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2024年度上半期不動産売却の上場企業32社 取引の小口化で譲渡益は7割減も、27社が譲渡益

2024年度上半期「上場企業 不動産売却」調査


 東京証券取引所に株式上場する企業のうち、2024年度上半期(4-9月)に国内不動産の売却を開示したのは32社で、前年同期の36社から4社減少した。
 譲渡損益の総額は389億8,400万円で、前年同期(1,392億8,100万円)の3割弱(前年同期比72.0%減)と大幅に減少した。譲渡損益を開示した30社のうち、27社が譲渡益を計上した。

 国内不動産を売却した上場企業32社のうち、直近の本決算で最終赤字は9社(構成比28.1%)。業種別企業数は、年度上半期ベースでは小売業が3年連続で最多だった。
 多くの企業が、経営資源の効率的活用や財務体質の強化を理由に不動産売却を実施している。ただ、施設の老朽化による売却のほか、スキーリゾート運営会社がインバウンド需要などを見込んだリゾートホテルなどの誘致のため、開発事業者へ土地を売却し集客に繋ぐ動きもあった。
 主な売却事例では、中国電力(プライム)が、旧下関発電所用地32万6,000平方メートルを売却し、2024年3月期第1四半期に約70億円の譲渡損を計上した。また、キユーピー(プライム)は、経営資源の有効活用および財務体質の強化を図るため、9月に旧挙母工場跡地4万1,407平方メートルの売買契約を締結、2025年11月期第1四半期で譲渡益120億円を計上する予定と公表した。
 コロナ禍以降、手元キャッシュを厚くする動きや働き方改革に伴う業務スペースの見直しなどで増加していた不動産売却は現在、小康状態に入っている。ただ、遊休資産の整理が一巡したのか、不動産価格の高騰が影響しているのか、しばらくは動向を見極めることが必要だ。

※本調査は、東証プライム、スタンダード、グロース上場企業(不動産投資法人等を除く)を対象に、2024年度上半期(4-9月)に国内不動産(固定資産)の売却を開示した企業を集計、分析した(契約日基準、各譲渡価額・譲渡損益は見込み額を含む)。
※東証の上場企業に固定資産売却の適時開示が義務付けられているのは、原則として譲渡する固定資産の帳簿価額が純資産額の30%に相当する額以上、または譲渡による損益見込み額が経常利益、または当期純利益の30%に相当する額以上のいずれかに該当する場合とされている。
※東証の市場再編により集計基準を変更したため、2021年度以前(東証1部・2部企業を対象)のデータはすべて参考値。


譲渡損益を公表した企業の9割が譲渡益計上

 不動産の売却を公表した上場企業32社のうち、譲渡損益の公表は30社(前年同期34社)だった。このうち、譲渡益計上は27社(同29社)で、総額461億4,500万円(同1,395億1,900万円)と前年同期から大幅に減少した。譲渡益が100億円以上の計上は1社(同5社)。小口取引が増加し、1社あたりの平均譲渡益は17億900万円(同48億1,100万円)と前年同期の3分の1に減少した。
 譲渡益の最大はキユーピーで、旧挙母工場の跡地売却で約120億円を計上する予定となる。
 譲渡損の公表は3社(同4社)だった。中国電力が旧下関発電所の売却で70億円の譲渡損を計上したことで、譲渡損の総額は71億6,100万円(同2億3,800万円)と大幅に増加した。

年度別 上場企業 不動産売却企業数の推移

【公表売却土地総面積】公表25社の合計は59万2,748平方メートル

 2024年度上半期の売却面積の公表は25社で、総面積は59万2,748平方メートル(前年同期33社、31万1,925平方メートル)と前年同期の2倍近くに増加した。総面積のうち中国電力の32万6,000平方メートルがほぼ半分(54.9%)を占めた。売却した土地面積が、合計1万平方メートル超は10社(前年同期8社)に増加した。
 売却を公表した土地面積トップは、中国電力(プライム)の32万6,000平方メートル。老朽化で2024年1月に廃止した旧下関発電所を丸一鋼管(プライム)に譲渡した。
 2位はキユーピー(プライム)の4万1,407平方メートルで、老朽化で閉鎖した旧挙母工場跡地を売却した。3位はシー・ヴイ・エス・ベイエリア(スタンダード)の3万3,209平方メートル。

【譲渡価額総額】譲渡価額10億円以上は7社

 譲渡価額を公表したのは11社(前年同期6社)で、総額250億6,400万円(同12億7,900万円)。
 最高は、カラオケ・飲食店運営の第一興商(プライム)の85億円。東京都品川区のパーキング用地(1,732平方メートル)を売却した。2位は、機械メーカーの芝浦機械(プライム)の44億円で、いずれも売却の目的は経営資源の有効活用による資産の効率化を図るため。
 3位は、中国電力(プライム)の37億円で、資産の有効活用を目的としている。
 譲渡価額10億円以上は7社(前年同期ゼロ)だった。

【業種別】小売業が最多の5社

 業種別では、最多がシー・ヴイ・エス・ベイエリアなど小売業の5社。経営資源の有効活用や財務体質の強化のほか、当面の運転資金や借入金返済に充てる資金の調達、キャピタルゲインを含めた譲渡価額が将来キャッシュ・フローを上回ることなどを目的に不動産を売却した企業があった。5社のうち、最新期の最終利益が赤字の企業は3社だった。
 2位は、食料品の4社で、最新期の最終利益が赤字の企業は1社。多くが経営資源の有効活用や財務体質の強化を理由にあげている。


左:不動産売却企業 譲渡差益合計推移 右:業種別 売却社数・売却土地面積(社数降順)



 国土交通省による2024年の都道府県地価調査(全国平均)は、全用途平均と商業地ともに3年連続で上昇し、上昇幅も拡大した。地価の上昇基調は強まっており、譲渡損を計上した上場企業の構成比は10.0%と、前年同期(11.7%)から1.7ポイント低下した。
 地区別の譲渡物件は、東京都の7件を含む関東が19件で最も多く、不動産価格の高止まりが続く都市圏が中心だった。
 2024年度上半期の上場企業の不動産売却は32社(前年同期36社)に減少した。企業業績の回復で資産売却の動きが減ったほか、働き方の変化による業務スペースの見直しや事業拠点の統合による不動産売却も減少した。一方、円安や人手不足によるコスト増が収益を圧迫する企業は多い。手元資金や運転資金の確保を目的に、不動産売却に踏み切る上場企業は今後増える可能性がある。

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