• TSRデータインサイト

2023年3月期上場1,522社の「男性の育児休業取得率」は52.2%、⾦融・保険が最高の82.7%

~ 2023年3月期「男性の育児休業取得率」調査 ~


 2023年3月期決算の上場2,456社のうち、有価証券報告書に「男性の育児休業取得率」を記載した1,522社の平均取得率は、52.2%とほぼ半数にとどまった。取得率は産業別で差が大きく、最高は金融・保険業の82.7%、最低は卸売業の42.1%だった。
 男性の取得には、まだ本人や周囲の不慣れな対応からネガティブなイメージが付きまとう。だが、男性が育児に主体的に取り組む雇用環境の整備は時代の流れで、ようやく一歩を踏み出した。
2023年4月1日、男性の育児休業取得を促進するため、常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主は育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられた。また、金融庁は「企業内容等の開示に関する内閣府令」等を改正し、育児・介護休業法等に基づき男性の育児休業取得率などを公表する企業に対し、2023年3月決算から有価証券報告書での記載を求めた。
 育児休暇の取得率は、最多が「20.0%以上30.0%未満」の196社(構成比12.8%)。産業別では、最高が金融・保険業の82.7%、最低は卸売業の42.1%だった。
 女性の就業者が多い金融・保険業は育児休業への理解もあり、取得しやすいようだ。ただ、卸売業、サービス業(46.4%)、建設業(47.5%)、小売業(49.4%)の4産業は50.0%を下回る。
 コロナ禍からの回復期の人手不足で、育児休業の取得による対応が難しい事情が透けて見える。
 育児休業は、男女が協力して主体的に育児に取り組む目的だが、企業だけでなく、周囲の従業員の理解など、職場環境の整備がより重要になっている。

※本調査は東証など全証券取引所に株式上場する企業のうち、2023年3月期決算を対象に、有価証券報告書の「育児休業取得率」を集計した。
※産業・業種分類は証券コード協議会の定めに準じた。



男性の育児休業取得率は平均52.2%

 上場1,522社の男性育児休業の取得率(男性社員が育児休業や育児目的休暇を利用した人数÷配偶者が出産した人数)は、平均52.2%と半数を超えた。
 取得率は、最多が「20%以上30%未満」の196社(構成比12.8%)。以下、「10%未満」が189社(同12.4%)、「30.0%以上40.0%未満」が183社(同12.0%)と続く。配偶者の出産と育児休業取得の時期のズレで取得率が100.0%を超えるケースもあり、「100.0%以上」が155社(同10.1%)と1割あった。一方、該当者なしを含む取得率ゼロは142社(同9.3%)。
 育児休暇取得率の最高は、テストシステム、組込みボード開発のイノテック(東証プライム)の180.0%。次いで、福井銀行(同)177.3%、臨床検査薬大手の栄研化学(同)176.9%と続く。

育児休業取得率 産業別育児休暇取得率


人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