ひと足早く始まった低金利の終焉、金利上昇が加速へ
2024年3月、日本銀行は2016年2月に始まったマイナス金利政策の解除を決定した。市場への積極的な資金供給が目的だったが、金融機関は低金利で貸出シェア拡大に舵を切った。コロナ禍も利下げは止まらず、ピークの2023年3月末は、金利0.5%未満が貸出金全体の37.0%を占めた。金融機関は10年余りの間、本業での収益悪化が続いたが、コロナ禍を経て状況が一変した。
日本銀行の「利率別貸出金」によると、2015年3月末は貸出金利1.00%未満が貸出金残高の49.0%と、ほぼ半分を占めていた。ところが、マイナス金利導入直後の2016年3月末は、同1.00%未満が54.0%に伸び、その後も低金利での貸出競争が激化した。
多くの金融機関は「貸出金5,000万円まで、無担保・無保証」などの条件を提示し、貸出拡大に動いた。コロナ禍から経済活動が平時に戻った2023年3月末は、同0.50%未満が37.0%、0.50%以上1.00%未満が34.5%で、1.00%未満が71.6%と全体の7割を超えた。
ところが、この頃から企業の経営者の間で金利引き上げの声が聞こえ始めた。それを裏付けるように、2024年3月末は同1.00%未満が16年ぶりに前年同月の比率を下回った。
金融機関はコロナ禍以降の政策転換、そしてマイナス金利解除を見越し、ひと足早く金利を引き上げていたことを示している。2024年9月末の同1.00%未満は67.9%と、まだ7割近くを占めるが、同年3月に比べ同0.50%未満が8.3ポイント縮小。一方で、同0.50%以上1.00%未満が5.0ポイント、同1.00%以上1.50%未満は2.1ポイントそれぞれ拡大した。
金利が上昇に転じたことで金融機関は企業から選択され、企業は利上げに対抗できるだけの精緻な経営戦略が問われる時代に入ったといえる。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年11月29日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)