全国企業倒産状況

2024年5月の全国企業倒産1,009件

5月の企業倒産 件数が11年ぶりに1,000件超、全産業・全地区が増加


 2024年5月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が1,009件(前年同月比42.9%増)、負債総額は1,367億6,900万円(同50.9%減)だった。
 件数は、2013年7月(1,025件)以来、10年10カ月ぶりに1,000件を超えた。2022年4月から26カ月連続で前年同月を上回り、増加率42.9%増は2023年8月(54.4%増)に次ぐ高水準となった。
 負債総額は、前年同月から半減、3カ月連続で前年同月を下回った。前年同月には携帯電話販売のFCNT(株)(負債総額872億円)とグループ2社で合計1,775億円の大型倒産が発生した。2024年5月は特別清算を申請した不動産賃貸の(株)インテックス(静岡・特別清算)の負債84億4,500万円が最大で、同100億円以上はなかった。依然として、負債1億円未満が755件(構成比74.8%)と小・零細企業が中心だが、同1億円以上10億円未満も235件(同35.8%増)発生し、次第に負債規模は大型化が目立つようになった。

 2024年1-5月累計は4,111件(前年同期比25.6%増)で、2013年(1万855件)以来、11年ぶりに年間1万件を超える状況で推移している。
 コロナ関連支援が終了するタイミングで、円安、物価高、人手不足が経営にのしかかっている。このため、業績回復が遅れる企業に加え、仕事を確保しても資金調達が難しい「黒字倒産」などを交え、企業倒産は増勢をたどる可能性が高い。

企業倒産月次推移




・形態別件数:破産が917件で、構成比は今年最高の90.8%
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが34都道府県、減少8県、同数5県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比74.8%、100億円以上が4カ月ぶりに発生なし
・業種別件数:建築材料,鉱物・金属材料等卸売業、飲食料品製造業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比89.6%、12カ月連続で80%台
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)の構成比は2カ月連続で100.0%

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 7カ月ぶりに10産業すべてで前年同月を上回る

 2024年5月の産業別件数は、2023年10月以来、7カ月ぶりに10産業すべてで前年同月を上回り、小売業と情報通信業を除く8産業は今年最多になった。
 最多はサービス業他の327件(前年同月比30.2%増)で、21カ月連続で前年同月を上回り、初めて300件台になった。月次倒産に占める構成比は32.4%(前年同月35.5%)。
 次いで、建設業193件(前年同月比46.2%増)が17カ月連続、卸売業132件(同37.5%増)が8カ月連続で、それぞれ前年同月を上回り、2015年以降の10年間で最多となった。
 このほか、小売業106件(同45.2%増)が4カ月連続、運輸業54件(同100.0%増)が3カ月連続、製造業111件(同60.8%増)と不動産業35件(同75.0%増)、情報通信業28件(同7.6%増)が2カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。また、農・林・漁・鉱業17件(同142.8%増)が3カ月ぶり、金融・保険業6件(同20.0%増)が5カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。

2024年5月 産業別倒産状況
主要産業倒産件数推移

主なサービス業他 倒産状況

主なサービス業他 倒産月次推移

地区別 9カ月ぶりに9地区すべてで前年同月を上回る

 2024年5月の地区別件数は、2023年8月以来、9カ月ぶりに9地区すべてで前年同月を上回った。
 関東355件(前年同月比28.1%増)が、25カ月連続で前年同月を上回った。このほか、近畿256件(同47.1%増)が18カ月連続、中国52件(同48.5%増)が13カ月連続、東北64件(同100.0%増)と九州91件(同59.6%増)が7カ月連続、北海道30件(同50.0%増)と中部124件(同42.5%増)が2カ月連続、北陸18件(同80.0%増)と四国19件(同35.7%増)が2カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。

2024年5月 都道府県別倒産

※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.(株)インテックス/静岡県/不動産賃貸・管理/84億4,500万円/特別清算
2.(株)コペル/東京都/児童発達支援スクール運営ほか/68億8,300万円/民事再生法
3.(株)平河/東京都/呉服販売ほか/33億7,800万円/破産
4.(株)A-ONE/三重県/冷凍魚介類卸/33億800万円/破産
5.(株)サンライズジャパン/東京都/日焼けサロン運営ほか/30億円/民事再生法

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

M&A総研の関わりに注目集まる資金流出トラブル ~ アドバイザリー契約と直前の解約 ~

東京商工リサーチは、M&Aトラブルの当事者であるトミス建設、マイスHD、両者の株式譲渡契約前にアドバイザリー契約を解約したM&A総合研究所(TSRコード: 697709230、千代田区)を取材した。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業、中高年の活用に活路 「早期・希望退職」は大企業の2.8%が実施

 「早期希望・退職」をこの3年間実施せず、この先1年以内の実施も検討していない企業は98.5%だった。人手不足が深刻化するなか、上場企業の「早期・希望退職」募集が増えているが、中小企業では社員活用の方法を探っているようだ。

3

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

4

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

5

  • TSRデータインサイト

2023年度「赤字法人率」 過去最小の64.7% 最小は佐賀県が60.9%、四国はワースト5位に3県入る

国税庁が4月に公表した「国税庁統計法人税表」によると、2023年度の赤字法人(欠損法人)は193万650社だった。普通法人(298万2,191社)の赤字法人率は64.73%で、年度集計に変更された2007年度以降では、2022年度の64.84%を下回り、最小を更新した。

TOPへ