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近代日本の基礎を築いた英傑に学ぶ指導者像

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公開日付:2016.10.07


 歴史学の時代区分で「近代」といえば、一般的な広義では、封建制時代の後を引き継いで、産業革命が起こり資本主義社会となって以降からを、狭義の日本史では、明治維新から太平洋戦争の終結までとするのが通説のようだが、本稿ではそれに拘らず、もう少し大局的な歴史観から、現代的な理念や社会体制を構築するに至る上で大きな影響を及ぼした時代として、その時期に活躍した英傑の功績を時系列に捉えて回顧し、混迷する現代日本と今後のあるべき姿を探求するご参考に供しよう。
 人類の社会生活態様は、原始的な狩猟・採取生活の自給自足で、弱肉強食、自己能力で必要な食糧を確保し得ない弱者は自然淘汰されたという状態から、漸次、人間としての特性である英知を活かし、実力と信望のあるリーダーを中心に結束・協力して富の拡大を図るという土地経済、農耕経済、物々交換経済、労働経済、楽市楽座のような商業経済、交易円滑化のために通貨を媒介とした貨幣経済、機械生産が可能となって生産革命が起こり、資金を持ち寄り大きな資本で大量生産を支援する資本主義経済、カネやモノの交易を促進する市場経済、これらを個々の努力より国家統制的に行う社会主義経済社会へと進展してきたが、この間が大雑把に見た人類の有史以来の原始、古代、中世代、近代への歩みといえる。
 「近代」になると、こういった経済・産業活動を自律的により自由で活発なものにしようということとなったが、同時に国際間の富の拡大競争も激化し、2次にわたる世界規模の大戦争という不幸な時期を体験することとなる。
 その反省に立って世界は概して平和を回復し、軍需産業に変わる民生産業が活発になり、物質文明や科学技術の急速な進歩を見たのが「現代」であるが、その行き過ぎから、地球自然の破壊、人類有史以来初めての供給>需要という需給不均衡などの弊害が露顕するに至って、環境が大きく様変わりし、世界秩序が再び大混乱することになり、それを温故知新でどう改め、再構築するかが全世界・全人類の今後の「新時代」の課題となっている。

(1)織田信長

 織田信長が活躍した時代は、歴史学的通説の近代より少し早いが、わが国近代化に影響を及ぼす発想の持ち主であったという面から、敢えて最初に採り上げることとした。
 経済戦国時代の乱世ともいえる近年、歴史上の名将への関心が今再び高まっているが、その中でも常にベスト5以内にランクされるほど人気があり、しかも女性のファンが多いのが織田信長である。
 彼はその奇抜な服装や特異な言動から「呆気(うつけ)者」と俗称され、短気で直情径行、独断専行、厳格過ぎるほどの信賞必罰、足利幕府を滅ぼすなどで仇も多く、だから腹心の部下明智光秀に寝首をかかれ、志半ばで早死にしたといわれるが、実は奇妙な服装や神出鬼没の行動、小よく大を制した奇襲戦法なども、切羽詰っての苦肉の策ではなく、それぞれの時機や場面で、自分の力量や置かれた位置などを知った上で、それに応じた緩急自在の適切な対応策をとったのであり、それを可能としたのは、平素からの十分な自分自身が実際に現場に臨んでの体感的で周到な事前調査、当時としては希少な存在の外国人宣教師に積極的に接見するなど西欧文明と接する窓口を開き、内外の事情に精通し視野を広めたので、過去の因習や固定観念に執着しない大胆な発想と思考、アイデアと先見性があり、楽市楽座など、土地・コメ経済から商業経済への移行の先鞭をつけ、厳格な身分・階級制の封建時代に、氏素性や出自、農民・平民の区別なく、才能や実力のある者を見抜いて引き立て、適材・適所配置で活用し、相手の警戒を緩め油断を誘う偽装の言動や謀略など、すべて計算し尽くした上での戦略的アプローチや臨機応変の戦術によるものであり、晩年、本能寺の変で人生でただ一度、最初で最後に敗れた際には、自分の驕りや誤りを素直に認め、誰も恨まず、潔く責任を問って自刃して果てたのである。
 確かに激しい感情を表に顕にし、言動も荒っぽいが、陰湿さがなく、率直でわかり易い点が庶民の指示と信頼を得、近年の大志と信を持たず柔軟不断な男性と比して、男らしく、はっきり、さっぱりとした、決断の速さと行動実現力が女性の人気を博しているのであろう。
 激動と混迷の乱世には、従来の時流を断ち切り抜本的に改めることが必要であり、それには流れに逆らう一本の杭のように、当面の抵抗や苦難、混乱、不安や不満はつきものだが、そのためには順境・平時の「大過なく無難な調整型」のリーダーとは異なる、織田信長のようなタイプ、すなわち抵抗や苦難を承知で受けて立ち、乗り越える、強い大志と信念、的確な先見性、勇猛果敢さ、独創的なアイデア、全ての分野に良い改革はあり得ず、犠牲や抑制を強いられる分野が生じるが、その善・悪、功・罪を隠さず率直に公明にして理解を求め、万民に一抹の可能性を感じさせ未来に夢を抱かせる説得力、独断専行で多少は強引で荒っぽくても、言行一致で実現させ、行動の成果を体感せしめ、あいつを信じて従って行けば何とかしてくれそうだというカリスマ性を有するリーダーが期待される。
 近年の政治家でこれに比較的に似ていたのは田中角栄元首相、財界ではスーパーダイエーの創業者で流通革命の先駆者中内功などであり、安倍現総理もそれを目ざして頑張っているようだが、マイナス面を公明にせずに、不都合なことはまやかしの表現で秘すという、正義面の裏で陰湿、狡猾さを感じさせる点が不信・不安の念を抱かせている要因となっているようである。

