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ビジネス実務に役立つ歴史から学ぶ智恵

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公開日付:2016.09.23

 

(1)学は通のためならず

 先賢の名言に「学は通のためならず、窮して心苦しまず、憂いて心衰えざるがためなり」とある。
 「学」は学問、「通」は通用すること、つまりこの名言の真意は、「学問は修めることの真の目的は、自分が世の中に出て自立し人並みに生きる上で必要な知識や能力を身につけたり、社会生活に適応出きる常識的な能力を身につけるため、立派な大学に入学し、一流大企業に就職できて、良い伴侶を得るため、ビジネス社会でリストラの対象とならず生き残るため、他者から認められて賞賛されたり、出世して地位を得たり有名になるため、お金儲けをして安楽で贅沢な暮らしをするためなどといった自己本位の考え方によることだけが、その目的の全てであってはならない。もちろん正直なところ、こういった実社会で通用するための最低限必要な知能を身につけることや、人並み以上の優越的な地位や生活をしたいという願望を持つことも必要であり、これを全て否定するものではないが、学習の本当の目的をもう少し大きな見地で考えると、逆境に直面して困窮したときに、学習の意欲をなくしたり、対応策を見出せないで迷い苦しんだり、進路を見誤ったりすることなく、また、平時・順境にあっても傲慢にならず、将来のことや万一の逆境のことを謙虚に深慮して、心配したり、慎重になることも重要だが、それでいて自信喪失で消極的にならず、我に策ありとの自信をもって、正しい認識・判断・決断・断行が出来る実践的な知識や技能を、机上の活字学問だけでなく、楽しく実践しつつ学びつつ、実学体験学習で体得し、自己のためだけでなく、社会・国家の繁栄や周囲の他者の役に立つような有益な存在の人物となるための、一生涯を通じての全人格的修養を目的とすべきだ」ということである。
 英語で教育は「Education」で、個々人の潜在能力を見出して最大限に導き出すこと、学習は「Schooling」でラテン語のスコーレを語源とし、余暇の有効活用を意味するから、「学は三余(冬・夜・雨の時期)を以って為すべし」といった格言もあり、近年推奨されるようになった生涯学習では、定年退職老後の暇つぶし道楽趣味の習得と勘違いされているようだが、激動の時代にあって、時局や環境の変化に取り残されないような一生涯の幅広い分野の学習の継続や、常に物事への新鮮な興味をもって「なぜ?」と関心を持って質問し、楽しみながら意識して学ぶ「樂問」を心がけることが脳の活性化や老化予防にも有効で重要だから推奨されているのだ。

(2)自然と歴史は最も良き教科書

 フランスの教育思想ルソーは「自然と歴史は最も良き教育者であり教科書である」と示唆しているが、お金や暇があるから学習できる、それがないから学習できないというものではなく、むしろ「切実な必要は発明の母、厳しい自然環境や貧苦、逆境、失敗体験は人間成長の父」とも言え、それでこそ、ただ一人だけでは立派に育たない人間が、良きライバルを得たり、多くの人と交わって相互刺激しあい、{1+1=人}となって、人も企業も大きく、逞しく、賢く、立派に育つというものであり、このことは経済活動やビジネスの分野においても同様に通じるものであり、今次のオリンピックでも、ジャマイカの貧民窟で生まれ育った少年が、裸足で走ることで鍛えられ、陸上競技で金メダルを3連覇で獲得するに至ったように、多くの実例がそれを立証している。
 また、「学ぶ」は「まねぶ(真似ること)」が訛ったものであり、良いと思ったことを真似ることから始まるが、ただそのままを漫然と真似るだけでなく、先ずは基本を忠実に守って見習い、学びとり(守)、次にそれを突き破り、アレンジした応用活用法を考え(破)、それが十分にこなせるようになってから、初めてそれを突き放して(離)時流の変化に適応できるものや自己の持ち味・特性を活かす独特なものを創造するといった「守・破・離の原則」の手順を踏むことが肝要である。
 このように、学校や室内に閉じこもってパソコンや書物の活字学問、理屈は良く解らなくても、丸暗記的な詰め込み学習を強制したり、道聴塗説をすることよりも、むしろ日常、外に出歩いて自然や多くの人と接して会話をしながらも、疑問に思ったことには質問したり、歩くのもただ何気なくぶらぶら歩きで映像的に表面現象を「見る」だけでなく、ちょっと意識して観察する「観る」、物事の本質を看破する「看る」、表面現象の原因や問題点を診察する「診る」、過去の歴史や流れの奥底に潜む未来の予兆を感じ取り見抜き洞察する「炯眼」を心がければ、自分の周囲にある見るもの、聞くこと、触れるものなど、全てが貴重な情報や知識として身につき、人間成長の栄養素となるであろうし、たとえ好ましからざる人と接しても、自分はそうなってはならないと悟れば、反面教師として学ぶことが出来よう。

