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企業倒産で振り返る「平成」30年(前編)~バブル崩壊、金融危機、リーマン・ショックに揺れた日本経済~

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公開日付:2019.04.24

 5月1日から新元号「令和」が始まる。これを前に平成の30年間を振り返り、新時代の「令和」を展望した。平成はバブル経済の末期にスタートしたが、10年ごとに「100年に一度の大不況」と「戦後最長の好景気」が交互に訪れた激動の30年間だった。


Ⅰ.平成第1期(1989-1998年):消費税3%導入から金融危機まで

バブル崩壊の引き金「総量規制」の衝撃
 1989(平成1)年4月、消費税3%が導入された。日経平均株価は大納会に最高値の3万8,915円に達し、世の中は空前の「バブル景気」に酔いしれていた。だが、90年3月、旧大蔵省銀行局はバブル経済による異常な地価高騰と土地投機を抑えるため、金融機関に『総量規制』を通達した。
 その内容は 、(1)不動産向け融資の前年比伸び率を総貸出の前年比伸び率以下に抑える、(2)不動産業、建設業、ノンバンクへの融資実態の報告を求め、規制に違反した金融機関には是正を指導するものだった。通達後、金融機関は一気に不動産関連の融資に慎重になり、急速に信用収縮が進んだ。
 通達は91年12月に解除されたが、不動産を中心とする資産デフレを招き、バブル崩壊の引き金となった。

阪神・淡路大震災、消費税5%に
 不動産業倒産は、バブル景気に支えられて89年は年間285件にとどまっていたが、91年は1,156件、92年は1,169件と4倍に急増、「バブル崩壊」を象徴した。
 さらに、95年1月に「阪神・淡路大震災」が発生した。震災関連倒産は兵庫県を中心に3年間で314件にのぼった。この影響もあり地元地銀の兵庫銀行が戦後初めて銀行として経営破綻し、その後の金融危機を予兆した。
 97年4月に消費税が5%に引き上げられた。特別所得減税の打ち切りと医療費の自己負担増を併せて実施し、GDPは97年度にマイナス0.7%、98年度にマイナス1.9%と2年連続で水面下に沈んだ。この施策の失敗は、今も教訓として引きずっている。


住専問題が表面化
 この時期は、住宅ローン専門の住宅金融専門会社(以下、住専)の不良債権問題も大きな社会問題となった。90年3月の総量規制は住専を対象外とした。住専は不動産業向け融資に急傾斜したが、地価下落で回収不能の不良債権が住専全体で約6兆5,000億円に達した。このため95年には住専は8社のうち、7社が行き詰まった。政府は損失の穴埋めに6,850億円を予算から支出した。これが公的資金投入として大きな批判を浴びた。

1989年~1998年の大型倒産

金融危機、相次ぐ金融機関の破綻
 97年4月、中堅生保の日産生命保険が債務超過に陥り、大蔵省から業務停止命令を受けた。戦後初の保険会社の破綻だった。運用資金を株式に傾斜させ、含み損が膨らんだ。これを皮切りに97年11月に準大手証券の三洋証券が会社更生法を申請、戦後初めての証券会社の倒産となった。その後も北海道拓殖銀行、山一證券、徳陽シティ銀行と、相次いで金融機関が経営破綻した。
 さらに、98年は10月に日本長期信用銀行、12月に日本債券信用銀行と長銀2行が相次いで破綻、金融危機がピークを迎えた。

貸し渋り対策、「特別保証」制度創設
 この金融危機を背景に、バブル崩壊で貸出に担保とした不動産の急激な値下がりで担保物件が不良債権化した。これが銀行の「貸し渋り」、「貸しはがし」として表面化した。
 事態を憂慮した当時の小渕内閣は98年10月から「中小企業等貸し渋り対策大綱」に基づき、「中小企業金融安定化特別保証制度」(以下、特別保証制度)をスタートさせた。
 総額20兆円の信用保証枠を設け、当初は2000年3月末までの期限付きだったが、2001年3月末まで1年間延長し、保証枠を10兆円追加して30兆円とする措置を講じた。特別保証制度は、中小企業の金融機関からの借入れの際、信用保証協会が100%保証するもので、倒産減少に大きな効果を発揮した。98年に年間1万8,988件だった企業倒産は、99年には1万5,352件まで約2割(19.1%)減少した。
 中小企業の資金繰り改善に即効性をみせた特別保証制度の申し込みでは、信用保証協会の審査が必要だったが、保証要件が緩和され、ネガティブリスト項目に該当すること以外は、原則として信用保証の提供が認められ、事実上無審査に近かったとの声も多い。
 だが、「特別保証制度で得た資金で株やゴルフ会員権の購入資金に充てた」、「劣悪な企業にも融資を実行する誘因を銀行に与え、資金配分の効率性を損なう制度だった」など、金融機関の審査能力を阻害し、モラル・ハザードを引き起こしたとの厳しい指摘もあった。
 東京商工リサーチが調べた特別保証制度を利用しながら破綻した企業倒産は、99年が2,036件、2000年3,927件、01年4,771件、02年4,484件、03年2,662件と推移した。
 特別保証制度の効果については、中小企業庁が2002年9月の経済財政諮問会議に提出した資料で、「1万社の倒産、10万人の失業、2兆円の民間企業の損失を回避」させたと評価している。


