• TSRデータインサイト

花粉シーズンが到来 「業務に悪影響」のうち9割超の企業が効率低下を指摘

~ 「企業の花粉症影響」アンケート調査 ~


 スギ花粉の本格的な飛散シーズンを迎える。花粉症の業務への支障について、悪影響が出ている企業の9割超(92.7%)が「従業員の作業効率の低下」を指摘した。花粉症の従業員は、鼻水や目のかゆみなどによる集中力低下が悩みで、職場や同僚の理解や支援も重要になっている。国は、「花粉症対策初期集中対応パッケージ」を打ち出し、スギ人工林の伐採やスギ花粉飛散量の予測情報の提供などに取り組むが、当面は、マスクや対策メガネなどで花粉に触れず、入室時に花粉を払ったり、食生活や治療などの花粉症対策で乗り越えるしかなさそうだ。

 東京商工リサーチは、2月1日から8日にインターネットで企業アンケートを実施し、4,639社から回答を得た。業務に「花粉症が悪影響を与えている」との回答が25.2%に達した。4社に1社が「悪影響あり」と答えた。一方、「あまり与えていない」は46.2%、「全く与えていない」は28.4%あった。従業員の体質にもよるが、花粉症が社会的な問題になりつつあることがわかる。

 産業別では、「悪影響あり」の回答比率が最も高かったのは、「農・林・漁・鉱業」の32.0%。次いで、「不動産業」の31.1%、「情報通信業」の30.1%で続く。一方、最も低かったのは「運輸業」の20.8%で、産業により大きな差が出た。「悪影響あり」と回答した企業のうち、92.7%が「従業員の作業効率の低下」を訴えた。また、「医療機関受診を理由とした遅刻・早退・休暇の増加」も32.2%あった。受診は会社だけでなく、従業員にも時間ロスが負担になっている。

 厚生労働省の資料によると、花粉症有病率は42.5%(2019年)と、約10年で10ポイント程度ずつ増加しているという。花粉症のアレルギー症状が出ていない人も、将来的に発症する可能性がある。国民病ともいえる「花粉症」対策は、国や企業の取り組みと協力も欠かせない。

※ 本調査は、2024年2月1日~8日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答4,639社を集計・分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
※「花粉症」に関するアンケートは2回目。前回は2023年6月調査。


Q1.貴社の業務に花粉症は悪影響を与えていますか?(択一回答)

◇(花粉症が悪影響を)「与えている」が25%
 悪影響が、「大いに与えている」は3.0%(142社)、「少し与えている」は22.1%(1,029社)で、「悪影響あり」合計25.2%(1,171社)に達した。一方、「あまり与えていない」は46.2%(2,147社)、「全く与えていない」も28.4%(1,321社)だった。
 規模別では、「大いに与えている」が大企業2.0%(450社中、9社)、中小企業3.1%(4,189社中、133社)だった。「少し与えている」が大企業21.1%(95社)、中小企業22.3%(934社)で、「悪影響あり」は中小企業の方が高かった。
 大企業は、人的リソースに加え、在宅勤務や医療機関への受診補助、空気清浄機の整備など、花粉症対策が中小企業より進んでいる可能性が背景にあるとみられる。

貴社の業務に花粉症は悪影響を与えていますか?

Q2.Q1で「大いに与えている」「少し与えている」と回答された方に伺います。どのような影響がありますか?(複数回答)

 最も回答比率が高かったのは、「従業員の作業効率の低下」の92.7%(1,143社中、1,060社)だった。規模別では、大企業が98.0%(102社中、100社)、中小企業が92.2%(1,041社中、960社)と大企業の回答率が高かった。
 次いで、「医療機関受診を理由とした遅刻・早退・休暇の増加」が32.2%(369社)で、花粉シーズンに入ると従業員の受診などで影響が出ている。
 一方、「屋外での作業自粛」は9.4%(108社)で、業種によっては自粛が難しいケースもあり、回答率は低かった。

「大いに与えている」「少し与えている」と回答された方に伺います。どのような影響がありますか?

悪影響は「織物・衣服・身の回り品小売業」「映像・音声・文字情報制作業」が上位

 Q1で「業務に悪影響あり」と回答した業種別(母数10社以上)を分析した。最も高かったのは、アパレルや雑貨小売など「織物・衣服・身の回り品小売業」の50.0%(10社中、5社)だった。来店客の出入りや換気などで花粉が室内に入り込みやすいほか、花粉症の症状が接客にも影響しているようだ。
 次いで、「映像・音声・文字情報制作業」の47.0%(17社中、8社)、訪問介護などの「社会保険・社会福祉・介護事業」と「自動車整備業」が各40.9%(各22社中、9社)で続く。
 一方、「悪影響なし」の回答比率が高かったのは、「保険業」と「洗濯・理容・美容・浴場業が各100%(11社中、11社)、「飲料・たばこ・飼料製造業」が92.0%(25社中、23社)、「広告業」が86.9%(23社中、20社)、「業務用機械器具製造業」が86.8%(38社中、33社)で続いた。

業種別(上位15業種) 左:花粉症の悪影響「あり」 右:左:花粉症の悪影響「なし」 

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

2

  • TSRデータインサイト

「想定為替レート」 平均1ドル=141.6円 前期比1.9円円高を想定、4期ぶり円安にブレーキ

主な株式上場メーカー98社の2025年度決算(2026年3月期)の期首ドル想定為替レートは、1ドル=140円が48社(構成比48.9%)と約5割にのぼった。平均値は1ドル=141.6円で、前期に比べ1.9円の円高となった。

3

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

4

  • TSRデータインサイト

日産自動車の役員報酬1億円以上開示は5人 内田前社長の報酬額は3億9,000万円

 経営再建中の日産自動車が、2025年3月期決算の有価証券報告書を提出した。報酬額1億円以上の個別開示の人数は5人で、前年と同数だった。

5

  • TSRデータインサイト

2024年上場企業の「個人情報漏えい・紛失」事故 過去最多の189件、漏えい情報は1,586万人分

2024年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故は、189件(前年比8.0%増)で、漏えいした個人情報は1,586万5,611人分(同61.2%減)だった。 事故件数は調査を開始した2012年以降、2021年から4年連続で最多を更新した。

TOPへ