(3)日本は歴史認識に欠けると言われるが?

 中国や韓国は、わが国の首相や天皇までもが、過去の歴史を振り返って、ある限られた時期の不当な行為を認め、反省し、真摯に謝罪をしても、日本が非核武装の平和志向国家であり、決して武力による先制攻撃を仕掛けてこないことを十分承知し、それを認知しながらも、あえて最初から全く受容しようとしない姿勢を取り、外交上の駆け引きや切り札、資金援助の搾取策として悪用したり、日本を仮装敵国に仕立て上げて誤った危機感を煽り立てて、自国の内政に不満を抱く民衆の離反を抑制し、その目を外交問題の方に逸らし、国家統制を強め政権維持を図ろうとする卑劣なこれらの国は、いつまでも執念深く、過去のある時期の悪の面だけを誇張して喧伝し、何かあると「日本は未だに過去の歴史認識がなく、謝罪をしない」と繰り返し、わが国が何度も、過去に拘るより水に流して、前向きな将来を建設的に話し合おうと申し入れても、聞き入れようとしない。
 しかし彼らが日本の不当性を主張する過去の歴史は、自国の都合が良い時期の特異な事件だけを増幅して採り上げ、自国の不都合な点には触れさせようとしないし、中立的な国際司法機関の仲介・裁定さえも、関係なしと無視するという傲慢・不遜さである。
 一方、日本の外交折衝も、相手の反応やアメリカの顔色を覗い遠慮がちで、この点の不当で不公平・不公正さを鋭く突いて反論しようとしない弱腰ではなかろうか。  日本国や日本の国民は、世界で唯一の、必要以上の非戦闘員や施設の無差別大量虐殺を禁じた国際戦闘法違反ともいえる核兵器の使用による攻撃を受けた被爆の体験国であり、伝統のある日本の歴史に誇りを持ち、国内のみならず、世界の恒久平和を願う心はどの国にも負けないほど強く、第2次世界大戦当時のある数年間の短い時期だけは軍部の情報統制が厳しくて正しい情報が知らされなかった時期はあったが、それとても戦後半世紀を経て、その真相が明らかにされつつあり、今では言論も自由、情報量も多いから、歴史に対する関心や正しい知識を持っており、決して「歴史認識がない」といわれることは事実に反する。
 それこそ中国・韓国の方が、日本に対する正しい認識不足であるといえよう。
 ただしわが国としても、歴史認識はあっても、過去の歴史から学ぶことが不十分であったということは率直に認め、だから「愚か者は失敗に懲りず、同じような過ちを繰り返し、凡人は失敗を体験して初めて気づき、賢者は過去の歴史から未萌に危機を察知し回避する」ということを忘れがちであることは謙虚に反省し、改める余地は大いにあろう。
 歴史を良き教科書として活かすには、ただ過去の良いことだけを懐かしむノスタルジアに止まらず、その真実や善悪の両面を、冷静に客観的に理解し、伝統的な良い面は学んで引継ぎ、改めるべきは改め、将来の健全な発展に活かしてこそ意義がある。

(4)歴史から学び、正しく活用するための基本的留意要項

  