Ⅱ.平成第2期(1999-2008年):不良債権処理加速と「リーマン・ショック」

戦後初のデフレ、「不良債権処理」の加速
 特別保証制度で企業倒産は沈静化したが、2000(平成12)年10月に中堅生保の協栄生命保険が、高利回りの長期運用商品で逆ザヤが累積し、会社更生特例法を申請した。負債総額は4兆5,296億円にのぼり、戦後最大の大型倒産となった。同月は千代田生命保険も更生特例法を申請し、金融危機の余震が続いた。また、地価上昇を前提に大規模な店舗展開をしていた百貨店のそごう(00年)や総合スーパーのマイカル(01年)が過剰な借入金を抱えて法的倒産に踏み切った。
 01年3月、ついに政府は戦後初めて 「日本経済はデフレ」 と認めた。
 01年4月に発足した小泉内閣は構造改革を推進し、不良債権処理の加速を重要課題とした。02年10月に「金融再生プログラム」が作成され、「04年度には、主要行の不良債権比率を現状の半分程度に低下」を目標に掲げた。この動きを裏付けるように、02年の上場企業倒産が過去最多(当時)の29件発生した。
 不良債権処理の加速の影響は、東京商工リサーチの「主な上場企業の希望・早期退職者募集状況調査」でもわかる。02年は募集実施企業が過去最多の200社にのぼった。金融機関主導で選別が進み、否応なしのリストラ実施で体質強化を迫られた当時の経営環境を如実に反映した。

1999年~2008年の大型倒産

リーマン・ショック、上場倒産が過去最多
 08年9月15日、米国サブプライムローンの巨額損失で、米国投資銀行のリーマン・ ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことを発端に、世界同時不況が巻き起こった。「リーマン・ショック」である。
 日本では、日本法人のリーマン・ブラザーズ証券が戦後の大型倒産で歴代2位の負債3兆4,314億円を抱え民事再生法を申請した。
 余波は広がり、08年の上場企業倒産は戦後最多の33件を数え、08年の年間全国倒産は1万5,646件(前年比11.0%増)と、5年ぶりに危機ラインの1万5,000件を超えた。

主な上場企業 希望・早期退職者募集状況


100年に一度の危機と「緊急保証制度」
 「100年に一度の経済危機」と事態を重くみた政府は、08年10月31日から「緊急保証制度」を実施した。緊急保証制度は、中小企業が金融機関から融資を受ける際、信用保証協会が100%保証を付けるもので中小企業等の資金繰り支援拡充として創設された。
 第1次補正予算は6兆円規模で開始され、第2次補正予算では20兆円規模に拡大した。同制度は、その後「景気対応緊急保証制度」に名称を変更、保証枠は36兆円まで拡充し、11年3月末まで実施された。
 東京商工リサーチ調べの緊急保証制度を利用後に破綻した企業倒産は、09年が67件、10年77件、11年126件、12年87件、13年58件と推移した。
 特別保証制度と比べ、倒産件数が少ない。これは特別保証制度が事実上、無審査に近い状態だったのに対し、緊急保証制度は特別保証制度の反省から、運用が厳しかったためだ。モラル・ハザード防止の観点から売上高や利益などに基準が設けられ、モニタリングが機能した。基準をクリアできた企業しか利用できなかったことが倒産件数に反映した。


Ⅲ.平成第3期(2009-2019年):金融円滑化法施行、東日本大震災、続く倒産減少

「金融円滑化法」施行、倒産抑制に効果
 政権交代で2009(平成21)年9月に発足した民主党の鳩山内閣は、リーマン・ショックの影響を受けた中小企業の資金繰りを下支えすることを目的に、亀井金融担当大臣のもとで同年12月から「中小企業金融円滑化法」(以下、円滑化法)を施行した。
 円滑化法では、中小企業等の借り手から貸付条件の変更等の申込みがあった場合、金融機関はできる限りこれに応じるよう努めることを義務付けた。当初、11年3月末までの時限立法だったが、その後2回期間が延長され、13年3月末で終了した。
 円滑化法の正確な利用企業数はデータが不明だったが、東京商工リサーチは30-40万社と推計し、金融庁もこれと同様の見方を示した。
 概ね日本の中小企業の約1割程度の企業が条件変更を受けたことになる。円滑化法が施行された09年以降、全国の企業倒産は18年まで、10年連続で前年を下回っており、円滑化法の倒産抑制効果が顕著だったことが窺われる。


