• TSRデータインサイト

日本経営心理士協会 ・ 藤田耕司代表 単独インタビュー  ~ 心や感情の性質を理解すれば、経営が変わる ~

 一般社団法人日本経営心理士協会(TSR企業コード: 016276469、以下:協会)の藤田耕司・代表理事は、公認会計士と心理カウンセラーの二つの顔を持つ経営コンサルタントだ。協会が創設した「経営心理士」の講座には、これまでに数千名が受講した。
 東京商工リサーチ(TSR)は、経営の問題点を心理面から紐解く方法などを藤田代表理事に単独インタビューした。


―「経営心理士」とは

 人間の行動は心や感情が大きく影響する。経営者の悩みを聞くと、業種は様々でも内容は大体似ている。「部下が思うように動かない」、「売上がなかなか伸びない」、これがほとんどだ。このため、部下や顧客が思うように動いてくれたらほとんどの経営の問題は解決する。つまり、これらの人が思うように動かないから経営がうまくいかないのだ。人の行動を司るのは心や感情で、部下や顧客の心や感情の性質を先に理解することが重要だ。しかし、経営者に心の勉強をしているのかと聞いても「していない」と言う。
 松下幸之助氏や稲盛和夫氏など、偉大な経営者やリーダーをみると、実は心理学に沿ったやり方をしていることが多い。そこで心と感情の性質に基づいた経営をできるようになるための資格として「経営心理士」を作った。

―経営心理士の講座は

 経営心理士を取得するための経営心理士講座を開催しているが、講座を受ける目的は現場を変えることであり、そのための手段として講座を受け、知識を得る。しかし、知識を得ても現場が変わらなければ講座を受ける意味がない。
 そのため、現場と日常を変えることにコミットした講座となっており、感情を動かし、行動を変え、成果に繋がる実践的な手法を伝えている。現場にどう活かすかなど実践計画を立てる宿題も出し、受講者は売上が増えたり、離職者が減るなどの成果が出ている。


インタビューに応じる藤田耕司代表理事
インタビューに応じる藤田耕司代表理事

―経営心理士協会を開設したきっかけは

 19歳から心理学を学んでいた。一方で、大学に掲示してあった公認会計士のポスター「企業のドクター」のキャッチフレーズがかっこよく、公認会計士に憧れた。2004年に公認会計士試験に合格し、現在の有限責任監査法人トーマツに入社した。監査法人時代は、一般的な企業の監査業務に携わり、とても楽しかった。監査法人に勤めながら週末に異業種交流会も主催していた。
 独立は早期退職者の募集があったためで、まず会計事務所を始めた。そこで経営者から部下や顧客の悩みなどの心理を自分なりに体系化して話していたら、コンサルの依頼が次々と来るようになった。税務業務をやりながらコンサルも行い、次第にコンサルのウェイトが大きくなった。
 また、経営と心理に関するセミナーの依頼を受け、やってみたらすごく好評で参加者が増えた。そして一般社団法人を作って協会にして講座という形にした方が良いのではとアドバイスをもらい、2015年に一般社団法人日本経営心理士協会がスタートした。

―経営心理士の資格取得方法は

 経営心理士の資格を取得するには、日本経営心理士協会のコースを受講する必要がある。全部で7コースを終了し、課題をすべて提出できたら修了となり認定される。認定までにおよそ1年かかる。
 現在、経営心理士の資格を取得したのは約400名で、経営者か士業が大半だ。最近は会社員も増えてきている。

―最近多い経営者の悩みは

 多いのは人手不足だ。人手不足でない業界を探す方が難しく深刻だ。悩みの原因は明確で「離職」と「採用」にある。人間が根源的に抱く欲求が満たされているかどうかが鍵を握る。欲求を満たすマネジメントをして離職者を減らし、欲求が満たされるイメージを持ってもらえる募集広告を書くことで応募者は増やせる。
 人間は感情で動く。そして感情は欲求が満たされる時と満たされない時に動く。つまり感情の元となるのが欲求なので、欲求を理解した経営ができるかどうかで離職者の数が大きく変わる。採用の募集広告も同じで、欲求が満たされるイメージを提示し、感情を動かす必要がある。
 経営がうまい人は、人材採用の候補者に未来をみせて行動を促すのもうまい。入社した後の未来をどこまで魅力的に提示できるかで、応募の人数が変わってくる。

