• TSRデータインサイト

2024年上半期の「後継者難」倒産 過去最多の254件 労働集約型の産業では、人手だけでなく、後継者不足も顕著

2024年上半期(1-6月)の「後継者難」倒産


 人材確保だけでなく、後継者不足も深刻だ。2024年上半期(1-6月)の後継者不在に一因する「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は254件(前年同期比20.9%増)で、調査を開始した2013年度以降で最多件数を更新し、年間で初めて500件台に乗せる可能性が出てきた。
 内訳は、代表者の「死亡」が128件(同28.0%増)、次いで、「体調不良」が88件(同15.7%増)で、この2要因で216件(同22.7%増)に達し、「後継者難」倒産の8割以上(85.0%)になった。

 2023年の社長の平均年齢は63.76歳(前年63.02歳)で、2009年以降で最高を更新した。代表者の高齢化に伴う事業承継は経営上の大きな課題となっている。

 産業別は、件数で最多が建設業の60件(前年同期比20.0%増)。増加率では、運輸業が前年同期比216.6%増(2024年上半期19件、前年同期6件)と突出している。建設業や運輸業は、今年4月に時間外労働の上限規制が適用されたが、人手不足だけでなく、後継者不足も顕著だ。
 資本金別は、1千万円未満が146件(前年同期比23.7%増)と半数以上(構成比57.4%)を占めた。ただ、5千万円以上1億円未満が前年同期比60.0%増(2024年上半期8件、前年同期5件)、1億円以上は1件と2年ぶりに発生し、事業規模を問わず、後継者難は深刻となっている。

 金融機関などは、事業再生のなかで、廃業支援も取り組みつつある。ただ、代表者が高齢の企業ほど業績が悪化する傾向があり、業績不振から抜け出せない企業への支援は時間の経過とともに難しさを増す。そうした支援を受けられない企業を中心に、「後継者難」倒産は増勢が続くことが懸念される。

※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2024年上半期(2024年1-6月)の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)を抽出し、分析した。

「後継者難」倒産推移


【要因別】「死亡」が半数を占める

 要因別は、最多が代表者の「死亡」の128件(前年同期比28.0%増)で、上半期では2年ぶりに前年同期を上回った。構成比は50.3%(前年同期47.6%)で、半数を占めた。次いで、「体調不良」が88件(前年同期比15.7%増、構成比34.6%)で、3年連続で前年同期を上回った。
 「死亡」と「体調不良」の合計は216件(同22.7%増、同85.0%)で、上半期では調査を開始した2013年以降で、初めて200件台に乗せた。
 このほか、「高齢」が27件(前年同期比12.5%増)で、3年連続で前年同期を上回った。
 近年、代表者の高齢化とともに、後継者の育成や事業承継問題がクローズアップされている。ただ、業績低迷から抜け出せない企業では、後継者の育成や事業承継に向けた準備に着手できていないのが実情。そのため、代表者が急死や体調不良で事業に関わることができなくなると、事業運営に支障が出ることを浮き彫りにしている。

「後継者難」倒産 要因別(1-6月)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

銀行員の年収、過去最高の653万3,000円 3メガ超えるトップはあおぞら銀行の906万円

国内銀行63行の2024年度の平均年間給与(以下、年収)は、653万3,000円(中央値639万1,000円)で、過去最高となった。前年度の633万1,000円(同627万5,000円)から、20万2,000円(3.1%増)増え、増加額は3年連続で最高を更新した。

2

  • TSRデータインサイト

タクシー業界 売上増でも3割が赤字 人件費・燃料費の高騰で二極化鮮明

コロナ禍を経て、タクシー業界が活況を取り戻している。全国の主なタクシー会社680社の2024年度業績は、売上高3,589億5,400万円(前期比10.6%増) 、利益83億3,700万円(同11.1%増)で、増収増益をたどっている。

3

  • TSRデータインサイト

「調剤薬局」 中小・零細はリソース不足で苦戦 大手は戦略的M&A、再編で経営基盤を拡大

 調剤薬局の大型再編が加速するなか、2025年1-8月の「調剤薬局」の倒産は20件(前年同期比9.0%減)で、過去最多の2021年同期と2024年同期の22件に迫る多さだった。今後の展開次第では、年間初の30件台に乗せる可能性も高まっている。

4

  • TSRデータインサイト

りそな銀行、メイン取引先数が増加 ~ 大阪府内企業の取り込み加速 ~

関西や首都圏で大企業から中堅・中小企業のメインバンクとして確固たる地位を築くりそな銀行。「2025年全国メインバンク調査」ではメインの取引社数は3メガバンクに次ぐ4位の4万511社だった。東京商工リサーチが保有する全国の企業データを活用しりそな銀行がメインバンクの企業を分析した。

5

  • TSRデータインサイト

メインバンク調査で全国5位の北洋銀行 ~圧倒する道内シェアで地域経済を牽引~

「2025年全国メインバンク調査」で、北洋銀行(2万8,462社)が3メガ、りそな銀行に次ぎ、調査開始の2013年から13年連続で全国5位を維持した。北海道に169店舗、都内1店舗を構え北海道内シェアは約4割(37.9%)に達する。

TOPへ