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知っておくべき好ましい経済発展の原則

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公開日付:2016.07.15

 消費税率10%への引き上げが、当初の本年に必ず実施するとしてきた公約に反して2年半先の平成29年秋まで見送られることとなり、これまでの安倍政権、とりわけアベノミクスの成果の是非が7月の参議院議員選挙での争点になろうとしている。
 そこで本稿では、国民の大多数を占める一般民衆の誰でもが、政治的配慮が加味された都合の良い政府の公表指標値や権力追従志向の強いマスコミ論調に影響され、無定見に勝ち馬に乗ろうと付和雷同することなく、これを冷静に正しく評価・判断をし、我々の良き代弁者を選出するためのご参考までに、改めて好ましい経済発展の原理について、極めて平易に述べることとしよう。
 この種の政治・経済的実績の評価は、当面の対応策か将来への布石も含めたものか、マクロ的な大局的な鳥の目とミクロ的な身近な体感的虫の目視点のどちらに重点を置くか、民衆の生活実態か国家経済を牽引するといわれる大企業の業況に焦点を当てるか、総体の単純平均値、加重平均値、中位数、最頻値(並み数)のいずれを重視するかなどで、受け止め方も評価も、判断も変わってこよう。
 また、如何に著名で有能な評論家や学者の論評であっても、それぞれなりの置かれた立場上から、自分が所属する分野に関しては多少弁護したくなるという情が働き、例えば証券業界に籍を置く評論家は、常に株価の好調さを期待し、その消極的な下落の危険性予告表明を避けたがる心理的傾向が入り込む余地があろうことは否めないであろうから、その点を考慮して受け止める必要もある。
 しかし筆者が予てから強調していることであるが、「道に迷った時は原点回帰、歴史と自然は最も良き教科書」であり、「真理は不変」であるから、「過去の貴重な失敗や成功体験から培ってきた原理原則は尊等すべき」であり、これは正しい経済実態の捉え方や評価にも通じることである。
 現在の人類は、好む好まざるに係わらず経済社会の中で生活し、経済知識なくしてはビジネス活動も日常の家庭生活も成り立たないし、特に昨今は、地獄の沙汰も金次第、お金や所得に対する執着が強く、拝金主義であるとまで言われるようになっているが、その割には近年、大学の経済学部志向者が減少傾向を示しつつある。
 そこで学生に「経済とは何をどうすること、経済という言葉を聞いての印象や感想は?」と聞くと、「お金儲けのこと」との返答が一番多く、「お金が欲しく、お金儲けに関心があるか?」との質問には「その通り」と答える。
 では「なぜ経済学部を志向しようと思わないのか?」と重ねて聞くと、「難しくてなじめず、頭の良い者が学ぶ専門的な学問であり、われわれ凡人には関係がない」と応え、「経済とは、それは目的か手段なのか…?」という質問には、曖昧な答えしか返ってこない。
 この一端の責任は、いきなり難しい専門用語で一方的な理論だけの講義に終始し、お前たちはこんなことも知らないのかといった上から目線と態度で接する大学側の教育姿勢にも大いに問題があり、筆者自身も十分に留意しなければならないことと自戒し、出来るだけ平易な言葉と豊富な身近な事例での説明をと心がけているつもりであるが、そうすると今度は、学生志向を主体としない学界からはアカデミックな講義でないと評されるが、それでも自己の信念を曲げずに貫きと通そうと念じている。

(1)好ましい経済発展の理念

 さて、先ず初めに、政治・軍事は経済に優先し、その運営の適否を決定付けるのは人間の理念と意識と能力であるから、好ましい経済発展は、内外の政治・軍事的安定と平和維持、人間の質の向上を前提としてこそ達成しえるものといえる。

 したがって好ましい政治や経済の原点を考える場合、あくまでも正しい基本的理念を主柱とすべきだが、それは、日本の欧米風の近代化に際して福沢諭吉が、英語で経済を意味する「Economy」を「経世済民」と名訳したことと、昔々、仁徳天皇が、高楼から周辺の景色を眺め、各戸から夕餉の準備の煙が立ち昇るのをご覧になられ、「民の竈は潤いにけり」とご満足になられたという逸話が伝えられているが、正にこの二言に尽きるといえよう。
 つまり、経済の「経」は、道徳律と、自然界や周囲の環境条件などにより予め与えられた制約条件の枠内で、人間の理性と英知や技能をフルに発揮する事、経済の「済」は、「モノ」のやり取や「カネ」の貸借の決裁をきちんとつけることである。
 故に、返済の裏づけが確実とはいいえない赤字国債の乱発や、無制限な超金融緩和、マイナス金利などで、無理に生産の拡大、消費需要を喚起し、過剰借金で豊かな目先の経済発展や景気回復を演出し、供給と需要の不均衡化を招き、将来に付け回しをするなどということは、決して適切で健全な経済発展策とはいえないのだ。
 英語の「Economy」の語源はギリシャ語の「oikos-nomiya」、即ち「良い家庭管理」であり、社会生活を構成する基盤となる個々人の家庭生活が円滑に運営されることを第一義とすべきこと。
 また、エコノミーは「Ecology」にも通じるので、「自然の摂理や環境との調和的発展の重要性」を示唆するものであり、よって国家総体的・外観的な経済規模の大きさや、特定大企業や富裕層に偏重した豊かさだけで引き上げられた平均値の高さ、財物的な豊かさが良い経済や幸せの価値尺度であってはならず、極端な貧富格差がなく、国家社会の根底をなす「民衆の家庭生活の安定と安心・安全、物心一如の豊かさが満たされている」こと、「最大多数者の最大幸福の実現」があってこそ、真に好ましい経済発展であるといえよう。

