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トピックス:「2003年冷夏が襲う?!」<br>アイスクリーム卸 藤三商会の経営破綻、信用調査、与信管理、倒産情報は東京商工リサーチ。

公開日:2003.10.23

トピックス:「2003年冷夏が襲う?!」
アイスクリーム卸 藤三商会の経営破綻

アイスクリームの卸売り最大手の藤三商会が10月2日、民事再生法の適用を申請、再生手続の開始が決定した。同社は1953年設立で、森永乳業の全国総代理店として成長し、総合スーパーやコンビニを中心に取引店舗網を広げた。同社によると、アイスクリーム市場の縮小という経営環境の激しさにコスト削減スピードが追いつかなかったことが原因であるという。本稿では、藤三商会の経営破綻について、経営指標分析に加えて経営環境を検証する。

◎卸売り業者としての機能

 日本の商習慣は、メーカー、卸、小売の三段階が存在する。近年、卸という中間業者を「中抜き」にすることによって、消費者のニーズにあった商品を、より早く、より低価格で提供できるようになった例も多々ある。もともと、卸売りの収益性は低い。これがデフレ時代に突入し、マージンの確保が難しくなっているのは容易に想像がつく。

 

 2002年は食品業界が大きく揺らいだ時期であった。BSEによる牛肉関連商品の売上が大きく減少し、産地偽造表示事件が相次ぎ、消費者不振が高まった。しかしながら、この時期を経た決算期(2003年3月期決算)の食品メーカーは、徹底的な合理化により軒並み増益を確保している。

 

 一方で、今年の夏が記録的な冷夏に見舞われ、アイスクリームは典型的な打撃を受けた商品である。コンビニ、スーパー、百貨店など小売業者は軒並み前年同月マイナスの売上を記録している。

 

 

 

◎各種経営指標の推移

 ここで、経営破たんに至った藤三商会の各種経営指標の推移を分析することで、破綻要因を探ってみる。

 まず、卸売り機能を果たす同社の取扱い商品の利益率であるが、1993年からの推移を見る限り大きな変化は見られない。強いて言えば、景気循環同様の動きの範囲内であり、同社取扱商品の利益率は保たれている。

 

 次に、同社の流動比率および当座比率はどのような動きをしていただろうか。これらは、企業の資金繰りの安定性を図る指標であり、卸売り業者にとっては、キャッシュが納入商品の買い付け原資であることから、きわめて重要な指標である。これらに関しても、大きな変化は見られない。また、商品在庫に関して、棚卸資産回転率を見ても、大幅な変化は見られない。

 

 すなわち、今回のケースはこうした経営指標だけを追っていても、企業倒産の兆候を察知することはできなかったということである。

 

 

◎財務諸表に表れないリスク

 それでは、なぜ経営指標だけでは経営不安を察知できないのか。その理由は、子会社を含めた取引にある。つまり、子会社に商品を納入し、親会社は在庫を抱えていないように見せることや、子会社の資金を親会社が保証するなど、親会社の財務諸表には現れないあらゆる負担が子会社につけられているということである。

 

 上場企業の場合、決算が連結に代わり、ディスクロージャー上、子会社を利用した財務諸表操作は事実上不可能になっている。しかし、中小零細企業に関しては、財務諸表を公表する義務があるわけでもなく、財務諸表が企業実態のすべてを表すわけでもないのが実情である。

 本件の場合も、子会社の財務諸表が公表されているわけでもなく、実態としての在庫や資金はつかみきれないところである。

 

 

 

◎経営破綻への経緯

 しかしながら、企業実態を判断するのは財務諸表だけではなく、企業を取り巻く環境を把握していれば、それなりの判断が可能である。

 ここで、藤三商会が経営破綻に至ったのに関連のある事象を抜粋する。もちろん、ここに列挙した以外にも破綻につながる要因は存在するが、これらは3つに分類できる。

 

時期
事象
影響
分類
2001年3月
前会長死去
退職金支払い
例外
7月
三菱商事の資本参加
ローソン向け営業強化
大口
8月
マイカル破綻
売掛金5億円回収不能
大口
12月
ダイエーへの納品撤退
売上減少
大口
2002年夏
BSE、食品産地偽造事件多発
食品・外食産業の不振
消費者動向
2003年春
ローソン向けチルド商品打ち切り
売上減少
大口
冷夏
アイスクリーム売上不振
消費者動向


 売上の減少につながる事象として大きなものは、大口の取引先に関連するものであることがわかる。中小企業の場合、大口の取引先への依存度が高く、大口を確保していればある程度安定した業績を確保できる。

 マイカル破綻、それに続いてダイエーの経営不安説が顕在化したことによる取引の撤退、それに加えてコンビニのローソンが自社ブランドを投入する方針を示したことによる取引の中止は、藤三商会にとって短期間のうちに安定的な大口取引先を失ったことになる。

 「今年の夏は冷夏でアイスクリームが売れなかったから」という消費者動向に関するものだけが経営破たんの要因ではないことがわかるだろう。

 

 

 

◎昨今の経営環境が与えた破綻への引き金

 通常、藤三商会は夏場の氷菓の売上を、冬場の商品買い付け資金にするという資金移動計画をしていた。この夏の売上不振によって、買付資金が手当てできず、主力銀行も融資に応じなかったため、法的手続きをとらざるを得なかったというわけである。

 もしも、所有する不動産などが売却できて、キャッシュが入れば今年の修羅場を乗り切ることはできただろう。しかし、このような「神風」は吹かなかったのである。

 

 

 

◎卸売業者の使命 「中抜き」と「機会損失」への対応

 昨今の経営近代化の潮流として、「卸の中抜き」現象が挙げられる。メーカー、卸売り、小売という3段階を経て、消費者に商品が渡るという日本の流通慣行において、昨今は消費者動向を最もよく把握する小売からの需要情報を、製造するメーカーにダイレクトに流すことによって、より効率的な生産計画を練っているのである。

 

 こうした動向の背景には、どの企業も共通して、在庫を抱えることなく、商品の回転をできるだけ早くしたいという思惑がある。この結果、予想を上回る売れ行きに生産が追いつかず、人気商品が欠品による売上機会損失を起こすケースが相次いでいる。

 

 

 

◎最近商品の販売・出荷を一時休止した主な事例(出所:日経産業新聞 10月8日より)
企業
商品
停止期間
再開時期
サッポロビール
エビス(黒)
6月
7月23日
ロッテ
クーリッシュ
8月12日
9月1日
紀文フードケミファ
豆乳
9月21日
9月24日
マルサンアイ
麦芽豆乳
9月20日
12月予定
ハーゲンダッツジャパン
カスタードプディング
9月24日
未定


  したがって、卸売業者の究極の使命は、商品の供給を調整することである。つまり、売り切れる量だけを生産したいメーカー、売り切れる量だけを仕入れたい小売の間にたって、在庫を確保するのである。「在庫リスク」を負うのが卸売りの究極の使命ということである。この在庫リスクを負うためには、相応の資金力が必要であり、流動比率の充実が不可欠となる。

 「卸売り業者の中抜き」が叫ばれて久しいが、できるだけ在庫を持ちたくないメーカーおよび小売に代わって、人気商品の売上機会損失のバッファとなることができる卸売り業者は存在意義のある企業であると言える。

 

 

 

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