全国企業倒産状況

2023年度(令和5年度)の全国企業倒産9,053件

2023年度の企業倒産 9年ぶりに9,000件台に増加、中堅規模にも倒産が広がる


 2023年度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が9,053件(前年度比31.5%増)、負債総額は2兆4,630億7,800万円(同5.9%増)だった。
 件数は、2年連続で前年度を上回り、2014年度(9,543件)以来、9年ぶりの9,000件台。
 負債総額は、2年連続で前年度を上回り、2年連続で2兆円を超えた。前年度は大型倒産のマレリホールディングス(株)(埼玉、負債1兆1,330億円)が膨らんだ。2023年度は負債100億円超の中堅企業が19件(前年度比46.1%増)と1.4倍に増え、押し上げた。
 ただ、同1億円未満は6,723件(構成比74.2%)で、依然として小規模倒産を中心に推移。
 産業別は、2年連続で10産業すべてで前年度を上回った。増加率では、資材価格の高止まりや人件費上昇、人手不足が続く建設業が1,777件(前年度比39.4%増)で最大だった。

企業倒産年度推移


・上場企業倒産:12月に東証スタンダードの(株)プロルート丸光(大阪、会社更生法)が1件発生
・「人手不足」関連倒産は「求人難」78件(前年度29件)、「人件費高騰」65件(同17件)、「従業員退職」48件(同33件)。「後継者難」倒産は456件(同412件)
・形態別:法的倒産が8,701件で構成比は96.1%
・都道府県別件数:前年度より増加が45都道府県、減少が2県
・従業員数別:10人未満の構成比が88.6%、300人以上が2年連続で発生
・原因別件数:『不況型』倒産の構成比が84.3%、15年連続で80%台
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)の構成比は99.94%

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 2年連続で10産業すべてで前年度を上回る

 2023年度の産業別件数は、2年連続で10産業すべてで前年度を上回った。
 最多はサービス業他の3,028件(前年度比34.8%増)で、2年連続で前年度を上回り、2009年度以来、14年ぶりに3,000件台に乗せた。
 以下、建設業1,777件(同39.4%増)と卸売業1,048件(同27.0%増)、製造業1,006件(同25.4%増)が、それぞれ2年連続で前年度を上回った。円安基調が続くなかで、資材高や仕入コストの上昇の一方、価格転嫁が進まず、資金繰りに影響を及ぼした。
 また、燃料価格の高止まりが続くなかで、人手不足や2024年問題を間近に控えた運輸業が441件(同25.6%増)と3年連続で前年度を上回り、9年ぶりに400件台に乗せた。
 このほか、農・林・漁・鉱業102件(同12.0%増)と小売業993件(同29.9%増)、金融・保険業28件(同7.6%増)、不動産業281件(同15.1%増)、情報通信業349件(同35.2%増)が、それぞれ2年連続で前年度を上回った。

2023(令和5)年度 産業別倒産状況主要産業倒産件数構成比推移

地区別 15年ぶりに9地区すべてで前年度を上回る

 2023年度の地区別件数は、2008年度以来、15年ぶりに9地区すべてで前年度を上回った。
 北海道269件(前年度比25.7%増)と東北489件(同47.2%増)、関東3,372件(同30.5%増)、中部1,078件(同17.8%増)、近畿2,322件(同33.9%増)、中国413件(同47.5%増)、九州759件(同35.0%増)が、それぞれ2年連続で前年度を上回った。
 このほか、北陸170件(同17.2%増)と四国181件(同57.3%増)が、それぞれ4年ぶりに前年度を上回った。
 増加率が最も大きい四国は、サービス業他46件(同43.7%増)、建設業35件(同52.1%増)、卸売業30件(同275.0%増)など8産業で前年度を上回った。また、中国ではサービス業他131件(同42.3%増)、建設業82件(同36.6%増)、卸売業54件(同58.8%増)など7産業、東北ではサービス業他129件(同17.2%増)、建設業116件(同68.1%増)、製造業75件(同150.0%増)など9産業で、それぞれ前年度を上回った。

2023(令和5)年度 都道府県別倒産状況


※地区の範囲は以下に定義している。

東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


当年度の主な倒産

[負債額上位5社]
1.パナソニック液晶ディスプレイ(株)/兵庫県/IPS方式液晶ディスプレイ製造/5,836億円/特別清算
2.ユニゾホールディングス(株)/東京都/純粋持株会社/1,261億9,800万円/民事再生法
3.(株)ガイア/東京都/パチンコ店経営/943億5,500万円/民事再生法
4.FCNT(株)/神奈川県/携帯電話端末販売/872億円/民事再生法
5.ジャパン・イーエム・ソリューションズ(株)/兵庫県/携帯電話端末製造/613億円/民事再生法

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「人手不足」企業、69.3%で前年よりも悪化 建設業は8割超が「正社員不足」で対策急務

コロナ禍からの経済活動の再活性化で人手不足が深刻さを増し、「正社員不足」を訴える企業が増加している。特に、2024年問題や少子高齢化による生産年齢人口の減少などが、人手不足に拍車をかけている。

2

  • TSRデータインサイト

「食品業」倒産 2年連続増加の653件 原材料やエネルギー価格、人件費上昇が負担

歴史的な円安が続くなか、歯止めが掛からない食材の価格上昇、人件費などのコストアップが食品業界の経営を圧迫している。2023年度(4-3月)の「食品業」の倒産(負債1,000万円以上)は653件(前年度比16.3%増)で、2年連続で前年度を上回った。

3

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】テックコーポレーションと不自然な割引手形

環境関連機器を開発していた(株)テックコーポレーションが3月18日、広島地裁から破産開始決定を受けた。 直近の決算書(2023年7月期)では負債総額は32億8,741万円だが、破産申立書では約6倍の191億円に膨らむ。 突然の破産の真相を東京商工リサーチが追った。

4

  • TSRデータインサイト

2024年の「中堅企業」は9,229社 企業支援の枠組み新設で、成長を促進し未来志向へ

東京商工リサーチの企業データベースでは、2024年3月時点で「中堅企業」は9,229社(前年比1.2%増、構成比0.7%)あることがわかった。うち2023年の中小企業が、2024年に「中堅企業」に規模を拡大した企業は399社だった。一方、「中堅企業」から「中小企業」へ規模が縮小した企業も311社みられた。

5

  • TSRデータインサイト

「経営者保証」 75%の企業が「外したい」 保証料率の上昇、金融機関との関係悪化を懸念する声も

資金調達時の経営者(個人)保証について、「外したい」と回答した企業が75.5%にのぼり、経営者保証に拠らない融資へのニーズが大きいことがわかった。ただ、保証料率の上乗せや金融機関との関係悪化を懸念して経営者保証を外すことに慎重な企業も多い。

記事カテゴリを表示
記事カテゴリを閉じる

プリントアウト

RSS

CLOSE
TOPへ