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2023年度の運送業倒産345件に急増 人手不足・燃料高で採算悪化

2023年度(4-3月)「道路貨物運送業」の倒産


 2023年度の道路貨物運送業の倒産は、件数が345件(前年度比31.1%増、前年度263件)で、3年連続で前年度を上回った。年度で件数が300件台に乗ったのは2014年度以来9年ぶりとなる。

 四半期別の件数推移は、2023年4-6月が前年同期比11.6%増(60→67件)、7-9月が同63.3%増(60→98件)、10-12月が同27.0%増(74→94件)、2024年1-3月が同24.6%増(69→86件)と高水準で推移している。
 資本金別では、1千万円未満が253件(前年度比50.5%増、前年度168件)と、全体の7割以上(構成比73.3%)を占め、中小・零細企業の苦境が浮き彫りになった。

 負債総額は、595億9,100万円(前年度比36.1%増、前年度437億8,100万円)で、2年連続で増加した。10億円以上の大型倒産は前年度と同件数の5件だったが、5億円以上10億円未満が16件(前年度13件)、1億円以上5億円未満が135件(前年度80件)と前年度を上回った。中堅規模の倒産が増加し、負債総額を押し上げた。


道路貨物運送業の倒産 月次推移



 「人手不足」関連倒産は、48件(同118.1%増)で前年から約2.2倍に急増し、集計を開始した2013年以降では初めて40件を上回った。特に「求人難」(前年度8件)と「人件費高騰」(同3件)が各16件と大きく増加し、深刻な人手不足とそれに伴う人件費アップが運送業の経営を直撃している。

 燃料費の高騰などによる「物価高」関連倒産は、141件(前年度比76.2%増)と大幅に増加。資源エネルギー庁が発表する軽油価格は、2024年3月末時点で1リットルあたり154.1円だった。2023年6月中旬以降は150円以上で推移しており、軽油価格の高止まりが続いている。こうした状況から、2023年度は2023年4月、5月、2024年1月を除く9カ月で「物価高」倒産が10件台となり、燃料費などのコストアップが各企業の採算性を悪化させる要因となっている。

 4月1日から、ドライバーの時間外労働の上限が規制された。大手事業者では、長距離輸送に中継を設けたり、共同輸送で連携をとるなどの対策をとりつつ、コストアップ分の価格転嫁も進む。一方、下請業者が多い中小・零細企業では、「2024年問題」の対策が進まない企業も多いなか、価格転嫁の遅れから賃金アップの流れに追随できず、ドライバーの確保が難しい企業もある。燃料価格の高止まりによるコストアップでも企業体力を削られ、先行きの見通しが立たず、事業継続を諦めるケースが増加している。
 事業環境の改善が進まず、資金繰りが限界に達した企業を中心に今後も倒産が増加する懸念が高い。

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