• TSRデータインサイト

ガイアの民事再生にみる 「パチンコ業界の変化」 ~ ホール淘汰、 遊技台メーカーにも影響波及 ~

 パチンコホール大手(株)ガイア(TSR企業コード:320363295、東京都中央区)の民事再生(10月30日申請)が波紋を広げている。
 パチンコ業界には「購入した遊技台の支払いが滞ると次の購入ができなくなる商慣習がある」との話も伝わる。ガイアは10月2日に手形の不渡り後、遊技台などの新たな仕入ができなくなったと説明する。
 果たして、これは業界特有の不文律なのか。東京商工リサーチ(TSR)が調査した。

ガイアは不渡り後、店舗運営が大混乱

 ガイアは10月2日期日の遊技台メーカーへの手形決済ができず、1回目の不渡りを出した。この情報は、たちまち遊技台メーカーに広がり、TSRへの問い合わせが急増した。
 ガイアの「民事再生申立書」には不渡り後、遊技機など新たな仕入などができなくなり、一部のメーカーから遊技機などを店舗から引き上げる旨の通告を受け、店舗運営に大きな混乱が生じたと記載されている。
 一方、首都圏の有力パチンコホールの幹部によると、業界特有の慣例はほぼないと語る。通常の与信管理と同じように、遊技台メーカーは機歴(遊技機購入履歴)のほか、与信の低いパチンコホールには前払いや当月末払いを条件とするなど、取引条件のコントロールを中心にリスクに対応しているという。
 ガイアの手形不渡り後も、一部の遊技台メーカーは個別判断で取引を継続した。ただ、大量の遊技台を購入するガイアへの取引打ち切りを逡巡(しゅんじゅん)した遊技台メーカーも一部あった。

遊技台メーカーも苦戦

 版権や原材料の高騰で、販売数量の維持が難しくなっている遊技台メーカーは多い。また、パチンコホールは遊技人口の減少や遊技台高騰に対応するため遊技台の導入量を減らしている。結果、新台入替が減り、業績が悪化したパチンコホールが増え、遊技台メーカーの販売が落ち込む負の連鎖が続いている。
 有力遊技台メーカーは、機歴を背景に高騰する遊技台も販売できるが、中小メーカーは経営が厳しいパチンコホールにも販売せざるを得ない。これらが商慣習の見直しや与信管理の徹底を促す背景のようだ。
 遊技台メーカーの担当者は、「業界に対して金融機関からの風当たりが強くなることが予想される」と懸念を語る。パチンコ業界はガイアの民事再生でさらなる逆風に晒されそうだ。



 ガイアは資金難で遊技台メーカーとの関係が悪化した。しかし、一部遊技台メーカーは販売継続を模索するなど、古い商慣習にとらわれず販売先との取引維持に動く遊技台メーカーも増えている。

 パチンコ業界大手のガイアの倒産は、1社の問題だけではなく、パチンコホールや苦境に喘ぐ遊技台メーカーの立ち位置をも浮き彫りにしている。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年11月20日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

制御機器メーカーのIDEC(株)が早期退職募集を実施=国内従業員の300人が退職

制御機器メーカーのIDEC(株)(TSRコード:570011370、大阪府、東証プライム)がセカンドキャリア支援制度を実施し、今年6月までに国内従業員の約300人が退職していたことが東京商工リサーチの取材でわかった。

2

  • TSRデータインサイト

上場企業の「早期・希望退職」募集 1-8月で1万人超え 募集の大型化で前年同期比1.4倍増、前年1年間を上回る 

今年1月から8月31日までに判明した上場企業の「早期・希望退職」募集の対象人数が、1万人を超えた。募集の大型化が目立ち、3年ぶりに1万人を超えた2024年の年間募集人数1万9人をすでに上回った。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

4

  • TSRデータインサイト

分配金遅延の「みんなで大家さん」、出資者が返金求め訴訟提起へ

不動産投資商品「みんなで大家さん」の出資者への分配金が遅延している問題で、投資商品を扱う企業に対して5名の出資者が1億円の返還を求め、東京地裁に訴訟を提起する。出資者側の代理人事務所は、リンク総合法律事務所。

5

  • TSRデータインサイト

銀行員の年収、過去最高の653万3,000円 3メガ超えるトップはあおぞら銀行の906万円

国内銀行63行の2024年度の平均年間給与(以下、年収)は、653万3,000円(中央値639万1,000円)で、過去最高となった。前年度の633万1,000円(同627万5,000円)から、20万2,000円(3.1%増)増え、増加額は3年連続で最高を更新した。

TOPへ