企業情報、信用調査など与信管理をサポートする東京商工リサーチ

主要上場ゼネコン58社 2012年3月期決算調査~震災の復興特需効果は僅少 外注費高騰で利益押し下げる~、信用調査、与信管理、倒産情報は東京商工リサーチ。

公開日:2012.09.20

主要上場ゼネコン58社 2012年3月期決算調査~震災の復興特需効果は僅少 外注費高騰で利益押し下げる~

  主要上場ゼネコン58社の2012年3月期決算は、完成工事高が前期比4.1%増と伸びたが、完成工事総利益は同4.4%減少し、当期純利益は同65.6%と大幅に減少した。

 完成工事高は、公共工事の削減や円高、デフレ、受注競争などを背景に、全体的には低調に推移した。しかし、スーパーゼネコンの民間建築工事が牽引し、58社全体では前期比4.1%増となった。

 完成工事総利益は、東日本大震災の復興工事が徐々に出始めたことで人手不足感が強まると同時に、人件費や外注経費、建材費等が高騰、コストアップから減少した。とりわけ完成工事原価に占める外注工事費割合は、前期比6.0%増加し、外注費高騰の収益圧迫が明らかになった。また、当期純利益は、2012年3月期に法人税率引下げが行われ、税効果会計により計上した繰延税金資産の取崩しを迫られ、損益計算書上の法人税等調整額が膨らみ大幅減を招いた。

 主要上場ゼネコンは震災の復興特需で受注増が期待されたが、2012年3月期までは特需効果は少なく、外注費高騰や繰延税金資産取崩しなどで厳しい決算となった。

●調査基準

   本調査は3月期を本決算とする主要な上場建設会社の2012年3月期決算について、前年との比較可能な58社を対象に完成工事高・完成工事総利益・完成工事総利益率・当期純利益を抽出。それぞれの項目を58社合計で集計分析した。さらに、完成工事原価の内訳(材料費、労務費、外注費)を抽出し、完成工事高に占める割合を算出し分析した。各項目は有価証券報告書に基づく単独決算の数値。

 

58社の完成工事高 増収は34社、全体では4.1%増 

 上場ゼネコン58社の2012年3月期の完成工事高合計は、9兆5,639億3,900万円で、前期(9兆1,848億9,500万円)より4.1%増加した。

 58社のうち、増収は34社(構成比58.6%)、減収は24社(同41.4%)。増収34社のうち、前期比10%以上の増収は10社、うち20%超は2社(東亜道路工業、鈴縫工業)だった。

 一方、減収24社のうち、2ケタの減収率は7社。うち前期比20%超の大幅減収は2社(若築建設、ナカノフドー建設)だった。

 完成工事高1,000億円以上の23社のうち、増収は17社。スーパーゼネコン4社(清水建設、鹿島建設、大成建設、大林組)は、そろって増収だった。このほか、前田道路(前期比15.4%増)、NIPPO(同14.6%増)など、道路土木工事業者の増加が目立つ一方、ナカノフドー建設(同21.6%減)、佐田建設(同16.0%減)、大末建設(同14.9%減)、奥村組(同10.3%減)など、中堅以下の建築工事を中心とする業者で減収が多く、業種間で明暗が分かれた。

 

58社の完成工事総利益 外注費が上昇し0.6ポイント悪化

  58社の完成工事総利益は、合計6,497億1,600万円で、前期(6,798億5,000万円)より301億3,400万円(4.4%)減少した。58社のうち、増益は24社(構成比41.4%)、減益は34社(同58.6%)。    

 完成工事利益率は、前期比0.6ポイント減少した。これは外注費高騰が大きく影響している。完成工事原価のうち、外注費の構成比が前期比6.0%増と他の材料費・労務費などに比べ大きく伸びた。完成工事高に対する外注費の割合(外注費比率)は、 56.8%から57.8%へ1.0ポイント増加した。

 東日本大震災の被災地復興事業で、東北を中心に人手不足が表面化、外注費高騰が収益圧迫を招く傾向が強まっている。完成工事原価に占める外注費割合が比較的高いゼネコンでも、外注費のアップで総利益率への影響が大きく、全体に完成工事利益率は低下している。

 総利益を企業別にみると、スーパーゼネコンでは清水建設だけが減益、ほか3社は増益。準大手クラスは軒並み苦戦を強いられたが、西松建設(前期比134.4%増)、飛島建設(同114.2%増)は、前期厳しかった反動で回復した。前田道路(同71.4%増)、NIPPO(同62.2%増)など、道路土木工事業者は大幅増益が目立った。

 

当期純利益 繰延税金資産取崩しで当期純利益は低下

 58社の当期純利益は、前期比638億8,000万円(65.6%減)と大幅に減少した。背景には、法人税率引き下げにより、税効果会計の繰延税金資産の取崩しで法人税等調整額が増加(59.4%増)。税引前当期純利益から控除する法人税等が増加し、当期純利が減少した。

 法人税等税率(法人税等実効税率)は、所得税法の一部を改正する法律及び「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」の公布で、2012年4月1日以降、引き下げられた。これに伴い、法人税実効税率が従来の40.5%から38.3%に引き下げられ、繰延税金資産の積立額が大きかった企業ほど繰延税金資産の取崩しで当期純利益に影響した。2012年3月期は、完成工事総利益が下落したため、会計的な特殊事情でさらに利益を押下げたようだ。

 


禁・転載・複写

お問合せ先
株式会社東京商工リサーチ 情報部/TEL:03-6910-3155
または最寄りのTSR支社店へお問い合わせください

TSR商品販売サイト

  • TSR ONLINE SHOP:出版物・マーケティングレポート等のオンラインショッピングサイト

TSR関連おすすめサービス

  • エラベル:TSRがオススメする就職・営業に役立つ地域の優良企業紹介サイト
  • TSR express:TSR情報誌をご購読のお客様に無料でお届けする倒産情報配信・検索サービス
  • 東日本大震災関連記事

TSRのソーシャルネットサービス(SNS)

  • 東京商工リサーチtwitter公式アカウント
  • 東京商工リサーチ公式facebookページ