• TSRデータインサイト

2024年5月の「道路貨物運送業」倒産 大幅増の46件 コストアップと「2024年問題」が直撃、4月以降は前年比2倍超

2024年5月 「道路貨物運送業」倒産状況


 厳しい経営環境に置かれる道路貨物運送業の倒産が急増している。2024年5月の「道路貨物運送業」の倒産は46件(前年同月比119.0%増)で、5月としては2005年以降の20年間で最多を更新した。
 道路貨物運送業界は、コロナ禍から燃料価格の高止まりに加え、深刻なドライバー不足で人件費が上昇するなどコストアップに見舞われている。また、今年4月には時間外労働時間の上限規制が適用された。このため、4月(30件)は前年同月比114.2%増、 5月は過去20年間で2008年(45件)を上回り最多を更新。
  道路貨物運送業の「人手不足」関連倒産(後継者難除く)は、前年同月と同じ4件で、内訳は「求人難」(前年同月3件)と「従業員退職」(同ゼロ)が各2件。また、燃料価格上昇など「物価高」倒産は11件(同8件)だった。

 資本金別は1千万円未満が29件(前年同月比61.1%増、構成比63.0%)、従業員数別では10人未満が31件(同82.3%増、同67.3%)と、小・零細規模の倒産が圧倒的に多い。

 道路貨物運送業は構造的に小規模の下請け業者が多く、コストアップ分の価格転嫁は難しい。6月6日に公正取引委員会が公表した「令和5年度における荷主と物流事業者との取引に関する調査結果及び優越的地位の濫用事案の処理状況について」で、注意喚起文書を送付した荷主の行為類型別内訳(合計687件)では、「買いたたき」が239件(構成比34.8%)、「代金の減額」が142件(同20.7%)と、この2行為で半数以上を占め、下請け業者の苦境が浮き彫りになった。

 道路貨物運送業の倒産増加は、物流停滞につながり懸念される。適切な価格転嫁やドライバー確保など多くの課題を抱えているが、政府主導による業界慣習の抜本的な改善などが急がれる。

※ 本調査は、2024年5月の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、道路貨物運送業(一般貨物自動車運送業・ 特定貨物自動車運送業・ 貨物軽自動車運送業・ 集配利用運送業)を集計・分析した。


5月の「道路貨物運送業」倒産46件 前年同月の2.1倍、5月度では過去20年間で最多

 2024年5月の「道路貨物運送業」倒産は46件(前年同月比119.0%増)で、5月では2005年以降の20年間で2008年(45件)を超え、最多を更新した。1-5月累計は162件(前年同期比55.7%増)で、20年間では2010年の165件に次ぎ、4番目の多さとなった。今年4月から時間外労働の上限規制が適用され、4月と5月は倒産の増加率が2カ月連続で前年同月比100.0%超と急増ぶりが目立つ。
 負債総額は64億5,500万円(前年同月比265.5%増)で、前年同月の3.6倍に増加した。
 道路貨物運送業は、長時間労働と賃金が見合わずドライバー不足が続いていた。さらに、円安と原油高から燃料価格が高騰しコストアップに見舞われ、価格転嫁が難しい小・零細規模の下請企業が多い業界の深刻さを浮き彫りにしている。

道路貨物運送業の倒産推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