• TSRデータインサイト

事業再生実務家協会が設立20周年、「事業再生ADR」申請は累計290社

 一般社団法人事業再生実務家協会(JATP)は11月2日、設立20周年を記念し、シンポジウム「進化する事業再生ADR」を開催した。シンポジウムは会場とWeb形式のハイブリッド型で開催され、合計300名以上が参加した。
 JATPは、準則型私的整理手続きである「事業再生ADR」の国内唯一の認証・認定機関。2003年に任意団体としてスタートし、2019年3月に社団法人化された。この間の2008年11月に事業再生ADRの運用が開始された。


事業再生ADRは「高いパフォーマンス」

 冒頭、JATPの代表理事を務める瀬戸英雄弁護士(LM法律事務所)は、「(JATPの)設立当時、国内の再生人材の数と能力が不足していた。さらに再生人材のネットワークも存在しなかったため、当会では再生の迅速性に不可欠なネットワーク構築に力を入れた」と振り返った。さらに商取引債権者を組み込まない準則型私的整理の意義に触れた上で、「現在のJATPの中核事業であり、最も優れた事業再生手法として、海外からも注目されるまでに成長した事業再生ADRを本シンポジウムで取り上げたい」と開会を宣言した。
 基調講演は、一橋大学大学院法学研究科・山本和彦教授が務めた。山本教授は「事業再生ADRは10月16日現在で累計95件・290社の申請があり、そのうち75%が成立している」と述べた。その上で「大企業の再生に活用されることが多い会社更生法は2008~2021年に195社申請され、同じ期間に283社が事業再生ADRを申請している。この点をみても会社更生法と同等、それ以上のパフォーマンスを発揮している」と再生実務で大きな役割を果たしていることを強調した。
 基調講演に続いて、「JATPが事業再生に果たしてきた役割」と題した特別対談が交わされた。登壇したJATP代表理事の須藤英章弁護士(東京富士法律事務所)は、「2001年9月に策定・公表された私的整理ガイドラインでは、一時停止の通知は債務者とメイン行が連名で行い、債権者会議の議事進行はメイン行が務めた。いわゆるメイン寄せの問題や“メインバンク制”の衰退から公正中立な第三者が主導する新しい形が望まれるようになった」と述べ、認証紛争解決事業者による手続き進行のニーズが高まった背景を説明した。


レピュテーションと正しい理解

 特別対談の後、再生実務家の意見交換や金融機関の担当者とファイナンシャルアドバイザー(FA)によるパネルディスカッションが開催された。
 実務家の意見交換では、「準則型私的整理は今や事業再生手法の王道であり主流だ。まずは中小企業活性化協議会や事業再生ADRをトライできるか検討する実務が定着しており、この枠組みの中で多くの企業が再生の道を歩んでいる」と準則型の重要性を述べた。
 パネルディスカッションでは、金融機関の担当者が「事業再生ADRを申請した企業にはメイン行もしっかり関与している。概ね再生していくとのレピュテーションを高め、商取引債権者からより良いサポートを得られる循環を作っていきたい」と提言。これに対し、FAは「過去には海外の対象債権者の理解不足から手続き進行に支障を来たすケースもあった。マーケットの事業再生ADRへの正しい理解を広めることが重要だ」と応じた。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年11月27日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度 「賃上げ実施予定率」、過去最高の 85.6% 賃上げ率の最多は 3%で「前年を上回る賃上げ」に届かず

2024年度に賃上げ予定の企業は85.6%で、定期的な調査を開始した2016年度以降の最高を更新した。ただ、規模別の実施率では、大企業(93.1%)と中小企業(84.9%)で8.2ポイントの差がつき、賃上げを捻出する体力や収益力の差で二極化が拡大している。

2

  • TSRデータインサイト

「2024年問題」直前の軽貨物運送業 倒産と休廃業・解散の合計が3年連続で過去最多

ドライバー不足が懸念される「2024年問題」が間近に迫るなか、宅配などを担う「軽貨物運送業(貨物軽自動車運送業)」の2023年の倒産(49件)と休廃業・解散(74件)の合計が過去最多の123件に達したことがわかった。

3

  • TSRデータインサイト

商業登記規則の省令改正問題、与信態度が硬化も 金融・保険業の5割超が「与信管理がしにくくなる」と回答

商業登記簿に代表者の住所が記載されなくなるかもしれない。商業登記規則の省改正令は、6月3日施行の予定で、すでにパブリックコメント受付も終了している。果たして、予定通り実施されるのか。

4

  • TSRデータインサイト

2023年度の「賃上げ」実施、過去最大の84.8% 「賃上げ率」5%超、中小企業が37.0%で大企業を上回る

2023年度の賃上げは、企業の84.8%が実施(予定含む)した。これは官製春闘で賃上げ実施率が8割を超えていたコロナ禍前の水準を超え、2016年度以降の8年間では最大となった。コロナ禍で実質賃金が目減りするなか、物価上昇に見舞われて高まった賃上げ機運が賃上げ実施率を押し上げたようだ。

5

  • TSRデータインサイト

企業の 7割で「原材料価格」、「人件費」などコスト上昇 人件費増加分は「転嫁できていない」がほぼ半数

物価高や円安、エネルギー価格の高止まりなど、アフターコロナ局面でも厳しい経営環境が続いている。今年1月の本業に係るコストが前年1月より「増加した」と回答した企業は、73.6%と7割を超えた。

TOPへ