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トレンド経済レポート:デフレ下の個人消費 変化の兆し<br>第1回 「ホテイチ」 、信用調査、与信管理、倒産情報は東京商工リサーチ。

公開日:2003.09.30

トレンド経済レポート:デフレ下の個人消費 変化の兆し
第1回 「ホテイチ」

 デフレ、冷夏による夏物商戦の不振と、景気の回復とは程遠いような言葉が連日の新聞紙上を賑わせている。しかし一方で、高級ホテルのレディスプラン、カリスマ美容師、高級海外旅行、エステティック、健康食品などなど、不況といわれても支出を惜しまない傾向も見られる。

 女性、シニア、これまでターゲットではなかった客層、健康関連等の新しい分野にニーズを見出し、各企業とも個人消費を誘引しようと知恵をしぼっている。日本の個人消費は、不況による消費の節約といっても、何らかの変化の兆しが見えるのである。

 今後2回にわたって、デフレ下の個人消費の変化の兆しについて取り上げる。第1回はホテル業界、第2回は健康関連消費にスポットをあてて、日本経済の今後を概観するとともに、中小企業としての対応策を考えていくことにする。

 

 

 

  イラク戦争およびSARSの影響による外国人宿泊客の減少、企業によるセミナー需要減少と、日本のホテル業界を取り巻く環境は厳しい。日本経済新聞社の推計によると、2002年度のホテル産業の総売上は、前年度比2%減の約1兆4500億円であり、主力の宴会部門が6年連続して減収であることから、業界全体として市場が縮小傾向にあることは否定できない。

 

 ◎ホテルオリジナルの持ち帰り惣菜店が健闘

 このような苦境の中、最近「ホテイチ」という言葉が登場している。ホテイチとは、ホテルの1階、ホテルオリジナルの持ち帰り惣菜店のことである。昨年は、ホテルオークラ、都ホテル大阪がテークアウト売り場を設けたほか、今年に入り帝国ホテルも改装・新設、リーガロイヤルホテル、赤坂プリンスホテルなどもホテイチを強化して、不振の宴会部門をよそ目に、年商8億円、前年度比88.4%増(ロイヤルホテル)の健闘を見せている。

 

 高級ホテルのホテイチの一般的傾向は、昼は凝ったサンドイッチセット、夜はロースとビーフやエスカルゴなどの高級惣菜を1品1000円程度で提供する。館内で飲食するのに比べて約半額と、かなり安い。ただし、百貨店地下の惣菜売り場「デパ地下」よりは高めである。主な客層は、味や素材にこだわる主婦やOLたちであり、「家庭で少しだけリッチに」という消費行動がホテイチ健闘の背景にある。

 

 各ホテルとも、このホテイチブームにのって、定期的にメニューを入れ替えたり、各ホテルの個性や特徴を打ち出している、高級路線を打ち出して、シェフと相談して料理を入門できる専用デスクを設ける(帝国ホテル)ところもあれば、OLの昼食需要を狙ってコンビニを意識した比較的安めの価格設定とする(赤坂プリンスホテル)ところもある。

 

 

 

◎需要減少に立ち向かうホテル業界

 また、ホテルオークラでは、東京23区内を対象に、宅配サービスを展開する。基本的には予約不要で、希望の日時を指定でき、メニュー選択からデリバリーまで、かなり顧客の希望に対応する木目細かなサービスである。同サービスは地域情報サイトに宅配専門ページを開設し、注文を受けている。このサービスの運営にあたっては、ホテルオークラ単独ではなく、配達業務を水産会社の幸伸(東京都港区)の宅配サービス部門に、ホームページを松下電器産業が運営する「くらしe街 汐留」にそれぞれ委託している。

 

 以上のように、ホテル業界は、長期的にみた法人セミナーの需要減少および宴会部門の縮小に対して、ホテイチをはじめとした外販部門に期待を込めている。また、一方で客室部門においても、ビジネス宿泊客向けのプリンターやコピーなどの設備、フィットネス施設、利用客に新鮮さを提供しつづけるための客室改装など、減収からの脱却を狙った取り組みを強化しているのである。

 

 

 

◎ホテルの収益構造からの検証

 法人需要の縮小、宴会部門の縮小と主力部門の不振で、明るい話題の少ないホテル業界であるが、「ホテイチ」は果たして減収の救世主となりうるのであろうか。ここでは、東証2部上場の帝国ホテルの公表財務諸表から検証していくことにする。

 

 ホテルの収入は一般的に、宿泊、レストラン、宴会、外販、その他の5部門から構成される。これらの内訳は、宴会部門がトップを占める。かつて、ホテル客室サービス部門ではトップの評価を受けながら、経営不振に陥ったホテル西洋銀座は、この宴会部門をもっていなかったことに起因する。

 

 ホテイチの属する外販事業部門の2001年度売上は2792百万円で、全体の6.5%、これが仮に80%増としても5025.6百万円である。前年からの全売上ベースでのマイナスは約34億7800万円であり、いくらホテイチが健闘しても、残念ながら、売上の減少分を補う規模にはとうてい達しないのである。

 

 

 

◎外資系を含めたホテル進出ラッシュが続く

 東京だけをみても、2003年にはグランドハイアット、ロイヤルパーク汐留タワー、パークホテル東京、ストリングスホテル、ホテルエドモント、2004年には丸の内ホテル、ヴィラフォンテーヌ汐留、ホテルサンルート品川シーサイド、2005年以降には、マンダリン・オリエンタル東京、ザ・ぺニンシュラ東京、東京プリンスホテルパークタワー等が開業する予定である。

 

 これだけをみても、ホテルの競争激化は容易に想像がつく。市場規模が縮小している中でのシェア争いは厳しさを増す。ビジネスマンを主体とする利用は、新幹線のぞみのダイヤ改変などに伴い、日本国内の移動はより速くなり、宿泊が不要または短期化するため、市場規模の拡大は見込みづらい。

 

 

 

◎他業種との競争も

 ホテイチは消費者のニーズを見極め、自らの優位性を打ち出したマーケティングの成功ともいえるが、ホテイチの競争相手は、他のホテルだけではない。デパ地下をはじめとする中食産業に加え、外食産業でもある。

 

 外食市場は、デフレの波を受けて、各社とも低価格競争に入っており、一方で高級感を打ち出した高価格帯の商品や店舗を強化しつつある。収益確保のための施策であるが、ホテルは外食産業、中食産業も含めた競争になることが予想される。ホテイチを見ると、個人消費の変化の兆しは見られるものの、残念ながらホテル業界全体の景気向上となるほどのインパクトはないと言える。第2回は健康関連消費を取り上げる。

 

 

 

 


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