• TSRデータインサイト

日本企業の支持はハリス氏43%、トランプ氏15% 大統領選の注目点は「為替」から「地政学リスク」へ

2024年10月「アメリカ大統領選挙」に関するアンケート調査


 11月のアメリカ大統領選まで1カ月を切った。民主党のカマラ・ハリス候補と共和党のドナルド・トランプ候補が接戦を繰り広げているが、国内企業はハリス候補の支持が高いことがわかった。
 東京商工リサーチは10月1日~8日、アメリカ大統領選について企業向けアンケート調査を実施した。国内企業にアメリカ大統領選でどちらの候補の当選が経営にプラスか尋ねたところ、「カマラ・ハリス候補」が43.5%(5,185社中、2,257社)で、「ドナルド・トランプ候補」の15.0%(780社)を大きく上回った。
 なお、「どちらが当選しても影響はない」は41.4%(2,148社)だった。

 産業別では、10産業すべてでハリス候補がトランプ候補を上回った。なかでも、金融・保険業の50.0%をはじめ、卸売業49.5%、製造業48.5%とハリス候補の高い支持が目立った。 
 一方、トランプ候補の支持が最も高かった産業は、農・林・漁・鉱業の26.1%で唯一、2割を超えた。次いで、不動産業19.7%、運輸業18.3%で続く。

 次期アメリカ大統領の政策で注目する点は、最高が「台湾有事を含めた中国との関係性」で65.4%に達し、全10産業でトップだった。次いで、「ウクライナ情勢を含めたロシアとの関係性」が52.5%で続く。前回トップだった「通貨・為替政策の在り方」は49.2%で3位にとどまり、関心は通貨・為替から地政学リスクにシフトしているようだ。
 民主党と共和党の政策は、関税政策や環境・エネルギー政策、移民政策などでスタンスが大きく異なる。地政学リスクが高まるなか、サプライチェーン構築や再生エネルギー、脱炭素関連の投資、保護貿易など、日本企業も対応を迫られる事項が多いだけに選挙結果が注視される。

※ 本調査は、2024年10月1日~8日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,198社を集計・分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(資本金がない法人・個人企業を含む)を中小企業と定義した。


Q1.今年11月のアメリカ大統領選挙でどちらの候補が当選した方が貴社の経営にプラスに働くと思いますか?(単一回答)

◇「カマラ・ハリス候補」43.5%、「ドナルド・トランプ候補」15.0%
 アメリカ大統領選で、経営にプラスに働くと思う候補者を聞くと、「カマラ・ハリス候補」が43.5%(5,185社中、2,257社)に対し、「ドナルド・トランプ候補」は15.0%(780社)で、28.5ポイントの大差が開いた。
 一方、「どちらが当選しても影響はない」は41.4%(2,148社)だった。
 規模別では、ハリス候補が大企業47.5%(461社中、219社)、中小企業43.1%(4,724社中、2,038社)といずれも40%台に乗せた。大企業が中小企業を4.4ポイント上回った。
 トランプ候補は、大企業が9.9%(46社)と10%に届かず、中小企業が15.5%(734社)で、ハリス候補とは逆に中小企業が大企業を5.6ポイント上回った。

アメリカ大統領選挙でどちらの候補が当選した方が貴社の経営にプラスに働くと思いますか? ◇「カマラ・ハリス候補」43.5%、「ドナルド・トランプ候補」15.0%

【産業別】全産業で「カマラ・ハリス候補」が上回る

 産業別では、10産業すべてでハリス候補がトランプ候補を上回った。
 ハリス候補の構成比が最も高かった産業は、金融・保険業の50.0%(62社中、31社)で半数に達した。次いで、卸売業49.5%(1,089社中、540社)、製造業48.5%(1,373社中、666社)と続く。
 トランプ候補の構成比が最も高かった産業は、農・林・漁・鉱業が26.1%(42社中、11社)と唯一、2割を超えた。農業を営む企業で回答率が高かった。トランプ候補は、輸入品に一律10~20%の関税を課すことを掲げ、国内の産業から懸念を持たれている。ただ、日本は食料品の輸入依存度が高く、日本の農業は各国間の貿易を抑制する政策がデメリットになりにくいため、他産業と比べて構成比が高まった可能性がある。
 次いで、不動産業が19.7%(172社中、34社)、運輸業が18.3%(202社中、37社)で続く。