(2)国家経済発展のために必要とされる諸要素

 健全な国家経済発展のために必要な諸要素は、以下に述べる「7・5・3の要素」だとご記憶下さい。
 ①基本的要素7項目(7気)…士気、鋭気、勇気、活気、根気、才気、天気
  経済を運営するのは人間であるから、国民各位が将来に希望を抱き、より良い状態にしようという強い意志と前向きな気持ちで行動すれば、現状はどうあれ、必ず良い方向に前進し得るものである。従って先ず心の持ち方としての6項目と、それに語呂合わせで覚え易く天気の「気」を加えたのは、気象条件の異変が農業・食糧生産や天災の招来、ひいては経済動向に大きく影響するからである。
 ②直接的要素5項目(5M)…モノ・カネ・ヒト・土地(市場)・制度(情報など)
  通常はモノ・カネ・ヒトの3要素とされるが、現代ではそれに経済活動の場面である市場環境と、情報処理や規制緩和など種々の制度や手法が大切と考え、これらの英語の頭文字で「5M」とご記憶下さい。
 ③コスト的要素3項目(3安)…資源エネルギー・労働・金融のコスト
  利益は元にあり、3要素の入手コストが安く、それに更に価値を付加してこそ最大利益が効率よく得られる。


(3)景気浮上に必要な3本の推進エンジンと補助エンジン

①輸出
   日本は天然資源が乏しいことなどで自国内自給自足だけでは発展に限界があり、輸出入のバランスが良い貿易立国を考える必要がある。とりわけ輸出の好・不調が景気に大きく影響するので為替相場の安定も重要だ。
 ②民間企業設備投資
   国内設備投資が活発だと、それに関連するさまざまな関連業界にも好影響を及ぼし、実体経済の発展、好景気を支える。
 ③個人消費
  この①②が好調となれば、雇用の拡大や賃上げにも連なり、所得が増加すれば消費購買需要も増大する。
 この3本の推進ロケットの点火順序と、順調な完全燃焼がないとロケットは浮上しないが、その上昇エネルギーが弱まり軌道に乱れが生じた場合、それを修正する④補助エンジンが財政出動であり、目下の日本はこの補助エンジンに頼って経済の発展や景気浮上を図ろうと懸命になっている脆弱な状態にあるが、これだけでは永続し難い異常事態の応急処置なので、出来るだけ早期に正常運転状態に戻す必要がある。

(4)景気にも好・不調の一定の循環周期が見受けられる

 ①短期循環(キチン波動)
  キチンが提唱した比較的にきちんとした周期で繰り返される波で、その周期は約4年、これが生じる要因は在庫の増減循環周期とされ調整もし易い。
 ②中期循環(ジュグラー波動)
  ジュグラーが提唱した周期説で、周期は約10年、その発生要因は民間企業設備投資である。設備投資で建設された構造物や機械は、やがて損傷・補修・陳腐化が進み、その更新のための需要が再び周期的に生じる。
 ③中長期循環(クズネッツ波動)
  比較的ゆっくりとぐずぐずしながら漸次陳腐化し、グラッときて補修の必要に迫られ起こる更新のための需要で、周期は約15年、発生要因は民間住宅投資、企業設備より民間住宅の方が損傷まで期間がやや長持ちする。
 ④長期循環(コンドラチェフの波動)
  今度こそドラスチックな変革が必要とされる周期的な波動説で、長期であるが故に周期にも幅が生じるが、約40~60年周期とされ、その発生要因としては、異常気象による農作物の作況、技術革新、産業や企業寿命、大規模な戦争の勃発(大量破壊に伴う在庫調整と大量供給需要)、これらの複合説などさまざまである。
 ⑤超長期循環(?)
  長期間の周期であるから体験例も少なく、学説としてまだ確立されていないが、周期は約100年、要因はエネルギー革命、世紀転換期の主役交代説などである。

(5)景気状態を把握・認識するための計34の指標数値

 ①先行指標
  学者により重視する項目数が異なるが、わが国の政府公表では現在、景気状況を先取りし今後を予見させる、原材料在庫、製品在庫、機械発注・輸入、機械受注などの12項目
 ②一致指標
  実際の景況と一致して現況を認識する、鉱工業生産、エネルギーや電力消費などの12項目
 ③遅行指標
  景況の実態を追認するような、最終需要財の在庫指数、常用雇用指数、所定外賃金指数、消費者物価指数などの10項目
以上の合計34項目である。