  1. 歴史は、ある特異な時期だけに拘ってデジタル的に「点」で捉えず、長期間のアナログ的連続性で時系列に「線」、「面」で捉えること。
  2. 自己主体の見方でなく、相手国や周辺の諸般の事情、時代背景なども含めた多方面の分野や視点から多角的に捉え双方向の複眼指向で理解すること。
    たとえば政府が公表する景気判断資料でも、先行・一致・遅行指標などと最低でも合計30~35項目で分析・判断しているのである。
  3. 美化されがちな空想的神話や口承伝説を鵜呑みにすることなく、あくまでも古文書の記録や遺跡などの裏づけに基づき、科学的・合理的・理性的に事実を正確に捉えて理解・判断すること。
  4. その古文書ですら、後世に引き継ぎ残されている歴史的文献の多くは、敗者側の正義や事実の歴史は否定・抹殺されて残されていないケースが多く、勝者側の一方的な、都合よく修飾・誇張され美化された大儀や功績だけが塗り替えられて伝え遺されている場合がほとんどといえるので、この点を斟酌して洗い直して理解・評価・判断する必要がある。
    たとえば、判官贔屓の潜在心理から、兄頼朝から妬まれ、難癖をつけて殺された悲劇のヒロイン源義経は、気品のある白面の美青年で、文武両道に長けた戦略家ともて囃されいるが、これは勝者迎合の源氏側視点で後世に当事者でなかった者による記述文献が主体であるが、敗者となった平家側記録では、小太りの出っ歯で、独断専行の奇襲攻撃が得意な戦術面では有能であったかもしれないが、政略や戦略、内政・組織統治力の面では兄に数段劣ると酷評されている。
    また、徳川七代将軍家重の小姓から側用人、幕府老中、相良城主へと大出世を果たした田沼意次は、その立場を利用して諸大名から賄賂を取り、そのお金の力でのし上がった権力志向者とされているが、実際には積極的な経済政策通であり、領民の評判は非常に良く、むしろ要領の良い出生主義者としては、名園六義園を側用人時代に築いた柳澤吉保の方ではなかろうか。
    腰が重くて辛抱強く、人を許す度量を持ち、それ故に最後に全国完全平定し以降天下泰平260年の江戸時代の基礎を築き上げたのが徳川家康と讃えられているが、実像は、案外短気で小心だったから、敗戦逃亡時には馬上で失禁したり、常に爪を噛み貧乏揺すりをする癖があり、慎重さの反面で猜疑心が非常に強く、自分に反抗した者には、執念深く、陰湿で冷徹な仕返しをするという一面も持っていたという。
  5. 近年、イスラム国と名乗る集団が台頭し、最近では中東地区のみならず世界中で無差別テロ行為を展開し、恐怖を撒き散らしたり、中国が東アジアや東南アジアの小島の領海権を突如一方的に主張し、歴史的にも実効支配してきた自国の領地であったとするなどで、世界秩序が大混乱しているが、ここでいう歴史とは、いつからのことなのか、何億年前からの人類の有史以来なのか、地質学的にカンブリア期と称される最古世代からか、まだ国家という概念がなく、各地域の豪族が力任せに縄張りの領地を主張し、その実力者が王や皇帝と自ら名乗って支配した古生代からなのか、国家という概念が生まれ、その国が主権を行使して統治するようになった中世になってからか、国際連合のような世界秩序を統制する機構が整った近世になってからのことか、第一次や第二次世界大戦後の現代のことをいうのかなど、実に曖昧で明確な定義はない。
    この辺りから明確に規定しないと、当事両国間の歴史観念の差から生じる溝はいつまでたっても埋められない。
    また領土や領海、実効支配地域などに関しても、明確で厳格な規定が曖昧であり、それで生じた国際間の紛争を仲裁、判定する国際司法機関の権限が弱く、一方の国が領有を主張し、関係相手国が異論を唱え、国際裁定を訴えても、どちらかがその話し合いの呼び出しに応じなければ裁判は開かれないとか、裁定結果に関する履行強制行使権がないなどといった状態では、結局は強引に実質実力行使、支配した国が勝ち得をするということになってしまう。
    現在の世界各地で起きている民族の対立や領有権を巡る紛争の多くは、歴史的には、キリスト教の西欧諸国が、イスラム教を信奉するアラブ・アフリカ諸国や、中南米諸国に勢力圏を拡大し、植民地化したことに端を発するものが多いので、歴史観といった場合、少なくともこの時点から見直さないと、根本的な解決策は見出せず、第2次世界大戦の日本敗戦後の歴史だけで云々することは不適切であろう。
    なぜなら、第2次世界大戦の直接発生原因は日本のハワイ奇襲攻撃にあったと戦後に戦勝国主体で開かれた極東裁判で決め付けられたが、その真因や遠因は、欧米諸国の世界覇権争い、アジア諸国の植民化の脅威が日本にも及ぶことを予防するための窮余の策であったともいえるし、戦後の曖昧な領有域の設定問題は、日本の意思というより、占領軍の支配下で欧米対共産主義国の冷戦対策の思惑で処理され嫌いがあるからである。
    もう少し長いスパンで歴史を振りかえると、第一次世界大戦前から中国は既に一部が欧州諸国の植民地化侵略を受けていたし、それ以前の中国は、常に国内争乱が相次ぎ、国力的にも、とても洋上の離れ小島の開発や管理まで手が回らなかったであろうし、更にその前の時代には、中国の方が、日本も含めたアジア近隣諸国に高圧的な朝貢外交を強制するなど、覇権支配の野望を抱き続けてきたのではないか。だから欧・米・露には打算的で文句を言わないのに、おとなしい日本だけを仮装敵国視し、再軍国主義化の危機となじるのは筋が通らないのではなかろうか。
    地球規模の危機やグローバル化、国際協調、全民族の共生・共存が叫ばれるようになった現代、このあたりの整理が国際的にも進まないと、歴史問題を巡る紛争は根本的に解消し難いであろう。

