• TSRデータインサイト

船井電機、登記変更と即時抗告と民事再生

 10月24日に東京地裁へ準自己破産を申請し同日、破産開始決定を受けた船井電機(株)(TSR企業コード:697425274)を巡って、大きな動きが続いている。
 破産を巡っては、歴代の経営陣の間で意見の隔たりが埋まっていない。また、関連会社の経営陣にも変更が生じている。さらに、12月2日には、東京地裁に船井電機の民事再生法の適用を申請する書類が提出された。
 破産開始後の動きをまとめた。

関連会社の代表変更と本社移転

 船井電機の破産申立書によると、国内に関連会社は18社ある。このうち、美容・健康関連事業を手がける(株)エピソワ(TSR企業コード:696325098)の代表取締役がA氏に変更された。登記日は11月11日だが、就任日は10月24日となっている。また、11月21日を登記日、移転日を10月24日として、登記上本社を港区台場2-3-5から大田区蒲田5-28-4へ移転している。A氏は、電子決済サービス「Cポン」などを扱うKOC・JAPAN(株)(TSR企業コード:134509072)の代表取締役だ。また、エピソワの前住所は、脱毛サロン「ミュゼプラチナム」運営のMPH(株)(TSR企業コード:036547190)と同所だ。
 代表変更も移転の登記日付はともに、船井電機の破産開始決定日(準自己破産申請日)と同一だ。

破産への対抗

 船井電機の破産開始決定を巡っては、10月29日に決定取り消しを求めて東京高裁に即時抗告が申し立てられている。この度、この内容が判明した。
 即時抗告申立書の申立人欄は、「船井電機株式会社・代表取締役原田義昭」となっている。
 このなかで、抗告人(原田氏)は、船井電機は支払い不能でも債務超過でもないため、破産開始の要件を満たしていないと主張している。
 これに対し、船井電機の破産管財人は11月6日、東京高裁への意見書を提出し、「(即時抗告は)なんら根拠もなく、破産者について破産原因を欠く旨を主張するものであり、直ちに棄却されるもの」と指摘している。破産管財人は、準自己破産申請日の現預金は約5億4,000万円に対し、公租公課や給料など44億1,838万円の債務を抱え、支払不能が認められると意見している。また、簿外債務を含め61億9,453万円の債務超過で、さらに債務超過の金額は増加することが見込まれるとし、即時抗告の棄却を求めている。
 抗告人は11月7日、即時抗告の追加資料として「民事再生申請書(案)」などを提出した。従来の見解をベースに、「破産ではなく、民事再生が妥当である」と主張している。具体的な支援先として、国内外3グループを挙げている。東京商工リサーチ(TSR)の調査では、中国のモーターメーカー製造会社や都内ソフトウェア企業などを念頭に置いているとみられる。
 さらに抗告人は11月22日、準自己破産は申立人の要件を満たしていないとの追加資料を東京高裁に提出している。
 10月24日に東京地裁に提出された破産申立書の申立人欄は「債務者・船井電機、債務者取締役・船井秀彦」と記載されている。
 しかし、12月2日午前10時時点で閲覧できる船井電機の商業登記によると、船井秀彦氏は10月15日付での解任が11月14日に登記されている。なお、原田義昭氏は10月27日付での代表取締役への就任が11月14日に登記されている。
 こうしたなか、原田義昭氏は12月2日、東京地裁に船井電機の民事再生法の適用を申請する書類を提出した。

船井電機の本社

船井電機の本社

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

M&A総研の関わりに注目集まる資金流出トラブル ~ アドバイザリー契約と直前の解約 ~

東京商工リサーチは、M&Aトラブルの当事者であるトミス建設、マイスHD、両者の株式譲渡契約前にアドバイザリー契約を解約したM&A総合研究所(TSRコード: 697709230、千代田区)を取材した。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業、中高年の活用に活路 「早期・希望退職」は大企業の2.8%が実施

 「早期希望・退職」をこの3年間実施せず、この先1年以内の実施も検討していない企業は98.5%だった。人手不足が深刻化するなか、上場企業の「早期・希望退職」募集が増えているが、中小企業では社員活用の方法を探っているようだ。

3

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

4

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

5

  • TSRデータインサイト

2023年度「赤字法人率」 過去最小の64.7% 最小は佐賀県が60.9%、四国はワースト5位に3県入る

国税庁が4月に公表した「国税庁統計法人税表」によると、2023年度の赤字法人(欠損法人)は193万650社だった。普通法人(298万2,191社)の赤字法人率は64.73%で、年度集計に変更された2007年度以降では、2022年度の64.84%を下回り、最小を更新した。

TOPへ