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貪欲資本主義経済の弊害と道徳理念の退廃

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公開日付:2016.06.17

(1)過ぎたるは及ばざるが如し

 このところ国内問題としては、東京オリンピック誘致に関する巨額コンサルティング料の支払い、自動車メーカーの公表燃費偽装、舛添東京都知事の政治資金公私混同支出問題などの不祥事が相次いで発覚し、国際的にも、パナマ文書によるタックス・ヘイブンの実態暴露、ビッグワンとして世界秩序を仕切ってきたアメリカの威信低下、急成長した中国経済が頂点に達し鈍化に転じたこと、EUの結束に乱れが生じてきたこと、再び強いロシアへの復権を目論む悪足掻き、終息の兆が見えないISなどによる無差別テロの恐怖など、わが国のみならず世界中が、パワーバランスと秩序の崩壊から、混沌として閉塞状態に陥っており、これでは1990年代初期のソ連邦の分裂、東西冷戦の終結で、共産主義が否定され、社会主義体制より自由・資本主義体制の方が優っていたので勝利し得たとてもいえず、ソ連邦は自壊したのであり、その後案の定、世界独占覇権を制した超大国のアメリカにもリーマンショックなどの問題が生じて威勢が鈍り、未だに、近未来の新世界のあるべき姿と秩序回復への再構築案、それに到る道が見定まらず、全人類の理念や意思の統一、世界の安定の確保は図れないままである。
 このような秩序なき不安定な世界を招いたのは、それを主導してきた近代アメリカ流の行き過ぎた貪欲資本主義の影響を強く受けたことの弊害、つまり自国に都合の良い自由・市場万能主義経済と、富・権力・名誉・武力の全てを掌握しようとする支配者層のノブレス・オブリージュ、道徳・倫理観の低下、好ましい政治・経済の原点を失念した拝金・拝物主義、その結果の地球自然環境の変化を無視した、過剰生産、過当競争の激化、需給関係の地域的不均衡、実体経済より金融投資経済依存による社会の不安定化、所得分配の不適正化、適切な努力や才覚によるというより制度的に形成された感がある貧富格差の増大顕著化、民衆の不安心感と不満沸騰、支配体制への抵抗の先鋭化、財物的文明発展の一方での精神文明の荒廃に起因すると申し上げても決して過言ではなく、先賢が遺した「物極必反」、「財貨多きは徳傷(やぶ)る」、「お金が溜まると人間の心が濁り、行動を誤る」といった正鵠を得た名言に改めて感服させられる。
 筆者は、社会主義、自由資本主義のいずれについても、すべてを否定するものではなく、それぞれに長所もあれば、運用上留意しないと問題が生じる短所もあり、また地球の自然環境や人類の生活環境、各国なりに抱える特性や事情、国民の意識や能力レベル、社会的欲求の段階に応じて、どちらの考え方や社会体制を主体とすべきかの判断の価値尺度が異なって当然であると考える。
 要はそれぞれなりの環境や状況に応じた適切な選択と運用が大切であり、「過ぎたるは及ばざるが如し」で、特定支配者による独裁と強制を廃し、両極端に偏重し過ぎることなく、国民の理性と良識による賢明な選択を尊重し、バランス感覚をもってその適度を知り、中庸を歩むことと、他者の多様な意思や選択の自由も容認するといった寛大さと柔軟さ、自由さの代償は自律と自己責任であると認識することこそが肝要、よって「自由・智本・民衆・社会主義体制」の確立が近未来の世界の理想とすべき課題であり、現在の世界的な秩序の混乱は、その過渡期としての陣痛の苦悩であるといえよう。

