• TSRデータインサイト

2025年4月「物価高」倒産 56件で高止まり 飲食店、食料品、農業など、“食”業界で増加

2025年4月の 「物価高」倒産


 2025年4月の原材料高騰などに伴う「物価高」倒産は56件(前年同月比6.6%減)で、2024年11月から6カ月連続で50件以上で推移している。
 負債総額は118億300万円(同20.1%減)と、2カ月連続で前年同月を下回った。
 物価高は、競争力が弱く、価格転嫁が難しい小・零細企業の資金繰りを直撃している。物価高だけでなく、人件費上昇、金利引き上げなどが追い打ちをかけ、小・零細企業は厳しい状況に置かれている。

 「物価高」倒産は、飲食店と食料品製造業が各6件、飲食料品小売業5件、飲食料品卸売業と持ち帰り・配達飲食サービス業が各4件と、商品関連の業種が上位に並ぶ。また、農業も3件発生し、食関連への影響が広がっている。こうした業種は、消費者向けの値上げは需要減、客数の減少に直結しかねず価格転嫁の難しさを示している。
 形態別では、破産が52件(前年同月比1.8%減、構成比92.8%)。資本金別では、1千万円未満が33件(同3.1%増、同58.9%)で、5千万円以上はなかった。
 2025年4月、トランプ米大統領が相互関税を打ち出し、円高推移をたどるが、コロナ禍前の水準には及ばない。さらに、人件費や金利引き上げも収益を圧迫し、物価安定の好転材料が乏しいなか、価格転嫁が難しい小・零細企業を中心にした「物価高」倒産は高止まりが続くとみられる。

※本調査は、2025年4月の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析した。

「物価高」倒産月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

破産の聘珍樓に予約 約1,000組、前払い客も ~ 横浜中華街の御三家の一角、破産の影響広がる ~

横浜中華街の御三家として知られる老舗の中華料理店である(株)聘珍樓(TSRコード: 017658390、横浜市)と関連2社が5月21日、破産開始決定を受けた。

2

  • TSRデータインサイト

警備業界は大手2社の寡占化が進む 人手不足で倒産・休廃業が過去最多

全国の主な警備会社828社の2024年の業績は、売上高が1兆9,180億円(前年比2.6%増)、最終利益は1,604億円(同15.6%増)と、堅調に推移している。 業界市場は拡大しているが、大手の寡占化が進み、中小・零細事業者は人手不足でコストが上昇し、経営環境は厳しさを増している。

3

  • TSRデータインサイト

ミュゼプラチナム、第三者破産に「積極的な対抗せず」 ~ 運営会社MPH・高橋英樹社長 単独インタビュー ~

大手脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を運営するMPH(株)の動向が注目されている。MPHのほか2社でフランチャイズ展開を進めているが、今回の第三者破産を当事者はどう受け止めているのか。 東京商工リサーチは、MPHの高橋英樹社長と関係者に単独取材した(取材日は5月21日)。

4

  • TSRデータインサイト

2025年1-5月の「早期・希望退職」募集人数は8,711人で前年2倍に急増、相次ぐ大型募集

 2025年1月-5月15日までに「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は19社(前年同期27社)で、前年同期より約3割(29.6%減)減少した。しかし、大手メーカーの大型募集が相次ぎ、対象人員は、8,711人(前年同期4,654人)と前年同期の約2倍(87.1%増)に急増した。

5

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

TOPへ