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全国158万5,849社の“メインバンク“調査 取引先の「増収増益」企業率は京葉銀行がトップ

~ 2024年「企業のメインバンク」調査 ~


 全国158万5,849社の“メインバンク”は、12年連続で三菱UFJ銀行がトップを守った。取引企業数は12万6,642社で、シェアは7.9%を占めた。2位は三井住友銀行で10万442社に伸ばし、初めて10万社を超えた。3位もメガバンクの一角、みずほ銀行が8万773社で続き、メガ3行のシェアは約2割(19.4%)に達する。
 コロナ禍を経て金融再編が加速し、2025年1月に「あいち銀行」、「青森みちのく銀行」が誕生予定で、2026年1月には「八十二長野銀行」も控えている。一方で、安い手数料と営業時間が強みのネット銀行が取引企業とシェアを拡大し、顧客が求める金融機関のあり方は変化している。
 7月に日本銀行が追加利上げを決定し、為替相場は円高に転じ、株価が乱高下するなど経済環境も激変。企業倒産が増勢を続けるなか、金融機関は事業再生への支援などの力量も問われており、取り組み次第ではメインバンクの変更が否応なしに進むことも現実味を帯びている。

※ 本調査は、東京商工リサーチの企業データベースから2013年-2024年の各3月末のメインバンクを集計、分析した。
  商号変更や統合等は、2024年6月末を採用。メインバンクが複数の場合、最上位行をメインバンクとした。
※ 統合した金融機関の統合前の社数は単純に合算し、順位も合算後の順位を採用した。
※ 1県・1行体制は、経営統合や子会社化、合併の予定も含み、本店所在地を基に集計した。


業態別ランキング 三菱UFJ銀行、京都中央信金、茨城県信組のトップは不動

 銀行は、三菱UFJ銀行(12万6,642社)、三井住友銀行(10万442社)、みずほ銀行(8万773社)が上位を占めた。次いで、りそな銀行(3万9,777社)、北洋銀行(2万7,450社)が続くが、上位3行との差は大きい。北洋銀行は前年比5.5%増と取引企業数が大幅に増えた。
 信用金庫は、トップの京都中央信金(8,830社)が社数を伸ばし安定。2位の大阪シティ信金(7,384社)、3位の多摩信金(7,163社)が追いかける。トップ15信金の順位に変動はなかった。
 信用組合は、茨城県信組(3,146社)が圧倒。2位の広島市信組(1,383社)も安定。3位の新潟縣信組(1,202社)に続き、4位の長野県信組(1,200社)、5位の大分県信組(1,157社)がそれぞれ1ランクアップし、6位の山梨県民信組(1,145社)も上位に僅差。

“銀行”メインバンク取引社数ランキング

“信金”メインバンク取引社数ランキング

“信組”メインバンク取引社数ランキング

都道府県別シェア (東日本)

【北海道】第二地銀トップの北洋銀行(シェア37.4%)がトップを維持。2位は取引先の増収増益企業率3位の北海道銀行(同15.9%)で、北陸銀行と「ほくほくFG」を形成。3位は北海道信金(同5.5%)、4位は旭川信金(同4.3%)、5位に帯広信金(同3.5%)、6位には「ほくほくFG」の北陸銀行が入った。以下、北見信金、苫小牧信金、大地みらい信金、室蘭信金、道南うみ街信金、稚内信金、北星信金、空知信金、網走信金、北央信組、北門信金と信金、信組が続く。


【東北】青森は2025年1月、プロクレアHDの1位青森銀行(同42.7%)と2位みちのく銀行(同28.7%)の合併で「青森みちのく銀行」が誕生予定。1万2,502社(同71.5%)でシェアダントツの1県1行となる。岩手は、1位の岩手銀行(同45.4%)がシェアを伸ばし、2位東北銀行(同16.9%)と3位北日本銀行(同15.9%)の差が拡大。宮城は、七十七銀行(同56.6%)が1万社超、シェア6割弱で圧倒。2位は「じもとHD」の仙台銀行(同13.3%)。秋田は、トップが秋田銀行(同54.1%)、2位に「フィデアHD」の北都銀行(同29.6%)が続く。山形は、1位の山形銀行(同37.3%)が伸ばす。2位「じもとHD」のきらやか銀行(同24.2%)は多額の赤字計上、シェアも落とす。3位は「フィデアHD」の荘内銀行(同18.3%)。福島は、1万社超の東邦銀行(同40.9%)がトップ。2位は大東銀行(同9.5%)、3位はSBIHD提携の福島銀行(同8.7%)が続く。
 