(2)「満ち足りるを識る事」の重要性

本稿ではあえて、「資本」主義を「智本」主義、その「知」を智恵の「智」 「民主」主義を「民衆」主義と当て字に置き換えて表現した。
 それは「お金の資本」投資で利鞘を稼ぐことを主体とするのでなく、今後は頭を使い汗をかいて智恵で稼ぐことの重要性、「知」は単に学問的に知っていることに過ぎないが、「智恵」はその知識を適正に活用し国家・社会に役立って適正な利益を上げる実践的英知ということ、総括的な国民という「民主」でなく、社会的人口構成比で大多数を占める「民衆」に焦点を当て、底辺から活気づける「頭寒足熱政策」が、人体の健康維持からも、根っこが弱ると樹木も伸びずに枯れるという自然の摂理にも適い、最大多数者の最大幸福の実現こそが好ましい政治・経済の原点であること、民衆個々の活力や幸福があってこその国家・社会の繁栄であり、国家・社会の外観的繁栄やごく一部の狡猾な優越層を更に富ませるために、大部分の善良な民衆を犠牲とすることは本末転倒であるということを強調したいがためである。
過去の歴史的事実からも、頂点に立ち権勢を誇ったほぼ全てともいえる国家や企業の衰退の要因を探ると、武力戦争での勝利による一時的な名誉と繁栄は見られても、それは決して永続せず、その上に、一度首座から陥落した国家や企業が、再びその地位に帰り咲き、繁栄を永続させているといった例は皆無といえる。
 そういった衰退に追い込まれた主要因を列挙すると、
 ①急速に武力や財力で支配領域を拡大したものの、「屏風と戦線や事業は、手を拡げ過ぎると倒れやすくなる」という至言もあるように国家や事業も同様で、戦場・支配・業務・営業領域規模が巨大化し過ぎ、管理・維持能力の限界を超えた場合。
 ②独裁的支配者の世襲後継者を巡る争いからの内紛による瓦解。
 ③特定的支配者の傲慢な独裁と、富・名誉・財力・武力の独占に対する配下や民衆の反撥・離反、不満爆発でクーデターが発生したことによるもの。
 ④ワンマン独裁者がイエスマンばかりに囲まれて自己満足し、自信過剰となり、命がけで諫言したり手綱を締める、真に優れた良い補佐役の不在、それに耳をかさず敬遠・放遂した結果。
 ⑤権力の分立や権限委譲などを通じた後継者育成を怠ったり、誤まったりで、有能な後継者に恵まれなかった場合。
 ⑥後継者が先代より更に立派な成果と名誉をと、欲張ったり焦りすぎた結果。
 ⑦貧富格差や、氏、出自、身分、職種などによる顕著な差別扱い不満爆発。
 ⑧支配者が遊芸や美食、色情に溺れて本業を疎かにし、豪遊、浪費で財産を散布・消滅させたこと。
 ⑨過当な投機・投資の思惑はずれや失敗で多大な損失を蒙ったこと。
 ⑩統合・連合・連携などによる協力・互恵・支援体制の思惑はずれ、外交戦略の稚拙などで孤立的になり、他国の情報入手量が劣っているなど、自己防衛や危機管理意識が乏しかったこと。
 ⑪何かこれはという絶対的な特性や、売り物となる資源、製品、技術、ノウハウなどを保有しなかったり、自給自足体制が脆弱、通商の相場・鞘稼ぎ依存する他力本願で遭ったこと。
 などであり、他国からの武力攻撃を受けての敗退・衰微というよりも、自らの行動の因果応報、自らが招いた自損・自傷事故ともいえる内部崩壊に起因する場合が圧倒的に多いと断言できる。
 近代世界の理念や政治・軍事・経済・文化などの行動態様を主導してきた欧・米先進諸国は、実はイスラム民族との争いに勝利した15世紀のローマ帝国以来に、その主導支配力が移転してきたものといえ、その後ユダヤ系オーストリア人であったとされ名門に発展したハプスブルグ家の血族政略結婚関係で多くの独立王族国家が生まれ、さらに20世紀以降はイギリス人が移民して建国したアメリカが頭角を現してこれに加わり、欧米列強国の連合として主導するようになったが、それで見ると、その世界支配の歴史は約600年という長期に及ぶことになるが、長い地球人類の歴史的に見た文明移転の周期400~600年説の期限に既に達しており、そろそろ主役交代期に至っているといえる。
