• TSRデータインサイト

約4割の企業が「台湾有事」を想定 リスクヘッジは大手と中小企業で格差

「企業の台湾有事の想定」アンケート調査


 2024年1月13日、台湾総統選挙で民進党副総統の頼清徳氏が当選した。 頼氏の当選により中台関係に緊張が強まるなか、頼氏は蔡英文政権路線を継承すると表明した。
 東京商工リサーチは2月1日~8日、インターネットで台湾有事に関するアンケート調査を実施した。それによると、台湾有事を想定している企業は約4割(37.5%)にのぼることがわかった。ただ、台湾有事を想定していると回答した企業のうち、何らかの対策を講じている企業は23.9%にとどまった。

 東京商工リサーチのアンケート調査は、4,744社が回答した。台湾有事を「想定している」と回答した企業は全体の37.5%にのぼった。「想定している」と回答した企業のうち、「大いに想定している」が7.4%。「少し想定している」が30.0%だった。
 一方、「あまり想定していない」は42.3%、「全く想定していない」は20.1%で、「想定していない」は62.5%と、台湾有事を巡る想定は二極化している。

 産業別で、台湾有事を「想定している」比率が最も高かったのは、「農・林・漁・鉱業」の44.4%。次いで、「卸売業」の41.2%、「製造業」の39.4%と続く。取引やサプライチェーンへの影響が懸念される産業で高い傾向が出た。一方、最も低かったのは「金融・保険業」の25.7%、次いで 「建設業」の30.2%で、産業により想定度合いに大きな違いがあった。

 台湾を巡る問題では、日本政府は当事者間の直接の話し合いを通じた平和的な解決を望むとしている。日本政府は慎重な対応をみせるが、将来の危機に備え、リスクヘッジに動き出している企業も一部あることがわかった。

※ 本調査は、2024年2月1日~8日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答4,744社を集計・分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
※「台湾有事の想定」に関するアンケートは今回が初めて。


Q1.中国と台湾の緊張関係が高まっています。貴社は「台湾有事」を想定していますか?(択一回答)

◇台湾有事を「想定している」37.5%
 台湾有事について、「大いに想定している」は7.4%(353社)、「少し想定している」は30.0%(1,426社)で、「想定している」は合計37.5%(1,779社)だった。
 一方、「あまり想定していない」は42.3%(2,011社)、「全く想定していない」は20.1%(954社)で、「想定していない」は合計62.5%(2,965社)と二分された。
 規模別では、「大いに想定している」は大企業が5.7%(452社中、26社)、中小企業が7.6%(4,292社中、327社)だった。「少し想定している」は大企業27.6%(125社)、中小企業30.3%(1,301社)で、「想定している」全体では中小企業が4.5ポイント上回った。

中国と台湾の緊張関係が高まっています。貴社は「台湾有事」を想定していますか? ◇台湾有事を「想定している」37.5%

Q2.Q1で「大いに想定している」「少し想定している」と回答された方に伺います。なんらかの対策は講じていますか?(複数回答)

 回答の最多は、「対策は講じていない」が76.0%(1,623社中、1,235社)だった。規模別では、大企業が59.5%(131社中、78社)、中小企業が77.5%(1,492社中、1,157社)で、中小企業の約8割が対応していない。
 次いで、「関係国(中国・台湾)以外からの調達に切り替えた、または検討している」が10.1%(164社)、「関係国以外への販路を開拓した、または開拓を検討している」が7.8%(128社)、「関係国に依存している部材の在庫を増やした、または検討している」が3.9%(64社)と続く。
 具体的な対策では、いずれも大企業が中小企業を上回った。資金力だけでなく、情報力でも大企業が優位にあるだけに、リスクヘッジへの対応力をみせている。換言すると、中小企業の個別対応はハードルが高いともいえる。

なんらかの対策は講じていますか?

有事を想定する業種は「各種商品卸売業」「情報通信機械器具製造業」などが上位

 Q1で「想定している」と回答した業種別(母数10社以上)を分析すると、最高は総合商社などを含む「各種商品卸売業」の60.0%(25社中、15社)。次いで、電子機器メーカーを含む「情報通信機械器具製造業」、旅行業などを含む「その他の生活関連サービス業」が各52.3%(21社中、11社)と続く。台湾有事の場合、関係国を中心にサプライチェーンへの影響、海外旅行需要の変化などが回答に影響を与えたとみられる。
 一方、「想定していない」では、最高が「飲料・たばこ・飼料製造業」の76.0%(25社中、19社)、「技術サービス業」が72.8%(92社中、67社)、「洗濯・理容・美容・浴場業」が72.7%(11社中、8社)と続く。「想定していない」と回答した業種は、消費者対象のBtoC産業や内需型産業が目立つ。

業種別(上位10業種) 左:「想定している」 右:「想定していない」

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

M&A総研の関わりに注目集まる資金流出トラブル ~ アドバイザリー契約と直前の解約 ~

東京商工リサーチは、M&Aトラブルの当事者であるトミス建設、マイスHD、両者の株式譲渡契約前にアドバイザリー契約を解約したM&A総合研究所(TSRコード: 697709230、千代田区)を取材した。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業、中高年の活用に活路 「早期・希望退職」は大企業の2.8%が実施

 「早期希望・退職」をこの3年間実施せず、この先1年以内の実施も検討していない企業は98.5%だった。人手不足が深刻化するなか、上場企業の「早期・希望退職」募集が増えているが、中小企業では社員活用の方法を探っているようだ。

3

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

4

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

5

  • TSRデータインサイト

2023年度「赤字法人率」 過去最小の64.7% 最小は佐賀県が60.9%、四国はワースト5位に3県入る

国税庁が4月に公表した「国税庁統計法人税表」によると、2023年度の赤字法人(欠損法人)は193万650社だった。普通法人(298万2,191社)の赤字法人率は64.73%で、年度集計に変更された2007年度以降では、2022年度の64.84%を下回り、最小を更新した。

TOPへ