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第5回 地ビールメーカー動向調査

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公開日付:2014.10.27

 再燃した「地ビール」ブームは続いている。2014年1-8月の全国主要地ビールメーカーの累計出荷量は前年同期比7.0%増となった。この4年間の同期の累計出荷量は毎年前年を上回り続けている。2014年同期の増加率は、前年同期の伸び率(同14.6%増)こそ下回ったが、生産設備の増強やイベントへの出店、さらに小売店の拡販に取り組むなど製販両面での攻勢を推し進め、着実に出荷量を伸ばした。
 国内ビール大手5社の2014年1-9月累計のビール系飲料(ビール・発泡酒・新ジャンル)の出荷量は前年同期比1.6%減と、2005年以来、10年連続で過去最低を更新した。苦戦するビール大手5社を尻目に、生産能力を超えた受注が舞い込んでいる地ビールメーカーもあり、地ビールメーカーの8割以上がブームを実感している。
 地ビールメーカーは、飲食店・小売店の開拓やビアフェス等のイベント出店で商品知名度を高め、輸出やネット通販にも取り組んでいる。ただ、円安で原材料価格の高騰や慢性的な人手不足から生産性の向上に課題を抱えているメーカーも多い。なお、「消費税率8%」の影響は、約5割のメーカーが「特にない」と回答している。


  • 本調査は東京商工リサーチが2014年9-10月、全国の主な地ビールメーカー178社を対象にアンケート調査を実施、分析した。有効回答は77社(有効回答率43.2%)。調査は2010年から5回目。

出荷量 約7割のメーカーで増加

 有効回答75社(出荷量は非公開で増減のみ回答を含む)の2014年1-8月の出荷量を前年同期と比較すると、出荷量が「増加」は50社(構成比66.7%)、「減少」は25社(同33.3%)だった。
 「増加」した50社の増加理由は、「飲食店、小売業者等の地ビール扱い店増加」が26社(構成比52.0%)で最多で、前年(同41.3%)に続きトップだった。次いで、「ビアフェス等イベント売上の増加」が8社(同16.0%)、新商品の発売や固定客が増加したなどの「その他」が7社(同14.0%)と続く。スーパーなど専門店以外への販路拡大に加え、イベント出店などで出荷増を後押ししたようだ。
 出荷量が「減少」した25社の理由は、「小売店等販売先の減少」が11社(同44.0%)で最多。次いで、「観光客の減少」が8社(同32.0%)、通販ギフトや宴会の減少などの「その他」が4社(同16.0%)だった。小売店の廃業や倒産などによる販売先の減少に加え、天候不順や消費税率アップなどでレジャーを手控えた「観光客の減少」も2社あった。

地ビールメーカー出荷量増減と増加要因

2014年1-8月の出荷量 前年同期より7.0%増

 出荷量が前年と比較できる71社の2014年1-8月の出荷量累計は7,179.9klで、2013年同期(6,709.4kl)から7.0%増加した。月別で増加率が最も高かったのは1月(前年同月比14.7%増)で、次いで7月(同12.5%増)、8月(同7.9%増)の順。ビアフェスなどイベント開催が夏冬通じて行われるケースが増加しているほか、スーパーなど小売店への販路開拓に取り組み、消費者が触れる機会を増やして季節を問わず毎月の出荷量を伸ばした。
 2014年1-8月の出荷量累計が100klを超えたのは前年の8社から13社に5社増加した。この13社のうち、11社が前年の出荷量を上回った。増加した11社の出荷量合計は4363.7klで、前年同期(3360.6kl)から29.8%増加し、71社平均増加率の7.0%を大幅に上回り、大手メーカーの寡占度が高まっているようだ。出荷量が多い地ビールメーカーは、「継続的に生産設備の増強を実施した」、「飲食店・小売業者への販路拡大」など地道な生産体制の強化で出荷量を増やしている。

