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第一中央汽船グループの債権者調査

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公開日付:2015.12.25

 第一中央汽船(株)(TSR企業コード:291084648、東京都中央区)と関連のSTAR BULK CARRIER CO.,S.A.(TSR企業コード:015465810、東京都中央区)が9月29日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額はそれぞれ1,196億759万円、568億5,902万円。東京地裁に提出された再生手続開始申立書には、多数の債権者が記載されているが、外航・内航の両輪を備える総合海運会社のため、申立書上の債権者は海外法人であることも多く、実際の焦付状況を把握しにくい。
 今回、東京商工リサーチが独自に保有する国内最大級の国内企業データベースと、提携するDun & Bradstreet(ダンアンドブラッドストリート、本社:米国)が保有する世界最大級の海外企業データベースなどを活用し、第一中央汽船グループの債権者の国内法人への影響を探った。


  • 本調査は、東京商工リサーチが保有する企業データベースと、Dun & Bradstreetが保有する海外企業データベース「WorldBase」を活用。第一中央汽船、STAR BULK CARRIER CO.,S.A.の「再生手続開始申立書」における債権額100万円以上の債権者について分析した。

分析手法

 国内企業への影響を探るため、再生手続開始申立書に記載されている海外法人の債権者の実質的な支配者を可能な限り特定した。申立書上の債権者が海外法人の場合、住所に記載されている「気付(きづけ)」が国内法人であれば「実質上の国内法人債権者」とした。気付が記載されていない、もしくは気付も海外法人の場合はDun & Bradstreetの企業データベース「WorldBase」から当該法人の支配権最上位者を特定し国内法人であれば、「実質上の国内法人債権者」として、分析対象とした。なお、再生手続開始申立書における海外債権者の支配権最上位者が第一中央汽船の場合は、分析対象から除外した。

分析マトリクス

地区別:四国が債権額ベースで2位

 第一中央汽船、STAR BULK CARRIER CO.,S.A.の「実質上の国内法人債権者」(判明分、以下国内債権者)は200社だった。このうち、関東は108社(構成比54.0%)で最多。次いで、四国が37社(同18.5%)だった。四国の各県の内訳は、徳島県が3社、香川県がゼロ、愛媛県が33社、高知県が1社。愛媛県内には、海運業者やこれら業者と取引する法人が多数存在するため、債権者数も多くなった。一方、北陸に国内債権者は確認されなかった。
 債権額ベースでも、関東がトップで452億9,707万円(構成比79.8%)。次いで、四国の52億8,245万円(同9.3%)、近畿の21億7,722万円(同3.8%)の順だった。四国の各県の内訳は、徳島県が1億5,234万円、愛媛県が51億2,556万円、高知県が455万円。

産業別×売上高別マトリクス:売上高5億円未満の運輸業者が26社

 債権者数ベースでは、売上高5億円未満が32社(構成比16.0%)、5億円以上10億円未満が13社(同6.5%)、1,000億円以上が53社(同26.5%)などとなった。債権額ベースでは、売上高1,000億円以上の国内債権者が総額409億4,467万円の債権を有している。売上高100億円以上500億円未満の債権総額は46億4,963万円であるのに対し、5億円未満は37億9,093万円の債権を有している。前者の国内債権者は38社であるのに対して、後者は32社である。5億円未満の債権者への影響が心配される。
 産業別と債権者の売上高別のマトリクスでは、売上高1,000億円以上の金融・保険業者17社が債権を有しており、債権総額は230億246万円。債権額全体の40.5%が集中していることになる。運輸業者は98社が債権を抱えており、最も多い売上高レンジは5億円未満で26社。売上高が判明している運輸業者86社に占める比率は、3割(30.2%)を超えている。小売業の国内債権者は4社で債権総額は6,557万円、不動産業は2社で2,143万円だった。債権状況からみた場合、これら産業は第一中央汽船グループの倒産による影響が比較的小さいと判断される。

産業別・売上高別

業種別:銀行が債権総額の36.2%を占める

 業種別の債権総額は銀行が205億3,921万円(構成比36.2%)で最も多かった。次いで、総合リース業を含む各種物品賃貸業の124億2,068万円(同21.8%)、船舶貸渡業の47億6,125万円(同8.3%)と続く。
 銀行、各種物品賃貸業のいずれの債権者も売上高(銀行は経常収益)は500億円を超えている。しかし、船舶貸渡業者で業績が判明している企業21社のうち、売上高が500億円を超えている債権者は存在せず、比較的規模の大きい100億円以上でも2社のみである。
 なお、国内債権者となっている船舶貸渡業者26社(業績未判明分も含む)のうち13社が愛媛県に所在している。

業種別


 9月29日の第一中央汽船、STAR BULK CARRIER CO.,S.A.の民事再生法の適用の申請から約3カ月が経過した。今回の「実質上の国内法人債権者」を基にした分析で、小規模な運輸業者が売上高規模からすると、多くの債権を抱えていることが分かった。民事再生法の申請後、第一中央汽船は債権者である船主に対して市況連動型の用船料への移行を要請している。中国景気の減速に伴い鉄鉱石や石炭の運送需要は落ち込んでおり、付随してバラ積み船の運賃相場も低迷している。このため、債権者の船主は当面、民事再生前より低い水準の用船料での契約が続く可能性が高く、今回の分析対象である債権額以上に経営に対するダメージは大きいとみられる。
 債権額ベースでトップの債権総額を抱える金融・保険業にも注目すべきだろう。海運業界は、船主が船舶を新造する際にシップファイナンスを利用するケースが多い。シップファイナンスは、第一中央汽船のようなオペレーターから支払われる用船料を返済原資として比較的長期の返済期間が設定される。このため、用船料の減額などによりシップファイナンスを受けている船主の資金繰りが厳しくなると返済が滞り、ファイナンスを実行している金融機関の回収状況が悪化する構図となる。暫定リスケなどの政策により倒産件数が抑制され、国内金融機関は与信費用が低減し利益水準が好転している。しかし、融資先の業種に偏りのある金融機関は、今後与信費用が他の金融機関よりも引当金増額の割合が高くなる可能性がある。
 企業のグローバル展開に伴い与信管理は複雑さを増している。今回の第一中央汽船のように海外関連法人も同時に法的手続き入りした場合には、債権者が海外法人となるケースが多く国内法人の実際の焦付状況が見えにくい。全ての債権状況を把握することは困難であるが、既存の枠組みを最大限活用すれば、ある程度の範囲で可視化することは可能である。第一中央汽船グループの倒産は、与信管理の仕組みの再考を促す事例になったと言えよう。

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