• TSRデータインサイト

主要飲食料品メーカー200社の「価格改定・値上げ」調査  ~値上げの第2波 6月は50社超で約4,000品 累計は2万5,362品に 「調味料」が初のトップ~

 5月に社数、品目数ともに一服感の出た飲食料品の値上げが、6月、7月と再び増勢に転じることがわかった。主要飲食料品メーカー200社の2023年の出荷分で、価格改定の対象品目が年初から2万5,362品に達し、2万5,000品を超えた。価格改定を公表したメーカーは前回調査(4月、150社)から6社増加し、156社(構成比78.0%)と約8割に拡大。商品の分類別では、これまで首位だった加工食品(6,711品)を抜いて、調味料(6,945品)がトップになった。
 これまで値上げのピークは、品目数では2月、社数では4月だった。5月は、1月以来、4カ月ぶりに30社を切り、品目数も1,000品未満だった。だが、6月は51社、3,886品と2カ月ぶりに50社を超え、7月もすでに40社が3,356品を予定する。小麦粉やだしが原料の商品を中心に、値上げの波は下半期も収まりそうにない。

 東京商工リサーチ(TSR)は国内の主要飲食料品メーカー200社を対象に、2023年1月からの出荷・納品分で価格改定を公表した商品を調査した。
 200社のうち、2023年1月以降の出荷・納品分の値上げを公表したのは156社(構成比78.0%)で、対象品目数は2万5,362品に達し、前回調査(2万1,998品)から3,364品増えた。
 6月は、即席めんメーカー主要各社が値上げしたのに加え、海苔の不漁でのり製品大手各社が出荷価格を見直す。さらに、煮干し原料やサバ節などだし材料の不足から、麺つゆやだし醤油も同様に価格改定を予定しており、夏場の食卓には大きな打撃となる。7月は輸入小麦の売渡価格引き上げの影響で、パンメーカーも大手を中心に再値上げを予定しており、家計へのさらなる負担増が懸念されている。


【値上げ率】「10%以上20%未満」が最多

 値上げ率が判明した140社(内容量変更除く)のうち、各社の値上げ対象の商品から、代表的な商品の変動幅を集計した。
 値上げ率の最多は「10%以上20%未満」の85社(構成比60.7%)で、6割を占めた。次いで、「5%以上10%未満」が33社(同23.5%)で続く。
 「20%以上」は15社(同10.7%)で、卵加工品やだし・つゆ類などの原材料不足が深刻な食品のほか、缶コーヒーなど単価の低い商材が目立った。





【値上げ理由別】「原材料」の影響が最多

 値上げ対象の2万5,362品の理由別は、「原材料」が2万3,934品(構成比94.3%)でトップ。次いで、「資源・燃料」が2万1,304品(同83.9%)、「資材・包材」が1万6,509品(同65.0%)と続いた。

 構成比が前回から上昇したのは、「原材料」(93.6→94.3%)のみ。為替や燃料価格など、原材料以外の要因は一服感があったが、再び上昇局面に入りつつある。今後は、原材料価格の上昇による再値上げも増えるとみられ、値上げ商品の“二極化”が懸念される。





【分類別品目数】「調味料」が「加工食品」を抜きトップ


 価格改定の2万5,362品の分類別では、調味料(6,945品、構成比27.3%)が、加工食品(6,711品、同26.4%)を抜き、初のトップとなった。年初は練り物や缶詰、ハム・ソーセージなどの加工食品で発表が相次いだ。だが、調味料はソースやマヨネーズなどに加え、長引くだし原料不足の影響から、つゆ・たれ関連、だし醤油類も値上げが決定、品目数を押し上げた。調味料を巡る原材料事情は、昨年からだし原料の煮干しの不足が深刻なほか、カツオの世界相場の上昇、サバ節の流通量の減少などによる生産コストの上昇がある。

 また、鶏卵不足の解消は見込みが立たず、マヨネーズ類も年初に続く再値上げの可能性もある。






【分類別の値上げ率】「食用油」がトップ 


 分類別の値上げ率は、食用油が25.5%でトップ。オリーブオイルなど輸入品を中心に大幅な価格見直しを実施した。次いで、冷凍食品(14.4%)、飲料・酒(13.7%)、加工食品(13.2%)、麺類(12.7%)、調味料(12.3%)と続いた。

 健康食品(7.9%)、パン・小麦粉等(9.1%)、乳製品(9.5%)を除く8分類は、10%以上の値上げとなった。物流コストや、資材・包材価格の上昇などで値上げ率を押し上げていた。今後は、原材料高騰の長期化に伴う再値上げも見込まれ、10%超の価格見直しが1年に2回行われる商品も出てきそうだ。




 主要飲食料品メーカー200社は、2023年1月以降の出荷・納品分の価格改定が2万5,000品を超えた。月別の品目数は、ピークだった2月から4月は実施社数が3カ月連続で40社を超え、品目数も4,000品超で推移した。5月は4カ月ぶりに1,000品を下回ったものの、6月、7月は2カ月連続で40社、3,000品を超え、2度目のヤマ場を迎えている。
 分類別では、年初から春にかけ、缶詰、練り物、即席めんなどの加工食品がトップだったが、今回は初めて調味料がトップになった。マヨネーズ類に欠かせない卵やつゆ・たれの素になるだしなどの原材料不足が長引き、値上げの背中を押している。
 供給体制の維持には、値上げしか残されていない厳しい状況に見舞われている。調味料メーカーの中には、早くも寒い時期に需要ピークを迎える鍋つゆの値上げを公表した企業もあり、夏以降も家計への影響は予断を許さない状況となりそうだ。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「マレリグループ」国内取引先調査 ~国内の取引先2,942社、影響懸念~

経営不振が続いたマレリグループの持株会社マレリホールディングス(株)(TSRコード:022746064、さいたま市北区)が6月11日(日本時間)、米国でチャプター11を申請した。東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースからマレリグループの取引先数(重複除く)は国内2,942社あることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

2025年1-5月の「労働者派遣業」倒産53件 人材派遣が人手不足で年間最多ペースの可能性

深刻な人手不足が続くなか、 「労働者派遣業」の倒産がハイペースをたどっている。2025年5月の「労働者派遣業」倒産は、3月に並び今年最多の15件(前年同月比400.0%増)発生した。

3

  • TSRデータインサイト

「日産ショック」とマレリ、部品サプライチェーンの再編含み

マレリホールディングス(株)(TSRコード:022746064)と主要子会社は6月11日(日本時間)、チャプター11(連邦破産法第11条)を申請した。東京商工リサーチのデータベースによると、マレリグループの国内取引先は全国2,942社に及ぶ。

4

  • TSRデータインサイト

事前調整に明け暮れたマレリHDが再度破たん ~支援プレイヤーの場外乱闘の果て~

マレリHDを巡っては、準則型私的整理の一種である事業再生ADRでの再建を目指したが、海外金融機関の反対でとん挫し、前年の産業競争力強化法の改正で規定された民事再生の一部手続きを省略する簡易再生へ移行した。

5

  • TSRデータインサイト

(株)ピーエスフードサービス 保育園への食材納品がストップ=納入業者の資金繰り悪化で

保育園などに食材を販売している(株)ピーエスフードサービス(TSRコード:352395583、さいたま市見沼区)は納品が困難になっていることを自社ホームページで公表した。

TOPへ