全国企業倒産状況

2024年9月の全国企業倒産807件

9月の企業倒産807件 9月としては10年ぶりに800件台に乗せる


 2024年9月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が807件(前年同月比12.0%増)、負債総額は1,327億5,400万円(同80.8%減)だった。
 件数は、2カ月ぶりに前年同月を上回った。9月としては3年連続で前年同月を上回り、2014年の827件以来、10年ぶりに800件台に乗せた。
 負債総額は、2カ月連続で前年同月を下回った。負債10億円以上が24件(前年同月21件)、1億円以上5億円未満が150件(同136件)と増加した。ただ、前年同月はパナソニック液晶ディスプレイ(株)(負債5,836億円)の大型倒産が発生し、その反動で大幅減となった。なお、同社分を除いた前年同月比は22.5%増で、実質的には一件あたりの負債は大型傾向を見せている。
 産業別では、製造業(前年同月比44.1%増)、卸売業(同29.3%増)、建設業(同18.3%増)、小売業(同10.5%増)など、7産業で前年同月を上回った。

 集計対象外の負債1,000万円未満の倒産は、1-9月累計が415件(前年同期比19.5%増)。2年連続で前年同期を上回り、小・零細企業の窮境局面も鮮明になっている。
 また、負債1,000万円以上の倒産は、2024年1-9月累計が7,414件(前年同期比18.0%増、前年同期6,280件)に達した。現状の増加率を維持すると、年間件数は2013年以来、11年ぶりに1万件を超える可能性が出てきた。
 これから年末に向け、企業の資金需要が活発になる時期を迎える。業績回復が遅れた企業だけでなく、売上増に新たな資金調達が追いつかない企業は黒字倒産が現実味を帯びてくる。企業倒産は急増要因は少ないが、息切れ倒産が押し上げながら漸増をたどるとみられる。

企業倒産月次推移


・形態別件数:破産が724件で、構成比は89.7%
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが25都道府県、減少19府県、同数3県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比76.3%、100億円以上は3カ月連続で発生
・業種別件数:老人福祉・介護事業、繊維・衣服等卸売業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比は89.7%
・「新型コロナウイルス」関連倒産は187件(同235件)で。2024年累計は2,156件
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)の構成比は6カ月連続で100.0%

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 10産業のうち、7産業で前年同月を上回る

 2024年9月の産業別件数は、7産業で前年同月を上回った。
 最多はサービス業他の264件(前年同月比2.5%減)で、25カ月ぶりに前年同月を下回った。月次倒産に占める構成比は32.7%(前年同月37.6%)だった。
 このほか、運輸業が29件(前年同月比19.4%減)で、2カ月連続で前年同月を下回った。また、金融・保険業が2カ月連続で発生しなかった(前年同月1件)。
 一方、卸売業が97件(前年同月比29.3%増)で12カ月連続、情報通信業が40件(同42.8%増)が6カ月連続、農・林・漁・鉱業7件(同75.0%増)と小売業94件(同10.5%増)が3カ月連続、建設業155件(同18.3%増)と製造業98件(同44.1%増)、不動産業23件(同9.5%増)が2カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 飼料や資材、製品などの輸入材は、円安により仕入れコストが増加し、経営体力がぜい弱な企業の資金繰りに大きな負担となっている。

2024年9月 産業別倒産状況

主要産業倒産件数推移
主なサービス業他 倒産状況

主なサービス業他 倒産月次推移

地区別 倒産件数、6地区で前年同月を上回る

 2024年9月の地区別件数は、東北と中部、北陸を除く6地区で前年同月を上回った。
 四国12件(前年同期比20.0%増)が3カ月連続、北海道21件(同40.0%増)と近畿189件(同0.5%増)、中国40件(同42.8%増)、九州65件(同6.5%増)が2カ月ぶり、関東330件(同27.9%増)が3カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 一方、北陸12件(同7.6%減)が2カ月連続、中部100件(同8.2%減)が3カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
 東北は、前年同月と同件数の38件だった。

2024年9月 都道府県別倒産


※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.(株)環境経営総合研究所/東京都/新素材紙パウダー製造ほか/246億1,000万円/会社更生法
2.旭機工(株)/東京都/太陽光発電関連事業/49億2,200万円/民事再生法
3.(株)オーカワ/奈良県/こんにゃく製造/44億900万円/破産
4.(株)ガクエン住宅/東京都/不動産販売/41億800万円/破産
5.(株)GDL/埼玉県/物流事業ほか/33億円/破産

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