(2)徳川家康

 戦乱の世を終結させて天下を統一し、永世平和で、身分階級に拘らない実力主義で合理的な活気のある日本に国家的改造を目ざした織田信長が没した後に、その志を引き継いで、一応の天下平定を成し遂げたのは豊臣秀吉だが、確かに秀吉には、織田信長以上に彼なりに優れた機知や才覚、立身出生の要領の良さ、自己演出とPRの巧みさ、如才のない人の手なづけ、お金儲けとお金使いの上手さ、他から学びそれを活用する能力などを有していたが、これらは、身近で織田信長の薫陶と影響を受け、その治世のやり方を踏襲し、見習い、モデルやヒントとしてアレンジしいたものが多かったことと、晩年の驕りや焦りからの失政、猜疑心からの有能者の敬遠、血族世襲に拘り、溺愛で甘やかし、有能な後継者の育成をなしえなかったマイナス面もあったので、本稿では割愛させていただき、永年続いた戦国時代を完全に終結させ、その集大成の成果を遺した存在として徳川家康を推挙することとした。
 これまでもさまざまな分野や機会で「好ましいリーダー像は誰か?」といえば、常に戦国時代の三大名将の誰かの名が必ず挙がり、それでは「あなたはどのタイプか?」といわれると、鶯が鳴かないなら「殺してしまえ」の勇猛・剛毅な信長型、「鳴かせてみよう」の頓知・才覚の秀吉型、「鳴くまで待とう」の忍耐・深慮の家康型とそれぞれなりのファンがいて分れる
。  この点に関しては中国の古典でも、例えば孔子の論語で、「智・勇・仁・信・厳」の器量人であるべきだとされているが、これとても、当時の権力者に召し抱えられ、御用学者として出世し、安定した地位と権威を得たいとの意図が秘められていたし、あくまでも皇帝としての理想像を説いたものであり、現実にそういった能力を全て具備し、実践して成功した最高指導者は存在せず、傑物一代限りで終わった例が多く、「易姓革命」という美名の下で権力闘争やクーデターが繰り返され続け、それが現在の中国にまで引き継がれているのというのが実情ではなかろうか。
 徳川家康はこれをもう少し端的に、「文・武・財・心の4器量」、つまり「文」とは文化・文学的素養、治世・業務管理能力、「武」とは武闘力、国家防衛への配慮、「財」とは経済意識、資金力とその運用管理能力、金融財税政策力、「心」とは正しい理念や、道徳・倫理観、精神的修養の4大器量のバランス感覚こそが肝要と述べて自己を戒め、実践の努力をしたので、結局、戦乱の世の完全終結を達成し、江戸幕政260年余の太平の世を開き、関東に移封された当初は原野と小さな村落でしかなく寂しかった江戸を、人口、治世でも世界第一の秩序正しい大都市、日本の首都として繁栄させ、近代日本への転換の土壌を築いた。  徳川家康の治世から学ぶべき要項を列挙すると、
  ①服部半蔵やお庭番などを重用した情報収集力と、豊富な情報量、その有効活用力。
  ②これに基づく的確な現状認識と、時流の先の先まで読み取る、優れた先見性と鋭い洞察力、適切な判断と対応能力。
  ③神経質ともいえるほどの用心深さ、慎重な防衛姿勢と配慮。
  ④功を焦らず機が熟すのを待つ辛抱強さと忍耐力、粘り腰。
  ⑤守勢と積極攻勢型を交互に取り混ぜ、三代目毎に一人という有能直系後継人材の育成。
  ⑥文・武両面それぞれの有能な腹心補佐役の養成と信頼活用はするも、丸投げの任せきりでなく、最終決定は厳然と自己裁断をしたこと。
  ⑦国内外の事情に精通し、西欧の優れた技術や武器、制度は見習い導入はするが、日本的な良いことも継承し、独自なりのアレンジをしての活用を重視したこと。
  ⑧もう一方、風水などの自然の摂理や東洋の儒教・仏教哲学思想も尊重し、漢方医療などを実践、健康管理には細心の留意をしたこと。健康はトップに立つものにとって必須の要件であり、最大の資本である。
  ⑨自然の気象や地形に逆らわず、それを巧みに活かした城や街づくりを工夫し、水路と陸路を制するものが世の中を支配するを実践したこと。
  ⑩防火や防災、防犯など、社会秩序の遵守などについて、武士層だけでなく庶民にまで参加と協力、義務・責任も負わせ、参画意欲を高めたこと。
  ⑪治にいて乱を忘れず、尚武の気風や勤倹・節約を奨励したこと。
  ⑫百年の計にも通じる立派な家訓を遺し、それえを商家にまで普及させ、近代的経済や経営発展の精神的基礎形成に役立てたこと。
などである。

