全国企業倒産状況

2023年度上半期(4-9月)の全国企業倒産4,324件

年度上半期の倒産 4年ぶり4,000件台、32年ぶりに10産業が増加

 2023年度上半期(4-9月)の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が4,324件(前年同期比37.6%増)、負債総額は1兆5,959億9,800万円(同8.3%減)だった。
 件数は、2年連続で前年同期を上回り、年度上半期では2019年度同期(4,256件)以来、4年ぶりに4,000件台に乗せた。
 負債総額は、負債1,000億円以上2件(前年同期1件)を含む同100億円以上が10件(前年同期8件)発生し、2年連続で1兆円を超えた。ただ、前年同期はマレリホールディングス(株)(埼玉、負債1兆1,330億円、民事再生法)の大型倒産があり前年同期を下回った。

 物価高や人手不足、ゼロゼロ融資返済などの資金負担が増すなか、過剰債務を抱えた企業ほど新たな資金調達も難しくなっている。
 企業倒産は、業績回復が遅れた企業の「息切れ」を中心に、売上増に伴う資金需要に対応できない企業が倒産を押し上げる形で増勢をたどることが現実味を帯びてきた。


企業倒産 上半期推移


・「ゼロゼロ融資」後の倒産は利用後の倒産は333件(前年同期231件)、「物価高」倒産は334件(同122件)で増勢が続く
・「人手不足」関連倒産では、「求人難」34件(同13件)、「人件費高騰」30件(同5件)
・形態別件数:法的倒産の構成比96.0%、7年連続で90%台
・都道府県別件数:前年同期より増加43都道府県、減少3県、同数1県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比73.8%、年度上半期では11年連続で70%台
・業種別件数:飲食業、金属製品製造業、飲食料品小売業などが増加

産業別 32年ぶりに10産業すべて前年同期を上回る

 2023年度上半期の産業別件数は、1991年同期以来、32年ぶりに10産業すべてで前年同期を上回った。
 最多はサービス業他の1,468件(前年同期比42.1%増、構成比33.9%)で、年度上半期としては2年連続で前年同期を上回った。
 次いで、資材高が続く建設業852件(前年同期比41.0%増)と製造業463件(同35.7%増)が2年連続、円安などによるコスト負担が上昇している卸売業が486件(同25.5%増)で11年ぶりに、それぞれで前年同期を上回った。
 このほか、燃料価格の高止まりや人手不足が深刻な運輸業211件(同30.2%増)と農・林・漁・鉱業46件(同15.0%増)、金融・保険業18件(同38.4%増)、情報通信業176件(同54.3%増)が2年連続、小売業が462件(同34.6%増)で4年ぶり、不動産業が142件(同36.5%増)で3年ぶりに、それぞれ前年同期を上回った。

2023年度上半期(4-9月)産業別倒産状況


主要産業倒産件数 上半期推移

地区別 倒産件数、15年ぶりに9地区すべてで前年同期を上回る

 2023年度上半期の地区別件数は、2008年度同期以来、年度上半期では15年ぶりに9地区すべてで前年同期を上回った。
 北海道123件(前年同期比24.2%増)と東北224件(同64.7%増)、関東1,630件(同32.3%増)、中部531件(同34.0%増)、近畿1,080件(同35.0%増)、中国190件(同53.2%増)、九州379件(同55.3%増)が、年度上半期としてはそれぞれ2年連続で前年同期を上回った。このほか、北陸82件(同28.1%増)と四国85件(同84.7%増)が4年ぶりに、それぞれ前年同期を上回った。

2023年度上半期(4-9月) 都道府県別倒産状況

※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


上半期の主な倒産

[負債額上位5社]
1.パナソニック液晶ディスプレイ(株)/兵庫県/IPS方式液晶ディスプレイ製造/5,836億円/特別清算
2.ユニゾホールディングス(株)/東京都/純粋持株会社/1,261億9,800万円/民事再生法
3.FCNT(株)/神奈川県/携帯電話端末販売/872億円/民事再生法
4.ジャパン・イーエム・ソリューションズ(株)/兵庫県/携帯電話端末製造/613億円/民事再生法
5.堀正工業(株)/東京都/ベアリング販売ほか/350億円/取引停止処分

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ガイアの民事再生にみる 「パチンコ業界の変化」 ~ ホール淘汰、 遊技台メーカーにも影響波及 ~

パチンコホール大手(株)ガイア(TSR企業コード:320363295、東京都中央区)の民事再生(10月30日申請)が波紋を広げている。 パチンコ業界には「購入した遊技台の支払いが滞ると次の購入ができなくなる商慣習がある」との話も伝わる。

2

  • TSRデータインサイト

「雇用調整助成金」の不正受給 累計803件(799社) 飲食業、建設業、運輸業を中心に、幅広い業種に広がる

全国の労働局が10月31日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給の件数が、803件に達することがわかった。公表企業数は、2度公表された4社を含め、 799社(個人企業含む)で、不正受給金額は総額243億4,940万円となった。

3

  • TSRデータインサイト

民事再生のガイア、直近の負債判明

10月30日に東京地裁に民事再生法の適用を申請した(株)ガイア(TSR企業コード:320363295、東京都中央区)とグループ6社の債権者説明会が11月2日午前9時30分から始まった。

4

  • TSRデータインサイト

2023年度の「賃上げ」実施、過去最大の84.8% 「賃上げ率」5%超、中小企業が37.0%で大企業を上回る

2023年度の賃上げは、企業の84.8%が実施(予定含む)した。これは官製春闘で賃上げ実施率が8割を超えていたコロナ禍前の水準を超え、2016年度以降の8年間では最大となった。コロナ禍で実質賃金が目減りするなか、物価上昇に見舞われて高まった賃上げ機運が賃上げ実施率を押し上げたようだ。

5

  • TSRデータインサイト

大人気スマスロが引き金、パチンコホール大淘汰の幕開け

パチンコホールの倒産が続発している。2022年は39件発生し、過去10年間で最多を更新した。2023年も9月までに25件に達した。コロナ禍前の2019年の年間件数(22件)をすでに超えており、業界の先行きを危惧する声が高まっている。

記事カテゴリを表示
記事カテゴリを閉じる

プリントアウト

RSS

CLOSE
TOPへ