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「2014年度 空港ターミナルビル経営動向」調査

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公開日付:2015.12.04

 全国の主な空港ターミナルビル経営会社(以下、空港ビル会社)58社の2014年度決算(2014年4月-2015年3月期)の売上高は2,901億円で前年度より12.3%増加した。売上高トップはインバウンド(訪日外国人旅客)の大幅増が寄与した日本空港ビルデング(羽田)で、2位以下を大きく引き離した。増収の空港ビルが全体の約7割(40社、構成比68.9%)を占め、国内外の旅客数増を背景にして好決算が相次ぎ、経常赤字は福島空港ビル1社のみだった。また、自己資本比率50%超の空港ビル会社は58社中、47社と8割超を占め、空港ビルの高収益体質を裏付けた。


  • 本調査は2008年度より5回目。
  • TSRデータベース(294万400社)から、主な空港ターミナルビル運営会社58社の2014年度の決算内容を分析した。

旅客数増加で空港ビル会社の約7割が増収

 58社の2014年度の売上高合計は2,901億3,233万円で、前年度より12.3%(318億925万円)増加した。このうち増収は40社、減収は18社だった。LCCの就航や円安を背景に訪日外国人が増加し、2014年度の航空旅客数は国内線2.9%増、国際線9.1%増(対前年度比、国土交通省調べ)の伸びを示し、各空港ビル会社もこの恩恵を受けて売上が伸長した。

売上高 前年度比約2割増の羽田空港が断トツ

 売上高トップは日本空港ビルデング(羽田)の1,410億2,400万円だった。訪日外国人の増加で羽田空港は国際線旅客数が前年度比40%と爆発的な利用増を記録。これを追い風に売上高は前年度比19.2%増加した。2位の北海道空港(新千歳)の2.8倍で、国内空港ビル会社58社の売上高の半分を同社が占めた。
 売上高ランキング上位10社の顔ぶれは前年度と同一だった。大都市圏のほか、東京へのアクセス手段として航空機の利用が一般的な九州の空港ビルが上位を占めた。また、函館空港ビルデングは中国をはじめ国際線チャーター便の就航が売上高増に繋がり、前年度比8.7%増で前年度10位から8位にランクアップした。

空港ターミナルビル 2014年度売上高ランキング

売上高増加率は但馬空港ターミナルがトップ

 売上高増加率トップは但馬空港ターミナル(前年度比55.0%増)。同空港は民活空港運営法に基づき2015年1月から全国で初めて空港運営が県から空港ビル会社に移管した。燃料販売やテナント収入は前年並みだったが、事業移管に伴う補助金収入により前年度比6,187万円増の大幅増となった。2位の富士山静岡空港(同37.9%増)は、リーマン・ショック直後の2009年に開港した。当初は就航路線の確保に苦慮したが、人気の訪日観光ルート(東京、富士山、京都、大阪)を結ぶ拠点として中国路線やチャーター便の増加で利用客が大幅に伸びた事が寄与した。

経常利益 日本空港ビルデング(羽田)がトップ、赤字は福島空港ビルの1社

 経常損益が判明した56社中、黒字は55社で、赤字は福島空港ビルの1社のみだった。経常利益額トップは日本空港ビルデングで76億9,100万円(前年度比81.9%増)と、2位以下を大きく引き離した。以下、福岡空港ビルディング、那覇空港ビルディング、大阪国際空港ターミナル、北海道空港と大規模空港ビル会社が上位を占めた。
 経常利益ワーストの福島空港ビルは、原発事故以来の国際定期便の縮小で3期連続の経常赤字を計上した。ただ、東京電力の損害賠償金(6,800万円)が特別利益に計上され、最終利益は5,700万円の黒字を確保した。

空港ターミナルビル 2014年度経常利益ランキング

経常利益率 10%以上が約7割

 経常利益率ランキングでは壱岐空港ターミナルビルが57.6%とトップ。次いで、仙台空港ビルが33.6%だった。仙台空港は今年9月、コンセッション(運営権)方式による民間委託の運営権者として東京急行電鉄、前田建設工業、豊田通商などの企業連合と基本協定を結び、2016年6月をめどに完全民営化の予定になっている。民営化後に仙台空港ビルの高い収益性をどう活用していくか注目が集まる。
 経常利益率20%以上は12社(構成比21.4%)、10%台が26社(同46.4%)で、10%以上が約7割に達し、空港ビルは収益力の高さが特徴になっている。

