• TSRデータインサイト

2023年度「新聞販売店」倒産 過去最多の39件 発行部数の減少に、物価高・人手不足が追い打ち

2023年度「新聞販売店」の倒産動向調査


 全国で新聞販売店の淘汰が続いている。2023年度(4‐3月)の「新聞販売店」の倒産は39件(前年度比56.0%増)で、1994年度以降の30年間で最多を記録した。2024年2月は10件発生し、2014年5月と並んで月間最多を記録した。
 一般社団法人日本新聞協会が公表するデータ(各年10月時点)によれば、ネット媒体の情報発信が拡大し、2023年の新聞発行部数は約2,859万部(前年比7.3%減)と、1年前に比べ約225万部減少している。こうした構造的な問題に加え、配送にかかる燃料費、人件費などのコストアップが経営を直撃。コロナ禍で折り込み広告収入も落ち込み、新聞社からの補助金やゼロゼロ融資などの資金繰り支援で窮状をしのいだ新聞販売店も多い。購読者数が伸び悩み、専売店から複合店、合売店への業態変更などの対応を迫られるなか、支援効果の薄れとともに新聞販売店の倒産、廃業は増勢をたどることが懸念される。

※ 本調査は、日本産業分類の「新聞小売業」の倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。


新聞小売業の倒産が39件 年度では過去30年で最多

 2023年度の新聞販売店の倒産は39件(前年度比56.0%増)で、年度最多だった2014年度の30件を上回って30年間で過去最多を記録した。倒産形態は39件すべてが消滅型の「破産」だった。

新聞小売業の企業倒産・新聞販売所数 推移

 

 原因別では、「販売不振」が最多の30件(前年度比42.8%増)と7割超(76.9%)を占めた。次いで、赤字累積などの「既往のシワ寄せ」が6件(前年度ゼロ)で続く。この2原因で36件(前年度比71.4%増)と9割以上(92.3%)を占め、長年に及ぶ構造的な苦境を浮き彫りにしている。
 もともと小・零細規模の事業所が多く、資本金別では39件すべて5千万円未満(個人企業含む)、従業員数別では10人未満が35件(構成比89.7%)を占めている。

 地区別では、最多が関東の24件(前年度11件)で6割を占めた。次いで、中部が7件(同4件)、近畿が4件(同7件)、北海道(同ゼロ)・東北(同1件)・北陸(同ゼロ)・中国(同1件)が各1件だった。四国と九州は発生がなかった。

2023(令和5)年度 地区別倒産状況

 

 一般社団法人日本新聞協会が公表する2023年の新聞発行部数(各年10月時点)は2,859万486部で、2004年の5,302万1,564部から20年で約半分(46.0%減)に減少した。新聞販売店は、発行部数の減少に加え、ネット広告へのシフトで新聞折込チラシも減少するなかで、人手不足で配達員が確保しにくいことも痛手になっている。

 倒産や廃業が増えるなか、販売店の統廃合も加速し、全国の新聞販売所数は2004年の2万1,064店舗から2023年は1万3,373店舗へ減少している。紙の新聞が長い冬の時代に入り、経営体力が脆弱な中小・零細規模の新聞販売店の市場退出に歯止めが掛かっていない。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「人手不足」企業、69.3%で前年よりも悪化 建設業は8割超が「正社員不足」で対策急務

コロナ禍からの経済活動の再活性化で人手不足が深刻さを増し、「正社員不足」を訴える企業が増加している。特に、2024年問題や少子高齢化による生産年齢人口の減少などが、人手不足に拍車をかけている。

2

  • TSRデータインサイト

「食品業」倒産 2年連続増加の653件 原材料やエネルギー価格、人件費上昇が負担

歴史的な円安が続くなか、歯止めが掛からない食材の価格上昇、人件費などのコストアップが食品業界の経営を圧迫している。2023年度(4-3月)の「食品業」の倒産(負債1,000万円以上)は653件(前年度比16.3%増)で、2年連続で前年度を上回った。

3

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】テックコーポレーションと不自然な割引手形

環境関連機器を開発していた(株)テックコーポレーションが3月18日、広島地裁から破産開始決定を受けた。 直近の決算書(2023年7月期)では負債総額は32億8,741万円だが、破産申立書では約6倍の191億円に膨らむ。 突然の破産の真相を東京商工リサーチが追った。

4

  • TSRデータインサイト

2024年の「中堅企業」は9,229社 企業支援の枠組み新設で、成長を促進し未来志向へ

東京商工リサーチの企業データベースでは、2024年3月時点で「中堅企業」は9,229社(前年比1.2%増、構成比0.7%)あることがわかった。うち2023年の中小企業が、2024年に「中堅企業」に規模を拡大した企業は399社だった。一方、「中堅企業」から「中小企業」へ規模が縮小した企業も311社みられた。

5

  • TSRデータインサイト

「経営者保証」 75%の企業が「外したい」 保証料率の上昇、金融機関との関係悪化を懸念する声も

資金調達時の経営者(個人)保証について、「外したい」と回答した企業が75.5%にのぼり、経営者保証に拠らない融資へのニーズが大きいことがわかった。ただ、保証料率の上乗せや金融機関との関係悪化を懸念して経営者保証を外すことに慎重な企業も多い。

TOPへ