【北関東】茨城は「めぶきFG」の常陽銀行(同48.2%)が1万社超で安定シェアを維持。2位は筑波銀行(同18.9%)。栃木は「めぶきFG」の足利銀行(同46.8%)が1万社超え、2位は栃木銀行(同23.7%)。群馬は、1万社超、シェア50%超の群馬銀行(同50.5%)が盤石。2位はしののめ信金(同7.9%)、3位はSBIHDと提携する東和銀行(同6.7%)。

【首都圏】 埼玉は、りそなHDの埼玉りそな銀行(同28.4%)がトップを維持したが、シェアは微減。2位は武蔵野銀行(同12.0%)、3位は埼玉縣信金(同9.8%)が追う。千葉は、2万社超の千葉銀行(同41.2%)が強固。2位の京葉銀行(同14.1%)はシェアを伸ばし、取引企業の増収増益企業率トップで存在感を示す。3位は千葉興業銀行(同8.3%)。東京は、三菱UFJ銀行(同23.0%)、みずほ銀行(同20.8%)の両行がシェア微減、3位の三井住友銀行(同17.7%)が微増で競争激化。神奈川は、トップの横浜銀行(同21.9%)が1万社超。東京14位の東日本銀行と神奈川15位の神奈川銀行で「コンコルディアFG」を形成。事実上の1県1行体制に。
  
【甲信越】新潟は、第四北越銀行(同59.7%)が1万社超、シェア約6割で盤石。2位の大光銀行(同11.4%)はSBIHDと提携。9位に2023年11月合併のはばたき信組(同1.2%)。山梨は、1県1行の山梨中央銀行(同57.1%)がトップ。長野は、1万社超の八十二銀行(同56.2%)が安定。2位の長野銀行(同7.9%)と2026年1月合併し「八十二長野銀行」で1県1行体制へ。

【中部】岐阜はトップの十六銀行(同33.6%)と、2位の大垣共立銀行(同20.6%)の競争が続く。静岡は、静岡銀行(同39.4%)が1万社超でトップ。統合済の2位浜松磐田信金(同10.6%)、3位しずおか焼津信金(同6.9%)が続く。愛知は、三菱UFJ銀行(同23.2%)がトップ、2位名古屋銀行(同10.6%)。3位愛知銀行(同8.1%)と8位中京銀行(同4.0%)が2025年1月に合併し「あいち銀行」へ。三重は1位に百五銀行(同44.7%)、2位は三十三銀行(同27.5%)。

2024年 都道府県別メインバンク取引社数ランキング(東日本)

都道府県別シェア (西日本)

【北陸】富山は、「ほくほくFG」の北陸銀行(シェア48.7%)がトップ。2位に富山第一銀行(同13.8%)、3位に富山銀行(同7.6%)が続く。石川は、1位が取引先増収増益率2位の「北國FHD」の北國銀行(同54.0%)で、1県1行体制。福井は、福井銀行(同48.8%)が社数を伸ばし、シェア拡大。4位の福邦銀行(同8.8%)を子会社化後、2026年5月に合併予定で1県1行に。

【近畿】滋賀は、滋賀銀行(同61.2%)がシェア拡大、1県1行。京都は、1位の京都銀行(同32.6%)が1万社超。2位に信金トップの京都中央信金(同25.4%)。大阪は、トップの三菱UFJ銀行(同19.6%)、2位の三井住友銀行(同18.9%)がともにシェアを落とす。3位のりそな銀行(同12.8%)と4位の関西みらい銀行(同9.8%)の「りそなHD」が続き、2行合算は2万9,139社でシェア22.6%。兵庫は、三井住友銀行(同21.7%)がトップ、2位に「りそなHD」のみなと銀行(同12.6%)が続く。奈良は、南都銀行(同59.9%)、和歌山は、紀陽銀行(同62.3%)がシェア約6割で盤石。両県は1県1行体制。