自己資本比率 50%以上が8割、平均は69.9%

 58社の自己資本比率をみると80%台が20社で最も多く、次いで90%台と60%台が9社と続き、自己資本比率50%以上が47社(構成比81.0%)と8割以上を占めた。全体の自己資本比率の平均は69.9%。最高は壱岐空港ターミナルビルの97.2%で、債務超過は新潟空港ビルディングの1社のみだった。安定した利益構造を背景に、多くの空港ビルは高い自己資本比率を堅持している。

空港ターミナルビル 2014年度自己資本比率

国管理空港 2013年度の一体経営試算では6割が経常赤字

 国土交通省は今年7月、国が管理する27空港について、国管理の滑走路など(航空系事業)と、空港ビル会社が運営する旅客ターミナルなど(非航空系事業)の2013年度の収支状況を試算した。
 一般会計財源非配分型(一般会計受入を各空港の歳入に含めず、空港整備事業費などを歳出計上)に基づく試算では、航空系事業と非航空系事業を単純合算すると、経常黒字は新千歳、福岡、広島、松山、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、小松の10空港(構成比37.0%)に過ぎず、17空港(同63.0%)は経常赤字に転落することがわかった。
 経常赤字額が多額の羽田は、設備投資に伴う減価償却費(393億4,200万円)の負担や支払利息(107億9,100万円)の営業外費用が重荷になる。例年、地権者へ支払う土地建物借料が負担となっている福岡は、2013年度は賃借料80億9,400万円を計上したが、就航便の増加で着陸料収入が増加し、航空系事業の赤字幅が減少したことで合算収支は黒字化を達成した。
 27空港の収支合計は営業収益3,886億2,600万円(前年度比4.9%増)に対し、営業赤字46億7,300万円(前年度142億3,200万円)、経常赤字168億4,700万円(同291億9,600万円)で、赤字幅は改善したものの、合計収支はマイナスが続く。空港ビル経営をはじめとした非航空系事業が堅調な業績推移をたどる一方、航空系事業の赤字体質は続いており、就航便数増加による着陸料収入のアップ(=空港の本業面)をいかに達成するかが鍵となっている。

まとめ

 2014年度の航空旅客数は訪日観光客、LCC路線の増加など好条件を背景に、引き続き増加推移をたどっている。これに支えられ全国の空港ビル会社の業績は順調に推移した。
 空港ビル会社はこれまで第3セクター方式で運営され、航空会社からの安定的なテナント収入などにより、高い利益水準と良好な財務内容を維持してきた。だが、空港本体の事業は赤字経営が続き、国や自治体からの補助金がなければ維持できない歪(いびつ)な構造となっている。この打開策として注目されるのが航空部門と非航空部門の一体経営と、空港の民営化だ。
 空港民営化は「地方創生」を掲げる安倍政権の成長戦略の一つで、2013年7月「民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律」(民活空港運営法)が施行された。国管理空港として民営化第1号案件の仙台空港は運営権者が決定し、2016年6月の完全民営化を見込む。関西国際空港(関空)と大阪国際空港(伊丹)を運営する新関西国際空港(株)は11月20日、両空港の運営権売却に関し、オリックスと仏空港運営の大手バンシ・エアポートなどの企業連合との間で基本協定を締結した。落札価格は年間約490億円、運営期間44年で合計は約2.2兆円と巨額に及ぶ。このほか、高松、新千歳、福岡、富士山静岡、広島なども民営空港を目指しており、全国的な拡がりをみせている。ただ、民間の競争原理が導入されると格差が鮮明になることも必至だ。特色を打ち出せない地方空港は就航便数の縮小や廃港の選択肢さえ浮上してくる可能性もある。

 空港経営の赤字脱却が急務となる一方、「地方創生」の起爆剤として空港民営化の持つ意味は大きい。民営化の進展でこれまで高い利益水準のもとで安定経営を謳歌してきた空港ビル会社は今後、大きな方向転換を迫られる可能性もある。ただ、空港経営の根本的見直しは地域の自治体や企業、住民と一体となった「地方の魅力探し」とも合致する。それだけに空港ビル会社の改革は、地方活性化への大きな一歩としての可能性を秘めている。

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