(3)近代日本建設の財界リーダー 渋沢栄一

 広義の日本歴史での近代化は明治維新以降とされ、この時期に活躍した英傑としては通常、坂本竜馬、西郷隆盛、伊藤博文、木戸孝允などとされる。
 しかし彼らは、幕末期には本来、倒幕・攘夷、開国反対の思想の持ち主であって、日本の近代化より、所詮は、尊王を盾に、徳川政権を倒し政権交代を迫った権力闘争クーデターの首謀者ともいえる。
 それが明治維新後の欧米視察で進歩的な欧米の文明に接して大きなカルチャーショックを受けてから急に変節し、欧米の先進的制度や技術導入の必要を主張するように変わり、これを見習おうとしたので、表面的な生活態様だけを真似た西洋気触れといった面が多分にあるので、日本近代化のう功労者としては些か疑問である。
 明治維新後のわが国産業界の近代化を主導した功績者としては、なんといっても渋沢栄一であろう。彼も欧米使節団の一員であったが、彼は表面的な欧米流の物真似や制度を取り入れ魂入れずといった似非近代化、西洋気触れにはならず、その自由・民主的で合理的な運営お理念や手法の真髄を正しく学び、彼の終生のモットーである「右手に算盤(経済性の追求)、左手に論語(道徳律の保持)」という理念をもって和魂洋才の見事な融合を図り、欧米の進歩的で見習うべき良い思想や手法、例えば、数値的事実に科学的・効率的経営、目標による計画的・戦略的経営、マーケティング・マネージメント、経営と資本の分離、簿記会計システムなどを謙虚に学んで積極的に採用する一方で、わが国の伝統的な良い風習や優れた事業経営の理念や制度、例えば、事業経営の真の目的は、株主や経営者の自己利益より、国家・地域社会発展、顧客の便益向上への貢献にあること、道徳・倫理観を基礎においた経済効率性の追求、堅実経営で信用・誠実を重んじること、個人よりチームワークと組織全体のことを優先して考えること、顧客第一主義のおもてなしの心、それを形で表す礼儀作法、家族主義的経営感覚で従業員を我が子と考え、大切に扱い育てる全人格的躾教育を自社内で実施すること、暖簾分けなどで永年勤続社員の老後の自立を支援すること、ジョブローテーションで仕事の互換性や組織の若返り、マンネリ防止、活性化を図ること、勤勉・節約の奨励、投機・賭博・淫乱・浪費は慎むことなどは温存・継承し、自らそれを率先垂範した。
 渋沢栄一翁は、幕末から昭和初期まで、政・官・財界を体験し、近代日本産業の根幹を成し、現在までも永続・発展し続け、日本を代表する有名大企業の多くは、彼が相溶に関係し、彼の息がかかり魂が刷り込まれている。
 このように考察してみると、「勇将・猛将でも知将でなくば、真の名将たり得ず」であり、そう簡単に何型こそが最適な最高指導者像であるなどと単純に割りきった結論を得ることは困難であり、またそれは正しく好ましいことでもない。要は、平時と乱時など、それぞれの時代や場面、立場で資質要件は異なるので、その時代や環境に適応し得る者こそが、その時代や環境下での最適任指導者であると言うことになろう。


著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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