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「美容室」倒産が急増 1‐4月は最多の46件 人件費や美容資材の価格上昇が経営を直撃

2024年1‐4月「美容室」倒産状況


 コロナ禍を抜けたが、美容室の倒産が急増している。2024年1-4月「美容室」倒産は、累計46件(前年同期比48.3%増)に達した。同期間の比較では、2015年以降の10年間で、2018年と2019年の32件を抜いて最多を更新した。
 現在のペースが続くと、年間でも10年間で最多だった2019年(105件)を上回る可能性が高い。
 美容室は、コロナ禍で在宅勤務やテレワークが広がったほか、対面での感染リスクの回避から顧客が来店を控え、厳しい環境にあった。ただ、コロナ関連の資金繰り支援が支え、倒産は低水準だった。5類移行後は来店客も徐々に回復していたが、水道光熱費を含む美容資材の価格高騰や人件費上昇が収益を圧迫し、倒産が増勢に転じている。

 美容室はもともと過小資本が多く、資本金別では最多が「1百万円以上5百万円未満」の19件(前年同期比26.6%増)で、「個人企業他」も18件(同125.0%増)発生している。
 また、負債額も「1千万円以上5千万円未満」が41件(同70.8%増)発生、負債1億円未満が45件(同66.6%増)と大半(構成比97.8%)を占めている。

 美容室は参入障壁が低く、店舗数も多いため、同業者間の競合は激しい。コロナ禍が落ち着いた矢先に、円安に伴う美容資材の価格上昇、人手不足、人件費・光熱費の高騰などに見舞われた。コスト転嫁のために美容業界では値上げが続くが、料金に見合った価値がないと判断されると顧客離れにも繋がり、技術力や接客力に加え、ブランディング力もますます問われるようになっている。また、SNS等を活用した集客や口コミ対策などの工夫も重要になっており、今後、集客に繋がる強みを持たない美容室の淘汰が進んでいく可能性が高い。

※本調査は、2024年1-4月の全国企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、日本産業分類の7831「美容業」(美容室)を集計・分析した。


2024年1-4月の倒産 10年間で最多ペース

 今年1-4月の「美容室」倒産は46件(前年同期比48.3%増)発生し、2015年以降で最多記録を更新した。1-4月の「美容室」倒産は、2019年まで30件前後で推移していた。しかし、コロナ禍では在宅勤務やテレワークが広がり、顧客が美容室に行く回数を減らすなど厳しい状況が続いた。ただ、コロナ関連のゼロゼロ融資などの資金繰り支援で、倒産は2020年28件→2021年23件→2022年22件と低水準で推移した。
 経済活動が平時に戻った2023年に入ると円安が加速し、空前の物価高、人手不足に見舞われ31件と一気に増勢に転じ、2024年は初めて40件を超えた。
 人手不足と人件費の上昇で美容師の確保も難しくなるなか、水道・光熱費や美容資材の価格も上昇し、カット料金の値上げが避けられない状況にある。実質賃金のマイナスが続くなか、値上げは顧客の足が遠のく要因になりかねず、美容室の倒産はしばらく増勢が続く可能性が高い。

美容室の倒産(1-4月)推移

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