「東日本大震災」関連倒産が1,900件超え
 11年3月11日、東北を中心に東日本の広い範囲で地震が発生、東日本大震災と命名された。それから丸8年が経過した。政府は「東日本大震災復興緊急保証制度」を創設するなど、中小企業の資金繰りを支援したが、震災関連倒産は2011年3月から2019年3月まで97カ月連続で発生し、累計件数は1,905件(3月29日現在)に達した。
 全国では島根県を除く46都道府県で関連倒産が発生、広範囲な影響の大きさを浮き彫りにした。年別(1-12月)件数は、11年が544件、12年490件(前年比9.9%減)、13年333件(同32.0%減)、14年175件(同47.4%減)、15年141件(同19.4%減)、16年97件(同31.2%減)、17年71件(同26.8%減)、18年44件(同38.0%減)と推移。18年は収束傾向が強まり、2011年の12分の1以下に減少した。だが、月平均3.6件ペースで推移し、まだ震災の影響を引きずっている。


ナショナルフラッグの日本航空が破綻、タカタなど製造業の大型倒産続出
 企業倒産が歴史的な低水準をたどる一方で、有力企業の大型倒産が相次いだ。10年1月、東証1部上場で日本のナショナルフラッグキャリア(国を代表する航空会社)であるJALグループの持株会社の日本航空がグループ2社とともに会社更生法を申請した。日本航空の負債総額は6,715億円にのぼった。
 多額の有利子負債とOBを含む従業員の退職年金の未積立退職給付債務、機体購入リース債務の負担など、放漫経営が積み重なり実質債務超過の状態が慢性化し、経営に行き詰まった。半官半民のDNAを色濃く残し、「親方日の丸体質」から脱却できなかったと揶揄された。その後、同社は紆余曲折を経て再建され、12年9月に東京証券取引所に再上場を果たした。
 この間、製造業の大型倒産も目立った。12年2月に世界第3 位の半導体DRAM メーカーのエルピーダメモリが会社更生法を申請した(負債4,480億3,300万円)。国際的なDRAM の競争激化と製造コスト高から大幅赤字を計上。改正産業活力再生特別措置法に基づき提出した事業再構築計画の認定を09 年に経済産業省から適用第1 号として受けたが、業界の荒波に飲みこまれた。
 16年11月にはパナソニックプラズマディスプレイが特別清算を申請した(負債約5,000億円)。親会社パナソニックの出資で、地上波デジタル放送の高精細映像を再現するプラズマディスプレイ事業を目的に設立された。しかし、液晶との競争激化や市場価格の大幅下落などの影響を受けプラズマディスプレイパネル事業の継続は難しく、事業を停止し資産処分を進めていた。

2009年~2019年3月の大型倒産


 17年6月には、エアバッグで世界シェアの2割を占めた大手自動車部品メーカーのタカタが民事再生法を申請した。負債は約1 兆5,024 億円。製造業の倒産では戦後最大の大型倒産となった。米国などでエアバッグの異常破裂による死亡事故が発生し、大規模リコールに発展した。米国司法省との司法取引に関連する特別損失を計上し、最終赤字が膨らんだ。私的整理を求める創業家側と再建を迅速に進める法的手続を求めるスポンサー、自動車メーカー側との調整が難航したが、最終的に民事再生の適用で再建を図ることになった。だが、タカタの倒産は、死亡事故への対応の遅さなど、コンプライアンスと企業統治(ガバナンス)の稚拙さが世間を騒がせた。
 世界的シェアを持つメーカー、大手企業がグローバルな競争やコンプライアンス違反に問われ、経営破綻に追い込まれた。


「人手不足」関連倒産が過去最多
 こうした中、2018年度の「人手不足」関連倒産は400件(前年度比28.6%増、前年度311件)に達した。年度ベースでは、13年度に調査を開始以来、これまで最多だった15年度(345件)を上回り、最多件数を塗り替えた。
 2018年度の「人手不足」関連倒産400件の内訳は、代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」型が269件(前年度比7.6%増、前年度250件)が最多。
 次いで、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型が76件(同162.0%増、同29件)、賃金等の人件費のコストアップから収益が悪化した「人件費高騰」型が30件(同114.2%増、同14件)、中核社員の独立、転職などで事業継続に支障が生じた「従業員退職」型が25件(同38.8%増、同18件)だった。事業承継が重要課題に浮かび上がってきたが、「後継者難」型が全体の6割(構成比67.2%)を超え、さらに「求人難」型や「人件費高騰」型の増加が目立った。企業倒産は低水準で推移するが、「人手不足」に絡む倒産が件数を押し上げる要因になりつつある。
(続く)
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年4月26日号掲載予定「特別コラム」を再編集)

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