(5)歴史に学ぶビジネスに役立つ智恵

 歴史的推移や先賢の足跡からは学ぶべきことが多く、ビジネスに役立つ智恵やヒントを得ることが出来るが、以下、それを列挙してまとめに代えておこう。

 
  1. 歴史の変遷を辿ると、その変動には、超長期・長期・中期・短期といった一定の周期的波動があり、そういった環境変化の波をうまく捉えたり乗り越える適切な対応をしてこそ、企業経営では危機を予防したり、早めに回避したり、飛躍のチャンスとすることが可能となり、存続・成長・発展が期待しえる。
  2. 歴史のうねりには、成長・上昇期、成熟・成長鈍化期、頂上を過ぎた下降・衰退期、混乱・混迷の雌伏期があり、この時流の波の流れに逆らっては、企業も含めた万物は生き難いので、強気と慎重になるべき時といいったアクセントをつけたビジネス展開が重要であり、生者必滅、物極必反の原則に逆らい、More and More、いけいけどんどん一点張りばかりの事業経営では危険であるから、常に環境変化に適応する新陳代謝や進化の努力は忘れてはならない。20年ごとの伊勢神宮の遷宮行事もこの点を弁えての英知といえよう。
  3. 一度頂点に登りつめてから急転直下に下降衰退し、主役を追われた国家や事業が、再び同じ手法や事業で首座に帰り咲いた例はないと知ろう。だから戦いの勝利は7分目程度で収めるのが得策とされるのである。
  4. 暴力や非合法的手段(クーデター)で奪い取った地位は、いずれまた、同じような手段で奪われてきた。
  5. わが国は創業以来100年以上という歴史の古い企業が世界で最も多い国であるが、そういった事業は、ただ古い伝統を守り存在しているだけでは、やがて老舗が「死に店」となって没落・消滅してしまう。老舗の健全発展長寿の秘訣は、①伝統の良さを引き継ぎ生かす一方で、常に新感覚や技術の注入をしていること、②但し本体の幹に合わない接木での多角化経営やリフレッシュではなく、幹にあった枝葉という関連事業の接木でのリフレッシュであること、③三代ごとに一度の中興人材の育成で、マンネリ化と子樂・孫貧乏の予防、④低価格競争でなく高品質・高付加価値での勝利、外観の大きさより事業内容でのトップを重視していることなどである。
  6. 著者プロフィール

    経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

    幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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