―コロナ禍で変化したことは

 オンライン、リモート、在宅勤務などビジネスモデルの変化が起きた。それにより企業の一体感が薄れ、改めてコミュニケーションは大事だということで見直すことが増えている。どのようにコミュニケーションを取るべきかという相談が多い。コロナ禍による業績悪化で資金繰りの相談も多いが、その前に売上をどう伸ばすかが重要だ。ビジネスモデルにもよるが、営業トーク一つで売上は変わる。また、借入やファンドからの資金調達も魅力的かつ説得力のある未来をどう掲示するかで資金の集まり方が大きく変わる。

―私的整理と破産の経営者の違いは

 業歴が長い企業はビジネスモデルが古くなっていることが多く、時代の流れに合ったビジネスモデルに変化させることが大事だ。
 経営者が「俺の言う通りにやれ」と逐一口を挟み過ぎる会社は、従業員は言われたことをやるだけで自分の頭で考え、自分で動くことができない。この状況で社長が弱くなると指示がなくなり動けず、再建が難しくなる。
 優秀な経営者は必要なことは丁寧に教え、その後は裁量を与えて従業員に考えさせる。そうやって地力のある社員が育った企業の再建はやりやすい。


 心の性質に沿った経営の仕方を伝え、多くの受講生が成果を出している経営心理士講座は多くのマスコミにも取り上げられ、省庁や大手企業でも導入されている。
 経営心理士は新たな経営の手法であると共に経営コンサルの手法としても注目され、経営者だけでなく士業や会社員にも広がり、混迷の時代の羅針盤になりつつある。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年11月8日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

第三者破産と告発、クリアースカイへの包囲網 ~ 「特別代理店」への注目も高まる ~

投資トラブルで揺れる合同会社クリアースカイ。4月7日に債権者から破産を申し立てられ、4月14日被害者弁護団から行政処分を求める告発を受けた 被害者弁護団は「クリアースカイと同様に特別代理店側にも破産申立や告発を行い責任を追及する」と語る。クリアースカイを巡る現状をまとめた

2

  • TSRデータインサイト

2025年度の「早期・希望退職」 は2万781人 約7割が「黒字リストラ」、2009年度以降で4番目の高水準

2025年度に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は46社(前年度51社)で、人数は2万781人と前年度(8,326人)の約2.5倍に急増したことがわかった。社数は前年度から約1割(9.8%減)減少したが、募集人数は2009年度以降で4番目の高水準となった。

3

  • TSRデータインサイト

ゴールデンウィーク明け、「退職代行サービス」の利用は慎重に

長かったゴールデンウィークが終わる。職場「復帰」を前に例年4月の新年度からGW明けにかけ、退職する人の話題が持ち上がる。この時期の退職代行サービスの利用も増加するという。4月に実施した「退職代行に関する企業向けアンケート調査」から利用するリスクの一端が浮き彫りになった

4

  • TSRデータインサイト

2025年度の「新聞販売店」倒産 過去最多の43件 止まらない部数減、人手不足・コスト上昇で逆風続く

2025年度の「新聞販売店」倒産は43件(前年度比43.3%増)で、2023年度の39件を抜き過去30年で最多を更新したことがわかった。 新聞の発行部数は、日本新聞協会によると2025年(10月時点)は約2,486万部(前年約2,661万部)で、2000年(約5,370万部)から半減(53.7%減)している。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度「医療・福祉事業」倒産、過去最多 ~ 健康と生活を支援する事業者の倒産急増 ~

生活に不可欠な医療機関や介護事業者の倒産が急増している。バブル経済1988年度(4-3月)以降の38年間で、2025年度は金融危機、リーマン・ショックを超える478件と最多を記録した。

TOPへ