• TSRデータインサイト

2023年「ラーメン店」の倒産、 休廃業が過去最多 倒産が45件、休廃業は29件、コストアップが重荷

~ 2023年(1-12月) 「ラーメン店の倒産動向」調査 ~


 国民食として人気の高いラーメン店の倒産、休廃業が加速している。2023年のラーメン店の倒産(負債1,000万円以上)は45件(前年比114.2%増)で、前年の2.1倍と大幅に増えた。2009年以降では、2013年の42件を超え、最多を記録した。また、休廃業・解散の動きも止まらない。2023年は29件(同31.8%増)で、2018年の23件を超え、2009年以降ではラーメン店と同じく最多を更新した。
 ラーメン店を含む飲食業界は、コロナ禍でゼロゼロ融資に加え、時短営業や休業に対する補償など、手厚い支援を受けてきた。だが、コロナ禍が落ち着き、経済活動が活発になってもコロナ禍前の客足が戻らず、さらに、食材や水道・光熱費の高騰、人手不足、人件費上昇などのコストアップが資金繰りを圧迫している。ラーメン価格の設定の基準が不透明で、値上げが客離れを促す恐れもあり、小・零細規模のラーメン店は苦戦が続いている。

 ラーメン店は大規模な店舗や調理設備への投資を必要とせず、少ない開業資金で参入しやすい。ただ、出店のハードルが低い分、同業との競合は激しく、SNSなどの口コミで人気が左右されやすく、足元が不安定な業種の一つでもある。
 倒産したラーメン店の資本金は、「1千万円未満」が40件(前年比135.2%増、構成比88.8%)、従業員数別も「5人未満」が39件(同143.7%増、同86.6%)と、小・零細規模が大半を占める。
 コロナ禍に続き、ロシアのウクライナ侵攻や円安進行などで、輸入小麦など原材料や食材価格、電気・ガスなどの光熱費、人件費などのコストが上昇し、収益は厳しい局面が続いている。
 さらに、アルバイトなどの人手不足も深刻で、コストアップに直結している。

 物価上昇の対抗策は価格転嫁が一番だが、消費者相手では価格上昇分のラーメン代の値上げは有名店でも容易ではない。ラーメンの適正価格は“味と納得感”と曖昧で、プライスリーダーがいない業界には“千円の壁”も立ちはだかっている。消費者相手の値上げは客離れと背中合わせなだけに、今後も他店との差別化を図れない小・零細規模のラーメン店の淘汰は続くとみられる。

※本調査は、日本産業分類の「ラーメン店」の2023年(1-12月)の倒産を集計、分析した。


ラーメン店の倒産、休廃業・解散は15年間で最多を記録

 2023年のラーメン店の「倒産」は、過去最多の45件(前年比114.2%増)で、2013年の42件を上回り、15年間で最多を更新した。「新型コロナウイルス」関連倒産は29件(前年比107.1%増、前年14件)で、前年から倍増した。
 また、「休廃業・解散」は29件(前年比31.8%増)で、2018年の23件を上回り、倒産と同じく15年間での最多を更新した。
 ラーメン店は、小・零細規模の事業者が多い。店舗維持や食材費のコストアップが資金繰りを圧迫するが、競合から値上げも難しいだけに、倒産や休廃業などの脱落が増勢をたどっている。

ラーメン店の倒産。休廃業・解散 年推移

【規模別(資本金・従業員数)】小・零細規模のラーメン店がほとんど

 資本金別は、「1千万円未満」が40件(前年比135.2%増、前年17件)で、ラーメン店倒産の約9割(構成比88.8%)を占めた。内訳は、「個人企業他」(前年比350.0%増、前年4件)と「1百万円以上5百万円未満」(同157.1%増、同7件)が各18件、「1百万円未満」(前年3件)と「5百万円以上1千万円未満」が各2件(同3件)。「5千万円以上」は発生がなかった(同1件)。
 従業員数別は、「10人未満」が41件(前年比105.0%増、構成比91.1%)で、「5人未満」が39件(前年比143.7%増)と、ラーメン店倒産の約9割(構成比86.6%)に達した。
 自治体や金融機関などの創業支援がある反面、手元資金が乏しく、経営体力が脆弱な小・零細規模のラーメン店が多い。食材や光熱費、人件費などコストアップが、ラーメン店の資金繰りを直撃している。

2023(令和5)年(1-12月)ラーメン店 資本金別倒産状況

【地区別】関東が3割を占める

 地区別は、北海道と四国を除く、7地区で発生した。
 最多が関東の14件(前年比250.0%増、前年4件)だった。以下、中国の8件(同100.0%増、同4件)、近畿の7件(同75.0%増、同4件)、中部の6件(同100.0%増、同3件)、東北と九州の各4件(同100.0%増、同2件)と続く。
 関東はラーメン店の店舗数が多く、同業者との競合も激しく、件数だけでなく、増加率も最大となった。

2023(令和5)年(1-12月)ラーメン店 地区別倒産状況

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