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「早期・希望退職募集」は 27社、対象は 4,474人に 黒字企業の事業再編で増加、年齢制限ない募集も

2024年上場企業「早期・希望退職募集」状況 (5月16日現在)


 上場企業の人員削減が加速してきた。2024年5月16日までに、「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は27社(前年同時期20社)で、対象は4,474人(同1,314人)に達した。すでに、2023年(3,161人)の年間実績を超えており、年間1万人超のペースをたどっている。募集企業の6割超(構成比62.9%)が黒字で、2024年度に入り年齢制限を設けず不採算事業の見直しを進める募集も出てきた。 募集人数1,000人以上は、資生堂(1,500人)、オムロン(1,000人)の2社。
 上場区分では、東証プライムが最多の17社(構成比62.9%)で、募集人数は4,315人と全体の9割以上を占めた。

 募集を開始した企業の直近通期最終損益(単体)は、黒字が17社(構成比62.9%)と6割を超えた。前回調査(4月24日現在)では募集企業21社のうち、黒字は12社(同57.1%)だったが、黒字率が上昇してきた。

 産業別では、製造業が最多の16社(構成比59.2%)と突出している。このうち、オムロンやソニーグループ、コニカミノルタなど電気機器が情報・通信業と並び各6社で最多だった。円安の恩恵あるうちに不採算事業の閉鎖など、構造改革を進める製造業が目立つ。

 上場廃止した東芝や募集せずに事業を売却するなど、集計対象外の大手企業も増えている。また、2024年は対象年齢に制限を設けない募集も増えてきた。不採算事業などの見直しに伴うもので、この傾向が強まると2021年(1万5,892人)以来、3年ぶりに1万人を超える可能性が出てきた。

※ 本調査は、希望・早期退職募集の具体的な内容を確認できた上場企業を対象に集計した。
※『会社情報に関する適時開示資料』(2024年5月16日公表分まで)と東京商工リサーチの独自調査に基づく。


上場企業 早期・希望退職 推移


業種別 電気機器、情報通信が最多

 2024年5月16日までに「早期・希望退職募集」が判明した上場27社の業種別は、最多が電気機器(前年同期4社)と東北新社など情報・通信業(同5社)の各6社だった。
 次いで、サービス業が3社(同2社)、食料品(同1社)、ワコールホールディングスなどの繊維製品(同2社)、その他製品(同ゼロ)が各2社と続く。
 電気機器はすべて構造改革に伴う募集で、不採算事業の見直しを急いでいる。情報通信はアフターコロナのフェーズに対応するため、人員の適正化を図っている。

業種別(社数上位)

損益別 黒字企業が6割超

 5月16日までに「早期・希望退職募集」が判明した上場企業27社の直近通期最終損益(単体)は、黒字が17社、赤字が10社だった。  
 黒字企業の募集人数は合計4,316人で、募集人数の9割以上(構成比96.4%)を占めた。黒字企業17社のうち、13社が東証プライム上場だった。
 赤字企業10社の募集人数の合計は158人だった。赤字企業は、東証プライムとグロースが各4社、東証スタンダード2社。
 赤字企業の業種別は、情報・通信業が3社、電気機器とサービス業が各2社、食料品、機械、卸売が各1社で続く。

上場企業 早期・希望退職 損益別

特別損失計上額(判明分、予定含む、上位)

 国内外の「早期・希望退職募集」に対する特別損失の計上額が判明した上場企業は、コニカミノルタの200億円が最高。次いで、資生堂の180億円、TOPPANホールディングスの61億円、オリンパスの28億円、ワコールホールディングスの22億円、ティーガイアの17億円と続く。
 コニカミノルタは国内外で2,400人、資生堂は国内で1,500人の「早期・希望退職募集」を実施した。

特別損失計上額(判明分、予定含む、上位)

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