海外与信管理で重点チェックすべき3つのリスク Vol.3 カントリーリスク
「海外企業の与信管理の必要性」でご説明している通り、海外企業との取引において特に慎重な判断が求められる取引検討時、リスク悪化・要注意先特定時には、「デフォルトリスク」「コンプライアンスリスク」「カントリーリスク」という3つのリスクをチェックすることが重要です。
本ページではカントリーリスク、つまり国や地域が抱える問題がビジネスに影響を及ぼすリスクについて、リスクとなる要因、現在の世界各国のリスク状況、重要なポイントなどをご紹介いたします。
カントリーリスクとなる要因
まず最初に、カントリーリスクとなる代表的な要因と想定されるビジネスへの影響をご紹介いたします。カントリーリスクには政治、経済、宗教など多種多様な要因が存在し、自社のビジネスに様々な影響を及ぼします。
また、これらのリスク要因は、大きく「政治的リスク」「社会的リスク」「経済的リスク」「商業的リスク」という4つのカテゴリに分けて考えることができます。ここでは実際に発生しているリスクを4つのカテゴリに当てはめてご紹介いたします。
①政治的リスク
- 政権の安定性
- 政策の一貫性
- 治安情勢
- 国際社会の信頼度
②社会的リスク
- 戦争、紛争、テロ
- 制裁リスト掲載企業
- 司法制度の有効性
- 腐敗、汚職
③経済的リスク
- 短期的、長期的経済の見通し
- 財政状況、政策
- 対外債務、外貨準備高
- 為替
④商業的リスク
- 社会インフラ、交通
- 自然災害
- ビジネス上の規制、障壁
- 流通チャネル
データで見るカントリーリスクの変化
次に、世界においてカントリーリスクがどのように変化しているかをご理解いただくために、世界最大5億件超の企業情報を提供しているDun&Bradstreet(D&B)の専門チームが分析し発表している、世界のリスク度合いを示すヒートマップをご覧いただきます。このヒートマップでは緑系はローリスクで、赤系や黒に近づくにつれてハイリスクであることを示しています。カントリーリスクはこの15年間でどのように変化しているのでしょうか。
カントリーリスクのヒートマップ
2009年9月
2024年9月
主なポイント
- 全体的に赤系や黒のハイリスクの地域が増えています。
- 元々ハイリスクだったロシアやウクライナ、中東地区はさらにリスクが高まっています。
- 中南米やアフリカでもハイリスクを示す赤系や黒の国が増加しています。
- ローリスクだった北米や西欧、そして日本も若干リスクが高い黄色系に変化しています。
ご想像できた方も多いかもしれませんが、全体的にカントリーリスクは悪化傾向にあると言えます。特にここ数年では、新型コロナウイルス感染拡大、ロシア・ウクライナ問題、イスラエル・パレスチナ問題をはじめとする中東情勢、米中関係のデカップリング(経済分断)、台湾情勢など、重大な出来事が立て続けに起こっており、さらにその速度が増しています。このことから、海外展開においてはカントリーリスクを把握する必要性がさらに高まっていると言えます。
なお、D&Bのサイト「Country Insight Services」では、直近1カ月のヒートマップや地域ごとのニュースのヘッドラインを無料で提供していますので、興味のある方はご覧ください。
カントリーリスクの把握に重要なポイント
ここまでご説明した通り、海外進出の際は当該国にどのようなリスクがどの程度存在し、自社のビジネスにどのような影響を及ぼすのかを把握すること、そしてどのような手立てを講じる必要があるのかをあらかじめ想定しておくことが非常に重要です。また、リスク回避だけでなく商機を見逃さずにその国での活動効果を最大化するためにも当該国の情勢把握は必須と言えます。
ここでは、カントリーリスクの把握において重要なポイントを3点ご説明いたします。
①グローバルな観点で収集・分析された情報
カントリーリスクは当該国だけでなく、グローバルな観点に基づいて広範に収集・分析された情報を用いた判断が不可欠です。関係の強い周辺諸国や世界各地における情勢など、あらゆる要素を元にした包括的な情報が求められます。
②客観的で精緻な指標
国や地域によってリスク要因はバラバラであり、ビジネスに及ぼす影響も異なることが想定されるため、例えば複数の海外展開先の候補がある場合は、客観的かつ統一された基準で算出された指標を用いてブレの無い判断をすることが重要です。
③最新の動向が反映された鮮度の高い情報
情勢の変化が加速している現代においては、当然リスク要因も刻一刻と変化し続けています。古い情報では適正な判断ができず、自社のビジネスに損害が発生してしまう可能性もあるため、常に鮮度の高い情報をキャッチしなければなりません。
D&Bが提供するカントリーリスク関連サービス
D&Bのカントリーリスク専門チーム「カントリーインサイトグループ」は、国や地域に特化した洞察とデータ主導の分析を提供しています。これは世界のGDPの99%を占める経済圏をカバーしており、様々な企業がビジネスリスクを最小限に抑えることをグローバルで支援し、新たな課題を特定し市場拡大や長期投資の機会を探るのに役立ちます。ここでは、そのD&Bがご提供しているカントリーリスク関連サービスをご紹介いたします。
これから海外展開をお考えの場合や、すでに展開中だが海外取引に不安を感じていたりリスク管理の見直しを検討されている場合において、少しでもカントリーリスクに興味がありましたら、是非お気軽にお問い合わせください。
①カントリーリスクレポート
当該国の経済動向、政治体制、経済政策などの情報をタイムリーかつ簡潔に把握することができるレポートです。
【特長】
- 提供国数は130カ国超。
- 当該国のリスクの総合評価「格付」の他、「与信環境」「サプライチェーン」「市場環境」「政治環境」を統一基準で指標化しご提供。
- レポート内容は最短で月次更新。タイムリーに当該国のリスクを把握可能。
②カントリーレポート
「カントリーリスクレポート」の内容に加え、政治体制、経済政策など様々な要因も踏まえた短期~長期的な予測情報を把握することができるレポートです。
【特長】
- 提供国数はカントリーリスクレポートと同じく130カ国超。
- 当該国と近隣国を様々な観点から評価した「多次元分析(MDA)スコア」をご提供。
- 世界や地域における直近の動向や成長予測などの説明と、短長期的な経済見通しや各種リスクなどを指標化した詳細分析をご提供。
③世界の国別リスク情報 オンライン
「カントリーリスクレポート」や格付けなどカントリーリスク把握に欠かせない情報をいつでも閲覧可能な定額制のオンラインサービスです。
【特長】
- 「カントリーリスクレポート」を追加料金無しで24時間いつでもダウンロード。
- 格付の過去履歴や、一覧表示による変動の有無など、詳細な格付情報をご提供。
- 過去から現在までの世界全体のリスク度合いを月単位で把握可能。
- 今後5年間の経済指標予測、各国の支払い条件・傾向分析、ニュースやレポートなど詳細把握に役立つ情報も収録。
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