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「2024年問題」直前の軽貨物運送業 倒産と休廃業・解散の合計が3年連続で過去最多

~ 2023年「軽貨物運送業」動向調査 ~


 ドライバー不足が懸念される「2024年問題」が間近に迫るなか、宅配などを担う「軽貨物運送業(貨物軽自動車運送業)」の2023年の倒産(49件)と休廃業・解散(74件)の合計が過去最多の123件に達したことがわかった。倒産は1989年 、休廃業・解散は2000年の統計を開始以来、最多を更新し、合計は3年連続で過去最多だった。コロナ禍で宅配市場は拡大したが、人手不足や燃料高騰、運賃の引き上げ難、競争激化などで「利益なき成長」に陥っており、2024年はさらに淘汰が加速する可能性も高まっている。

 コロナ禍で新しい生活様式が定着し、個人宅への宅配需要が増加し、軽貨物運送業の売上高は伸びている。2023年の軽貨物運送業269社の売上高は1,796億1,200万円(前年比10.4%増)、利益(最終利益)は23億6,300万円(同41.2%増)と増収増益をたどった。だが、コロナ禍前の2019年との比較では売上高が21.0%増に対し、利益は36.1%減と厳しい経営環境にある。

 物流停滞が懸念される2024年問題のほか、事故が急増する軽トラック事業者に対し、管理者選任や事故報告の義務付けなどの規制も2月13日、閣議決定された。軽貨物運送業者は下請構造や競合から運賃値上げが難しい業者も多く、倒産や休廃業・解散をさらに押し上げる可能性がある。

※ 本調査は、日本産業分類の「貨物軽自動車運送業」の2023年(1-12月)の倒産、休廃業・解散を集計、分析した。
※ 業績動向調査は、2022年10月期-2023年9月期を基準に5期連続で比較可能な269社を集計、分析した。


軽貨物運送業の倒産 過去最多

 2023年の「軽貨物運送業」倒産は3年連続で増加し、49件(前年比36.1%増)だった。1989年の統計開始以来、2年連続で過去最多を更新し、増勢を強めている。
 負債総額は、30億200万円(同198.7%増)で前年の約3倍と大幅に増加した。前年に発生がなかった負債5億円以上が2件発生し全体を押し上げた。ただ、負債1億円未満は44件で、約9割(構成比89.7%)を占め、倒産と廃業は小・零細企業を中心にしている。
 原因別では、販売不振が38件(同77.5%)と最も多く、過小資本と他社倒産の余波が各3件(同6.1%)で続く。形態別では、破産が46件(同93.8%)と消滅型が9割超を占めた。再建型は民事再生法の2件(同4.0%)、取引停止処分は1件(同2.0%)だった。資本金別では、個人企業他含む1千万円未満が45件(同91.8%)、従業員数別では5人未満が39件(同79.5%)と小・零細企業が中心だった。
 都道府県別では、最多は大阪府の12件(前年10件)。次いで東京都(同7件)と神奈川県(同3件の各6件、埼玉県の4件(同1件)、千葉県(同2件)と兵庫県(同2件)の各3件で続く。

軽貨物運送業の倒産 年次推移

2023(令和5)年 軽貨物運送業 倒産状況(左上:原因別 右上:形態別 左下:資本金別 右下:従業員数別)

休廃業・解散も過去最多、倒産と休廃業・解散の合計は123件

 2023年に倒産以外で事業を停止した「休廃業・解散」は74件(前年比12.1%増)で、過去最多を5年連続で更新した。2012年までは倒産が多く、休廃業・解散は小康状態が続いていた。
 その後、相次ぐ新規参入で競合が激化するにつれ、市場競争から脱落し、休廃業・解散する事業者が増加してきた。ただ、コロナ禍では“巣ごもり需要”をあてにした安易な参入組も増え、ゼロゼロ融資をはじめとするコロナ関連の資金繰り支援策で一息ついた。だが、支援の縮小・終了とともに、倒産に加え、休廃業・解散も一気に増加した。
 休廃業・解散は、業歴5年未満が目立つ。判明分では、業歴5年未満は2020年が16.6%にすぎなかったが、2021年は31.2%、2022年は22.5%、2023年は40.5%と約4割まで上昇した。スタートアップ企業が、経営が軌道に乗らず倒産する前に早めに廃業を決断したとみられる。
 休廃業・解散と倒産の合算は、2021年78件、2022年102件、2023年123件と3年連続で過去最多を更新している。

軽貨物運送業 休廃業・解散、倒産件数 年次推移

業績は回復傾向も利益の低迷続く

 2022年10月期~2023年9月期(2023年)を起点に、5期連続で売上高と利益(最終利益)が比較可能な軽貨物運送業の269社を分析した。コロナ禍の影響が一部含まれる2020年は、売上高は1,661億900万円(前年比11.9%増)と在宅勤務などの定着で扱いが増加したようだ。
 一方、利益は34億9,800万円(同5.4%減)と減益で、運賃伸び悩みとコスト増が影響した。
 2021年は需要が一巡し、売上高1,576億6,800万円(同5.0%減)と減収に転じ、利益も27億9,800万円(同20.0%減)と落ち込んだ。2022年は経済活動の活発化で売上高は1,626億1,200万円(同3.1%増)と微増だった。ただ、利益は16億7,300万円(同40.2%減)と燃料費の高騰などで大幅減益につながった。
 2023年は、宅配など荷物量の増加に加え、一部で運賃上昇の流れもあり、売上高は1,796億1,200万円(10.4%増)と増収に転じた。利益も23億6,300万円(同41.2%増)と大幅増益を達成したが、コロナ禍前の2019年との比較では、売上高は21.0%増に対し、利益は36.1%減と大幅な減益にとどまった。こうした業績の厳しさも、倒産や休廃業・解散の増加につながったようだ。

軽貨物運送業の業績推移

売上高別

 軽貨物運送業の2023年売上高別では、最多が1億円以上5億円未満が114社(構成比42.3%)が最多で、1億円未満が98社(同36.4%)と続く。売上高5億円未満が全体の約8割(同78.8%)を占め、小・零細企業が業界の中心となっている。

軽貨物運送業 売上高別

対前年収益別

 2023年は増収増益が77社(構成比28.6%)と約3割が好調な決算だった。次いで、減収減益が50社(同18.5%)で、約2割が対照的に厳しい決算となり、業績が2極化していることがわかった。
 増収減益は37社(同13.7%)、減収増益は33社(同12.2%)と拮抗している。

軽貨物運送業 対前年収益別

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