産業別 回答状況

【業種別】ハリス候補は製造業、トランプ候補は農業の構成比が高い

 産業を細分化した業種別(回答母数10以上)では、ハリス候補の構成比の最高が、ゴム製品製造業の63.1%(19社中、12社)だった。
 次いで、「金融商品取引業,商品先物取引業」62.5%(16社中、10社)、「パルプ・紙・紙加工品製造業」62.2%(45社中、28社)が続く。
 上位10業種のうち、製造業が7業種を占めた。
 一方、トランプ候補の構成比が最も高かったのは、農業で36.0%(25社中、9社)だった。次いで、「各種商品卸売業」27.5%(29社中、8社)、「繊維・衣服等卸売業」26.1%(42社中、11社)が続く。
 母数10以上の業種のうち、ハリス候補の構成比が5割を超えた業種は19業種だった。トランプ候補がハリス候補の構成比を上回ったのは「農業」のみだった。


業種別(上位) 左:カマラ・ハリス候補 右:ドナルド・トランプ候補

Q2.次期アメリカ大統領の政策で注目することは何ですか?自社の業績への影響の観点で回答下さい。(複数回答)

◇政策の注目点は「台湾有事を含めた中国との関係性」が65.4%でトップ
 次期アメリカ大統領の政策で注目することを聞いた。5,198社から回答を得た。
 構成比の最高は、「台湾有事を含めた中国との関係性」の65.4%(3,403社)だった。10産業すべてで構成比が最高となり、中国との関係に関心が高いことがわかった。
 同様の質問をした2024年8月上旬のアンケート調査での構成比は50.7%だったが、2カ月で14.7ポイント上昇した。8月下旬の中国軍機による領空侵犯問題や9月の中国・深センの日本人男児殺害事件などで、中国の注目度が大きく高まったためとみられる。
 次いで、「ウクライナ情勢を含めたロシアとの関係性」が52.5%(2,733社)で続き、2項目で構成比が5割を超えた。前回トップだった「通貨・為替政策の在り方」は49.2%(前回60.3%)にとどまり、前回調査から11.1ポイント低下した。ドル円が一時期から円高に大きく振れ、通貨・為替に注目が集まっていた前回に比べ、地政学リスクへの関心が高まった。
 Q1で選択した各候補者の回答状況では、ハリス氏を選んだ企業は「保護主義政策・貿易協定の在り方」が35.8%で、トランプ氏を選んだ企業より11.8ポイント高かった。 
 トランプ氏を選んだ企業では、「移民政策の在り方」が18.4%でハリス氏を選んだ企業より11.5ポイント高かった。

アメリカ大統領の政策で注目することは何ですか? ◇政策の注目点は「台湾有事を含めた中国との関係性」が65.4%でトップ

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「税金滞納(社会保険料含む)」倒産が過去10年で最多 前年同期から2.0倍の165件

税金や社会保険料の滞納が一因の企業倒産が急増している。11月は10件(前年同月比9.0%減)発生し、2024年1-11月の累計165件(前年同期比103.7%増)に達した。すでに年間最多だった2018年の105件を7月に抜き、更新を続けている。

2

  • TSRデータインサイト

接待と二次会離れ? 「バー,キャバレー」の倒産1.6倍増 2024年1-11月「飲食業」倒産 すでに年間最多の908件

2024年1-11月の飲食業の倒産(負債1,000万円以上)は、908件(前年同期比11.0%増)に達した。これまで年間最多の2023年(1‐12月)の893件を15件上回り、11月までで年間最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

登記上の本社同一地の最多は4,535社 代表ひとりが兼任する企業の最多は628社

全国で同じ住所に法人登記された社数の最多は、「東京都港区南青山2-2-15」の4,535社だった。 また、1,000社以上が登記しているのは14カ所で、上位10位までを東京都の港区、渋谷区、中央区、千代田区の住所が占めた。

4

  • TSRデータインサイト

「職別工事業」の倒産が増勢を強める 1‐11月累計677件、年間は11年ぶり700件超に

とび・土工・コンクリート工事業などの「職別工事業」の倒産が11月は66件(前年同月比29.4%増)発生、2024年1-11月累計は677件(前年同期比18.7%増)に達した。すでに前年1年間の634件を上回り、2013年(742件)以来、11年ぶりに700件超えが濃厚となった。

5

  • TSRデータインサイト

「美容室」の倒産 107件で過去最多を更新 新規開店に加え、物価高・人手不足が経営を直撃

コロナ禍で痛手を受けた美容室の倒産が、最悪ペースで増加中だ。2024年1-11月の美容室の倒産は、107件(前年同期比37.1%増)に達し、すでに2000年以降で年間最多の2019年(105件)を超えた。

TOPへ