• TSRデータインサイト

経営のプロ 「コンサル会社」 の倒産が急増 ~ コロナ禍での政策支援と「本物を求めるニーズ」のはざまで ~

 2023年は10月までに経営コンサル会社の倒産が過去最多の116件に達した。同期間(1-10月)で最多だった2009年(109件)を大幅に上回る。経営のプロである「コンサル会社」の倒産の増加は何を示唆するのか――。


倒産は過去最多ペース

 2023年1-10月の経営コンサルタント業の倒産は116件で、2022年同期(78件)の約1.5倍に急増し、過去最多を更新した。116件のうち、90件(構成比77.5%)が「販売不振」で、全体の約9割の104件(同89.6%)は負債1億円未満の小規模事業者だ。
 年間では、2023年の116件はすでに過去2番目の水準となり、このままのペースで推移すると、2009年の128件を抜いて、2023年は過去最多の記録を塗り替えそうだ。
 コンサル会社は、国内外のシンクタンクなどの政策系と戦略系、士業などの専門系など、多様化している。ここに、中小企業診断士やファイナンシャルプランナー、各業種の専門家など、個人や中小、大手のコンサル会社が入り乱れてしのぎを削る。最近は事業再生やM&A、不動産投資、IT、医療、人材育成なども増え、より細分化している。

コロナ支援が競合?

 コンサル会社は、基本的に企業からの依頼が中心だが、コロナ禍では顧客の中小・零細企業はコンサルよりも政府や自治体の各種支援金への依存度を高めた。その結果、本来は企業が苦境に直面し、受注が促進される時期に仕事が減少する皮肉な事態となった。こうして2020年1-10月96件、2021年同期73件、2022年同期78件と高止まりし、2023年同期は116件に急増している。
 また、感染防止で対面のコンサルティングが難しいなか、リモート対応に切り替えられず、新しい生活様式の広がりが業績不振を招く倒産もあった。



 創業時に多額の資金が要らず、資格も必須でないコンサル業は参入障壁が低いのが特徴だ。それだけに玉石混交ともいえるが、最近は高い専門知識を生かして業績を伸ばすコンサル会社もある。
 コロナ禍を契機に、世界情勢やIT技術、事業再生など、時代が求めるレベルが上がり、“本物”と“もどき”のシビアな選別も進む。政府や自治体の助成や補助金申請のアドバイスに注力するコンサル会社も少なくない。
 コンサル会社の熾烈な生き残り競争は、政策支援の動向にも左右されそうだ。

経営コンサルタント業の倒産(1-10月)推移


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年11月28日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

制御機器メーカーのIDEC(株)が早期退職募集を実施=国内従業員の300人が退職

制御機器メーカーのIDEC(株)(TSRコード:570011370、大阪府、東証プライム)がセカンドキャリア支援制度を実施し、今年6月までに国内従業員の約300人が退職していたことが東京商工リサーチの取材でわかった。

2

  • TSRデータインサイト

上場企業の「早期・希望退職」募集 1-8月で1万人超え 募集の大型化で前年同期比1.4倍増、前年1年間を上回る 

今年1月から8月31日までに判明した上場企業の「早期・希望退職」募集の対象人数が、1万人を超えた。募集の大型化が目立ち、3年ぶりに1万人を超えた2024年の年間募集人数1万9人をすでに上回った。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

4

  • TSRデータインサイト

分配金遅延の「みんなで大家さん」、出資者が返金求め訴訟提起へ

不動産投資商品「みんなで大家さん」の出資者への分配金が遅延している問題で、投資商品を扱う企業に対して5名の出資者が1億円の返還を求め、東京地裁に訴訟を提起する。出資者側の代理人事務所は、リンク総合法律事務所。

5

  • TSRデータインサイト

銀行員の年収、過去最高の653万3,000円 3メガ超えるトップはあおぞら銀行の906万円

国内銀行63行の2024年度の平均年間給与(以下、年収)は、653万3,000円(中央値639万1,000円)で、過去最高となった。前年度の633万1,000円(同627万5,000円)から、20万2,000円(3.1%増)増え、増加額は3年連続で最高を更新した。

TOPへ