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忘・新年会「実施」は59.6%、コロナ禍後の最高 宴会は「労働時間ではない」90.2%、認識にギャップ

2024年12月「忘・新年会に関するアンケート」調査


 今年も忘年会のシーズンを迎えたが、実施率はまだコロナ禍前の水準には届いていないことがわかった。忘年会は1年間の疲労を癒し、次の年に気持ちを切り替えるとの建前で、昭和から平成初期には会社の恒例行事だった。
 ところが、コロナ禍で事態が一変。2020年の開催率は5.6%まで下がり、宴会離れが加速した。その後、新型コロナが5類移行した2023年は55.9%まで回復したが、2024年は59.6%と約6割にとどまり、コロナ禍前の水準まで戻っていない。年末を迎え、街には活気が戻ってきたが、コミュニケーションのあり方はコロナ禍を契機に大きく変わり、親睦や一体感を宴会に求める時代は変化を迎えたのかもしれない。

 東京商工リサーチ(TSR)は12月上旬、企業向けアンケート調査を実施した。今シーズン忘・新年会を実施する企業は59.6%(3,891社)で、前年(55.9%)を3.7ポイント上回った。忘・新年会をコロナ禍前も今回も開催する理由(複数回答)は、「従業員の親睦を図るため」が87.1%(2,719社中、2,369社)で最多、「従業員の士気向上のため」が51.1%(1,391社)の順。 
 一方、コロナ禍前は実施していたが、今回は実施しない理由は、「開催ニーズが高くない」が65.1%(1,149社中、749社)で最多。飲み会まで仕事の上下関係を引きずりたくない人も増えている。だが、忘・新年会は「労働時間か」という問いに、90.2%の企業が「労働時間でない」と回答している。この認識の差が、コロナ禍で変わったお金と時間の使い方、そして若者とのギャップの根源かもしれない。

※ 本調査は、2024年12月1日~9日、企業を対象にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答6,529社を集計、分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。

忘・新年会実施率推移

Q1.貴社は、2024年末の「忘年会」、または2025年初の「新年会」を開催しますか?コロナ禍前(2019年末の「忘年会」、または2020年初の「新年会」)との比較で回答ください(択一回答)

◇今シーズンの忘・新年会「実施」は59.6%
 最多は、「コロナ禍前も実施しており、今回も実施する」の41.8%(6,529社中2,731社)だった。「コロナ禍前は実施せず、今回は実施する」は17.7%(1,160社)で、忘・新年会を「実施する」は合計59.6%(3,891社)と約6割に達した。
 一方、「コロナ禍前は実施せず、今回も実施しない」は22.1%(1,448社)、「コロナ禍前は実施していたが、今回は実施しない」が18.2%(1,190社)で、合計40.4%(2,638社)が実施しない。
 前年に比べ、それぞれ約4ポイントの増減幅で、コロナ禍の宴会控えが定着した格好となった。

◇今シーズンの忘・新年会「実施」は59.6%

Q2.Q1で「コロナ禍前も今回も実施する」と回答された方に伺います。実施する理由は次のどれですか?(複数回答)

◇「従業員の親睦」が約9割
 コロナ禍前から変わらず実施する理由を聞いた。
 最多は「従業員の親睦を図るため」の87.1%(2,719社中、2,369社)。次いで「従業員の士気向上のため」の51.1%(1,391社)だった。「会社の定番行事のため」は38.1%(1,037社)にとどまった。
 規模別では、「会社の定番行事のため」との回答は、大企業31.8%、中小企業38.8%で、中小企業が7.0ポイント高かった。
 「その他」は、「取引業者への謝意」(不動産業、資本金1億円未満)、「従業員からの要望」(建設業、資本金1億円未満)など。

Q3.Q1で「コロナ禍前は実施、今回は実施しない」と回答された方に伺います。実施しない理由は次のどれですか?(複数回答)

◇「開催ニーズが高くない」6割超
 コロナ禍前の実施から一転し、今回は実施しない理由を聞いた。
 最多は「開催ニーズが高くないため」が65.1%(1,149社中、749社)。次いで、「参加に抵抗感を示す従業員が増えたため」の36.6%(421社)だった。
 規模別では、低い開催ニーズや従業員の抵抗感は、中小企業より大企業が高かった。
 一方、「忘・新年会に関わる費用を削減」を理由に挙げたのは中小企業が18.4%と高かった。
 産業別で、「開催ニーズが高くない」との回答が最も多かったのは、農・林・漁・鉱業の70.0%(10社中、7社)。次いで、小売業の69.1%(68社中、47社)と続く。

Q4.Q1で「今回実施する」と回答された方に伺います。忘・新年会は労働時間になりますか?(択一回答)

◇「労働時間にならない」9割超
 忘・新年会を実施する企業に労働時間になるかを尋ねると、「労働時間にならない」が90.2%(3,743社中、3,377社)だった。「労働時間になる」と回答した企業は9.7%(366社)で1割に届かなかった。
 産業別では、 「労働時間になる」は、不動産業14.7%(115社中、17社)、情報通信業の14.6%(219社中、32社)、小売業の14.4%(138社中、20社)で高かった。
 一方、「労働時間にならない」は、最高が運輸業の96.9%(130社中、126社)。次いで、卸売業の92.1%(741社中、683社)、製造業の91.7%(945社中、867社)の順だった。

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