【中国】鳥取と島根の両県トップは山陰合同銀行。シェアは鳥取48.3%、島根66.4%。鳥取2位は鳥取銀行(同27.3%)。島根2位は島根中央信金(同8.0%)、3位はSBIHD資本提携の島根銀行(同7.9%)。岡山は、1万社超の「ちゅうぎんFG」の中国銀行(同48.7%)が圧倒。2位にトマト銀行(同11.4%)。広島は、1万社超の「ひろぎんHD」の広島銀行(同39.7%)が約4割シェア。2位の「山口FG」もみじ銀行(同17.2%)はシェアダウン。山口は、1位「山口FG」の山口銀行(同59.3%)はシェア低下。2位の西京銀行(同12.9%)が上昇。

【四国】徳島は、1位が阿波銀行(同55.8%)。2位の「トモニHD」の徳島大正銀行(同21.1%)がシェア上昇。香川は、トップが百十四銀行(同48.0%)。2位が「トモニHD」の香川銀行(同18.3%)。愛媛は、 四国最大で1万社超の伊予銀行(同57.4%)が安定。2位に愛媛銀行(同18.6%)。高知は、1位に四国銀行(同51.2%)、2位に高知銀行(同29.0%)が続く。各県トップ行の伊予銀行、百十四銀行、阿波銀行、四国銀行は「四国アライアンス」で連携。

【九州・沖縄】全国有数の激戦区、福岡の1位は「ふくおかFG」の福岡銀行(同36.8%)。2位は「西日本FHD」の西日本シティ銀行(同32.4%)が追う。3位は北九州市の福岡ひびき信金(同4.1%)。4位の筑邦銀行(同3.6%)はSBIHDと提携。5位は「ふくおかFG」の福岡中央銀行(同2.9%)。6位は「山口FG」の北九州銀行(同2.3%)で、3位以下は接戦が続く。佐賀は、佐賀銀行(同57.2%)がシェア安定。2位に佐賀共栄銀行(同7.3%)。長崎は、全国トップシェアを誇る「ふくおかFG」の十八親和銀行(同83.0%)が1万社超。2位に「西日本FHD」の長崎銀行(同3.2%)。熊本は、トップが1万社超の肥後銀行(同58.0%)が安定、鹿児島銀行と「九州FG」を形成。2位は「ふくおかFG」の熊本銀行(同20.6%)。大分は、大分銀行(同51.4%)がトップ。2位に豊和銀行(同11.8%)。宮崎は、宮崎銀行(同60.1%)でシェア6割に到達、1万社圏内に。2位は宮崎太陽銀行(同13.9%)。鹿児島はトップが「九州FG」の鹿児島銀行(同53.3%)で1万社超に。2位に鹿児島相互信金(同12.1%)、3位に南日本銀行(同10.9%)。沖縄は、1位の琉球銀行(同41.9%)と2位「おきなわFG」の沖縄銀行(同38.7%)が「沖縄経済活性化パートナーシップ」で包括業務提携。3位は沖縄海邦銀行(同12.7%)、4位にコザ信金(同2.8%)。

2024年 都道府県別メインバンク取引社数ランキング(西日本)