(6)経済・景気を左右するその他の作用

 先に述べた経済に優先する政治や軍事の他に、それを左右する作用としては、人間の本能的欲望、画期的な新しい需要を生み出す新技術や製品の発明、税制、諸規制の制定や緩和、法律改定、地球の気象や自然環境の変化、天災などがある。

(7)需要と供給関係と物価~インフレからデフレ経済へ

 地球に棲息する全ての人間の欲求(需要)を満足させるだけの供給量が確保されて「需要=供給」であれば、その奪い合いの争いも起こらず安心・安定的に暮らせる理想的状態といえるが、需要(消費)が供給(生産)を上回り「需要>供給」の状態となれば、その奪い合いから物価が高騰して「インフレ」を招き、逆に「供給>需要」の供給過剰状態となれば、生産したものが売れ捌けず在庫の滞留負担となるので、それを換金するために値下げ販売し、消費者物価の下落となり、それが長期的に続くようなら物価破壊の「デフレーション」経済に陥り、多くの分野にマイナスの悪循環をもたらす。
 これまでの物質文明が進歩し続けた人類の歴史では、旺盛な需要が供給を常に上回り、如何に能率的に大量生産して需要に応え、インフレを招かないようにするかに苦慮し続け、経済学でもそれに重点が置かれたが、冷戦が終結した20世紀末になると、世界規模での需給関係が逆転し、経済・貿易競争が激化すると同時に、これまで体験した例が少ないデフレ不況の深刻化と、その解消策が問題になっている。

(8)経済活動はオールスターキャストで運営され、庶民も無縁ではない

 経済社会では、企業も個人も、その影響力や貢献度の大小はあっても、全ての者がオールスターキャストで、生産・分配・消費・貯蓄や投資などのいずれかの分野に参画し、働き、稼ぎ、支出するといった活動を展開している。だから経済は、庶民には無縁で関係がない、専門家だけが関心を持てばよいというものではなく、その常識的な理解は、社会生活必須のものとえる。

(9)経済・景気動向を先読みする智恵

 従って事実、誰でも成長するにつれ無意識的でも、それぞれなりの体験から得た経済・景気の実態を把握し、今後の動向を予見する智恵を身につけている。
 例えば、友人・知人だけでなく初対面の他人であっても、面接した瞬間に、服装や持ち物、住んでいる家などからお金回りが良いかどうかを察知したり、客待ちタクシーの列、恨み節の演歌が流行るのは不況、ミニスカートは好況、黒・白・鼠色は不況、明るい暖色は好況の証などと景況判断をされたであろう。このように経済知識や景気予測などは、だれにでもできる連想ゲームのようなものだから興味深く、決して難解、無縁のものではないのだ。

(10)経済に関する一般的常識


 ①経済活動でもたらされる成果を評価する場合、限られた経済要素を無駄なく有効に必要な分野で使いきれたかを見る「効率性」と、その結果の富の分配が経済主体の一部だけに偏重せず公平に分配されているかを見る貧富格差など「公平性」の両面で分析する必要がある。
 ②諸指標には、ミクロ経済で見た月々の給料や家計消費額、マクロ経済でのGDPなどお金の動きを識る「フロー」と、ある一時点の金融資産や不動産などの保有資産額、国債残高などを識る「ストック」があるが、これは企業財務の損益計算書と貸借対照表に該当し、わが国の場合、税制でもフローの追及は厳しくするが、ストックへの追及は甘く、優遇しているきらいがある。
 ③経済成長とは、一定期間に生み出された財貨やサービスの付加価値(企業財務の粗利益に該当)の前年同期対比の伸び率で、これがプラスだと順調な経済成長だがマイナスになる場合もある。また物価変動を加味しない名目と、加味した実質とがある。
 ④景気循環のメカニズムとしては、絶頂期の景気の山、頂上から下りに向かう後退期、どん底に落ち込んだ景気の谷、再び上昇に転じる景気回復期という循環がある。
 ⑤市場経済には、公開された取引の場に自主的意思で参加でき、その価格の相場変動をうまく利用することで差益稼ぎ(差損の場合もある)の機会を得るので、経済活動の活性化が図れるが、それには自由と同時に公明・公平さが保障され、自己責任である。この対語の経済政策計画経済では、政府主導で安定感があっても、自由さと活性化阻害となる。
 以上のような観点から安倍政権と治世とその経済政策の売り物であるアベノミクスのこれまでの成果を評価すると、近年の歴代総理よりは外交にも積極的で工夫や努力をしている点は評価し得るが、アメリカ志向と追従、財界・富裕層優遇、その皺寄せ負担は社会的弱者、富の分配は上から漸次下層に浸透するであろうと言う姿勢であり、消費税の扱いなど、目先の成果焦りと、選挙での勝利のための人気取り、自己政権維持策には長けて狡猾で如才ないが、将来展望と布石を打つ対応に欠ける点は難点だ。


著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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