地ビールメーカー出荷量月次推移

地区別 北海道が大幅増、九州が減少

 出荷量が前年と比較できる71社の2014年1-8月の地区別出荷量の増加率は、北海道が前年同期比20.2%(71.7kl増)で最高。次いで、中国が同12.6%(33.2kl増)、関東が同10.6%(318.0kl増)と続く。全体では、九州を除く8地区で前年同期の出荷量を上回った。
 増加率トップの北海道は、増加した主な理由を「ビアフェス等イベント売上の増加」(7社中3社)、「飲食店、小売業者等の地ビールの扱い店の増加」(同2社)と回答。一方、前年(6.1%増)に出荷量を伸ばした東北は、天候不順による観光客の減少が影響し増加率は0.1%にとどまった。唯一、出荷量が減少した九州は、「小売店等販売先の減少」(5社中3社)、「宴会の減少」、「観光客の減少」(同各1社)を主な理由としている。

地ビールメーカー地区別出荷量

販売方法 飲食店への卸売を軸にネット通販にも期待

 地ビールメーカーの販売方法では、「自社販売(イベント販売含む)」が76社中42社(構成比55.2%)でトップだった。次いで、「酒販店等小売店への卸売」20社(同26.3%)と続く。大半の地ビールメーカーが、地元の直営レストランや売店での小売やイベント販売に重点を置く一方、販路拡大に向け道の駅や地元酒販店およびコンビニへの卸売にも力を注いでいることがわかった。
 伸びている、あるいは今後伸びが見込まれる販売方法についても「自社販売(イベント販売含む)」が24社(構成比31.5%)と最も多く、次いで「飲食店への卸売」23社(同30.2%)、「酒販店等小売店への卸売」14社(同18.4%)と続く。直営の飲食店・売店等での直販をベースに、飲食店・酒販店・コンビニ向け卸売で成長を見込んでいる。また、現在の販売方法で「ネット通販」を回答したメーカーは1社(同1.3%)にとどまったが、伸びている、あるいは今後伸びが見込まれる販売方法では11社(同14.5%)が回答しており、地ビールメーカーが販売方法として「ネット通販」に期待していることもわかった。

地ビールメーカー販売方法

海外販売は2割にとどまる

 有効回答を得た76社の地ビールメーカーで、「輸出を行っている」のは17社(構成比22.4%)で、約2割にとどまった。「現在していないが今後行う計画がある」が7社(同9.2%)、「しておらず計画もない」が52社(同68.4%)で、輸出を行っていないメーカーが約8割に達した。
 地ビールメーカーでは、国内にとどまらず海外の著名な品評会に積極的に出品し、「世界一」の表彰を受けたビールもある。また、世界基準の品質をクリアし「世界が認めるビール」として増産体制を整え、欧米や新興国に輸出を増やすメーカーもある。
 今後、輸出の増加・強化を検討する地ビールメーカーはあるが、輸出割合がまだ低調にとどまっている。ビール本場のドイツやアメリカなど海外の地ビール市場は、歴史も古く地ビールがすでに認知され、日本を超える市場を形成している。国内の地ビールメーカーは資本力に乏しく、新規参入が難しい市場という事情もある。それだけに小規模の生産設備で国内需要を賄うのが精一杯で、生産能力的に輸出に踏み切れないことも背景にあるようだ。

地ビールメーカー輸出しているか?

今後の懸念 「原材料の高騰」が2年連続トップ

 今後、考えられる課題や懸念としては、回答のあった77社のうち、「原材料の高騰」をあげたメーカーが24社(構成比31.2%)と最も多かった。次いで、「需要増に伴う生産能力の限界」20社(同26.0%)、「人材の育成・確保」18社(同23.4%)で、上位3位までは前年順位と同じだった。
 麦芽やホップなど、原材料の大半が海外からの輸入品で、急激な円安による原材料価格の高騰に加え、電気料金の値上げなどのコストアップ要因が加わり、体力の乏しい中小・零細規模の地ビールメーカーの経営環境は厳しさを増している。
 需要増に伴う生産能力の限界を感じているメーカーも少なくないが、製品の安定供給や県外への販売強化の取り組みとして瓶ビールや樽マーケット市場の拡大に向けた設備増強を計画しているメーカーもある。「人材の育成・確保」を回答したメーカーでは、生産設備の増強、生産体制の効率化に加え、自社で賄いきれない分を他社からのOEM(製造委託)で補うメーカーもある。
 「その他」の主要な課題や懸念としては、「大手ビールメーカーの市場参入」、「街の活性化」、「製造・貯蔵設備の経年劣化」など、大手ビールメーカーとの競合や、地域が抱える問題、さらに資金的問題など、自社で解決できない課題を抱えている実態も明らかになった。