取引先企業の増収増益率ランキング 1位京葉銀行、2位北國銀行、3位北海道銀行

 メインバンク別に、取引先企業(2023年1-12月期)の売上高、最終利益を対象とした増収増益率を算出した。
 取引企業の増収増益率トップは、京葉銀行の39.1%だった。京葉銀行は、「『お客さま満足度№1のソーシャル・ソリューショングループ』の実現に向け、お客様が直面する様々な経営課題に対して、資金繰り支援にとどまることのない、オーダーメイドのソリューション提供に努めてきた結果と考えている」とコメント。資金繰り支援だけではなく、多方面の支援効果が企業業績の好転につながったようだ。
 2年連続で2位の北國銀行(構成比38.3%)は、「事業性理解(お客さまの事業内容を深く理解する取組み)とコミュニケーションを重視した営業活動によりお客さまと課題を共有し、北國FHDが提供する様々なソリューションを通じて、解決サポートした結果と考えている。引続き、この取組みをしていくことで、お客さま及び地域の持続的な成長に繋げていきたい」とコメント。
 3位は、北海道銀行。同行からはコメントが得られなかった。
 業態別で取引先企業の増収増益率は、1位が都市銀行(同34.1%)。次いで、地方銀行(同33.9%)、第二地銀(同33.8%)、その他(同33.2%)、信用組合(同33.1%)、信用金庫(同32.5%)の順。信用金庫や信用組合が大きく構成比を伸ばし、コロナ禍で窮状に直面した企業への支援効果が出ているようだ。

※ 増収増益率ランキングは、業績が判明し、メインバンク取引社数が1,000社以上を対象に集計した。

メインバンク取引先 増収増益率ランキング

倒産企業のメインバンク調査

 各年度(4-3月)に倒産した企業(負債1,000万円以上)のメインバンク(判明分)を分析した。2023年度の企業倒産は、9,053件だった。これを業態別にみると、最多は取引社数が多い地方銀行が1,609社(構成比33.9%)。次いで、信用金庫1,254社(同26.4%)、都市銀行1,018社(同21.4%)、第二地銀524社(同11.0%)、信用組合152社(同3.2%)と続く。
 2023年度末の業態別メインバンクの取引社数を分母にして、倒産企業数を除した「倒産比率」(その他除く)は、信用組合の0.44%が最も高かった。次いで、信用金庫の0.35%、第二地銀の0.34%、都市銀行の0.27%、地方銀行の0.25%と続く。
 倒産比率は、金融機関の支援度合いを測るものではなく、信用金庫や信用組合は、小・零細規模の企業との取引が多いため倒産企業は多いが、一方で増収増益の企業率も伸ばしている。

メイン企業数の増加率ランキング

 メインバンクの取引社数(500社以上)を前年と比較した増加率ランキングを作成した。
 1位は、前年500社以下で対象外だったGMOあおぞらネット銀行が118.6%増でトップに躍り出た。2位は前年1位の住信SBIネット銀行(37.5%増)、3位に楽天銀行(14.8%増)、4位にPayPay銀行(13.5%増)が続き、ネット銀行は高い増加率を持続している。
 5位にネット銀行以外の大阪商工信金(5.7%増)が顔を出す。本業支援の強化で社数を伸ばしたようだ。6位は兵庫県明石市の日新信金(5.6%増)、7位に地方銀行トップの取引社数を誇る北洋銀行(5.5%増)、8位に香川県の観音寺信金(5.2%増)、9位に八十二銀行(5.2%増)、10位に近畿産業信組(5.1%増)と続く。

2024年 全国メインバンク 増加率ランキング(取引社数500社以上)



 嵐の前の静けさなのか。最近は金融機関の統合ニュースをあまり目にしない。コロナ禍を経て平時に戻るなか、7月に日銀が追加利上げを決定し、円高株安が進んだ。こうした状況を背景に、今後の貸出金利の上昇や融資先の選定など金融機関の動きが注目される。

 企業倒産は7月で28カ月連続の増勢をたどり、地方ほど少子高齢化、人口減少も進行している。キャッシュレス化やデジタル通貨の検討など、FinTech(フィンテック)の流れが加速し、金融機関は営業店舗の存在メリットが小さくなっている。一方で、地域に根ざした信用金庫や信組はメイン取引社数を増やしており、営業店の統廃合を進める地方銀行との二極化も進行している。
 コロナ禍で過剰債務に陥った企業などのメインバンクは、事業再生の伴走支援を継続するか、別の金融機関にメインバンクを譲るのか、選択を迫られる時期を迎えている。
 また、企業も金融機関に貸出金利を競わせ、低利資金を調達する手法は曲がり角にきている。
 今回のメインバンク調査では、メガバンクと地域一番行の強みと同時に、2番手以下の競合が次の一手を生む可能性をうかがわせる結果となった。

全国メインバンク取引社数ランキング

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