013年6月「民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律」(民活空港運営法)が成立し、翌7月から施行された。国が直接管理する空港として民営化の第1号案件の仙台空港は運営権者の選定が進んでいる。また、これに先駆け国管理空港の大阪国際空港(伊丹)は会社管理空港である関西国際空港と民営化に向けて経営統合し、新しい経営母体の新関西国際空港(株)(2012年4月1日設立)の傘下に入った。同社によると運営権の売却価格は年間約490億円と巨額に及ぶが、今年8月の説明会では多数の民間企業が参加し、進展が注目されている。
 空港民営化は安倍政権の成長戦略の目玉の一つとして位置付けられ、「第2、第3の民営空港」を模索する動きが活発化している。とはいえ、国交省の試算では国管理空港のうち、航空系事業と非航空系事業を合算しても経常黒字は3割にとどまる(2012年度決算)。民営化イコール黒字化ではなく、運営権者に選定された民間企業の経営能力が試されることになる。また、民営化が進むと、地理的にも恵まれ、手堅い収益をあげる「優良空港」とそうでない空港との格差が新たな問題として発生する懸念もある。


2013年度の航空旅客数は景気拡大に加え、円安による訪日観光客の増加、LCC路線の増加による新しい顧客層の開拓など、好条件が重なり再び増加をたどっている。空港ビル会社の業績もこれらに下支えされた格好で成長している。
 これまで空港ビル会社は、第3セクター経営で高水準の利益と良好な財務内容を維持してきた。だが、空港本体との一体化、民営化という大きな転換点に差し掛かかっている。赤字脱却に向け、空港経営の根本的な見直しが急務となっている。それだけに経営改善が遅れ、特色を打ち出せない地方空港は、民営化と同時に「地方創生」がテーマに上がるなかで不採算による廃港という選択肢も議論の一つに浮上する可能性が出てきた。

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