消費税増税 「特に影響はない」が5割

 2014年4月から消費税率が8%へ引き上げられた。駆け込み受注の反動減で、4月以降、百貨店や自動車メーカーの売上が落ち込み、地ビールでも消費税増税の影響が心配された。
 しかし、消費税増税による地ビールメーカーへの影響は、「特に影響はない」が42社(構成比54.5%)で最多、次いで「値上げを行った」24社(同31.2%)、「購入者が減少した」8社(同10.4が%)の順だった。
 増税前の前年調査では、消費税増税による「影響がある」と回答した地ビールメーカーは約7割を占めた。今回行った増税後の調査では、実際に影響があったと回答したメーカーは5割弱にとどまった。これは消費税率の引き上げの影響を、地ビールブームが上回った結果とみられる。また、値上げが相次ぐ中、「値下げで対応した」メーカーもあった。

地ビールメーカー消費税増税の影響

地ビールメーカー 8割超が「ブームを感じる」

 「地ビールブームを感じるか」の質問では、回答のあった77社では「やや感じる」が48社(構成比62.3%)で最多だった。次いで、「大いに感じる」が17社(同22.1%)だった。「やや感じる」と「大いに感じる」を合わせた8割超(構成比84.4%)の地ビールメーカーがブームを実感していることがわかった。これは前年(同84.0%)を0.4ポイント上回り、地ビール業界全体にブームが再燃しているようだ。
 一方、「感じない」は12社(同15.6%)で前年(同16.0%)から微減にとどまった。「感じない」とした12社の2014年1-8出荷量合計(452.06k)は、前年同期(451.26kl)比0.1%増にとどまり、全体平均の同7.0%増を大きく下回った。出荷量が大幅に増加したメーカーと、小幅増加にとどまったメーカーでは、ブームの感じ取り方に差があるようだ。

地ビールブーム

地ビールメーカーの展望

 1994年4月、酒税法改正で全国各地に飲食店や酒造会社を中心に地ビールメーカーが次々に誕生した。目新しさや、地域の活性化に向けたイベントの目玉企画として地ビール出店がもてはやされ、地ビールブームに火が付いた。だが、流通がごく一部の市場に限られ、高価格もネックになり第1次地ビールブームは終焉。地ビール生産から撤退するメーカーが続出した。
 その後、生き残った地ビールメーカーはビアフェスなどのイベント販売による自社商品の宣伝に加え、小売店や酒販店などの外販や輸出拡大に取り組んだ。地道な営業活動で地ビールの認知度を高め、地ビール出荷量は4年連続で前年を上回り“地ビールブーム”は持続している。
 9月24日、国内大手ビール5社の一角、キリンビールが長野県の地ビールメーカー「ヤッホーブルーイング」と資本・業務提携を発表した。今後、地ビール市場の足場固めを急ぐ意向だ。キリンビールの地ビール市場への参入を“地ビール”が広く認知される「追い風」と捉える地ビールメーカーもある一方、競争を警戒するメーカーもある。
 中小・零細業者が多い地ビールメーカーは、ギリギリの生産体制で、慢性的な人手不足の課題を抱えている。円安を背景とした原材料価格の高騰も収益圧迫要因として浮上している。こうした潜在化するリスク要因を克服し、これからも地ビールブームを持続させるためには、早い時期の次の戦略が求められる。

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