• TSRデータインサイト

突然の事業停止 責任者不在の残務整理

 三連休前の11月1日。派遣スタッフへの給与未払い、事業停止の情報がもたらされた派遣会社に向かった。同社はSNSを活用した広告を展開し、事業が拡大していた会社だった。

 駅近くにある本社に着き、会社の入るフロアを見上げると明かりが灯っている。電話は不通だが、社内には誰かいるようだ。ビルの入口前で偶然、通りかかった従業員に話を聞くことができた。取材の意図を伝えるとミーティングルームに通され、話を聞くことができた。
    
 その従業員は、「事業停止は事実だ。我々、従業員は昨日と今日、会社から事業停止をいきなり告げられた。弁護士が入っているかはわからない」と淡々と話した。「いま、自分が会社とどのような雇用関係にあるのかわからないし、給与の未払いもある。

 従業員は残務処理にあたっているが、自分は担当しているスタッフへの状況説明や派遣先へスタッフの直接雇用への打診、他の派遣会社への転籍を促し、影響が少なくなるように対応している」と丁寧に説明した。

 続けて「社長は出勤していない。ということは逃げたということだろうか。いきなりこんなことになるとは思わなかった。事態が落ち着いたら自分も転職活動しないといけない」と苦しい胸中を語った。

 別の従業員はTSRの電話取材に、「いきなり会社から営業停止を告げれた。今日は自主的に出勤し、対応に追われている。給料は発生しないと思う。本社では会社が破産を申請したという話しもあり、社員間で情報が錯綜している」と困惑しながら取材に応じた。

 法的整理の情報もあるが、経営幹部と接触できず、詳細は不明だ。従業員や取引先が、困惑するなか、経営幹部は責任ある対応が求められている。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