 世界の人類別大分類は、地域や宗教による分類より、DNAによる血族関係と、それに影響された皮膚の色、気候や地理的環境から永年にわたって培ってきた性格別で分類するのが最も合理的で妥当だと現代の科学ではされ、そういいった面からは、白系の欧米の各民族は比較的にまとまりやすいといえようが、彼らは元来、古代から現住していた中・南欧のラテン語系民族グループと、北西アジア辺りに居住していた狩猟・遊牧騎馬民族が西方に大移動して来たグループと、気象的に寒くて厳しいが故に豊饒の地を求めて他地域に進出せざるを得なかった北欧バイキング系民族グループの混合で形成されている。従って、概してアジア系のように生誕地に固執して定住し農作業をするというより、移動型の狩猟・遊牧型の民族であり、昔から、軍事力と物質文明は北方から、宗教などの精神文明は南方から発祥するといわれるように、進取の気性と新奇への挑戦心、戦略的思考、向上心に富み、リーダシップや決断力があり、創造性、危機管理意識にも優れるが、一方、自己主張、自尊心も強く、常に豊饒の地とより豊かな獲物(利益)を求めて止まず移動し続け、それを支配するために排他的で闘争心があり、攻撃的で、優越感を有している傾向にある。
 そういった彼らが発案した自由主義、資本主義の考え方は、当初は純粋なキリスト教の教えに従い、例えば、困っている人に高い金利を取ってお金を貸すことは好ましくないとされていたし、株式というシステムも、産業革命で大量機械生産をする設備を整えるには巨額のお金が必要となるが、それを善意の多くの人々から、社会と人間生活の向上に連なる事業を支援するという篤志で、少しづつ負担していただいて集め、小さな苗や根株持ち寄って大きな森に仕上げるように(注:これが株式の語源に込められた意味)、それで大事業を展開し、それに対するお礼として利益の一部を配当として応分の還元分配をするというもの、また、自由の大切さも、信教や職業選択の自由も、そういう自由選択の機会を与えることが、人間の励みとなって成長を促進し、より良い社会の発展に役立つと考えた結果のもので、そういった自由さの利点を活かし、機会を得て、人並み以上に努力し才覚を発揮して成功をした者が、それなりの所得を得られるものの、人並みの働きもしないことの自由さも認めるが、ただしこういった怠け者まで平等に扱われ平穏な生活が保障されるということでは逆不公平を生じさせると考えることも至極当然なものであり、それが自由な新興国アメリカのドリームとして受け入れられ、事実、見事に世界一の超大国にまで発展した。
 しかし近年になり、アメリカ産業の主要部分を、人口の三分の一程度でしかないユダヤ系アメリカン(Jewish American)が支配するようになってからその様相が変わり、各自の能力と努力の差による所得の応分・適度な分配差が強くなり、大きな資力と権力を有する者が常に優位になるようなシステムを巧妙に人為的に形成し、拝金主義、大株主資本主義、彼らが得意とする金融・投資市場経済万能主義が横行するネオ・アメリカン・エコノミーの行き過ぎを招き、本来の自由・資本主義の良さを変質させ、狂わせ、その弊害が顕著になって馬脚を露呈し、その修正を求められるようになった結果、アメリカの世界的威信が揺らぐこととなったのである。
 誤解されないように念のために申し添えるが、ユダヤ人の全てを非難するものではなく、本来の地に永住してきた純粋のユダヤ人は、唯一神のユダヤ教を敬虔に信奉し、勤労と質素な生活を頑なに守る純朴な民であったが、その昔、生誕地を追われ、見知らぬ他国に散在移住する事を余儀なくされ、迫害を受け、働く職種も制限されたので、当時の欧州キリスト教国の上流社会では下賎な仕事とされていた金融や商業に手を出し、自衛のために拝金的にならざるを得なくなり、艱難辛苦の末にそれを克服して成功するようになったので、それを羨んで、ユダヤ人は狡猾で商売に抜け目がないと警戒されることとなったのである。
 しかしその苦難体験から、彼らは独特な有能さである、自衛のための神経質なまでの危機管理意識、危機を事前に察知する情報管理と情報謀略力、変化への機敏な対応力、鋭い金融相場感覚、それを活かして世界の富を目立たないように収奪して成功する智恵を身につけたのである。
 彼らの思考や行動態様を端的に象徴するのは「2対8の原則」を強く信奉していること、つまり世の中にはこの2対8の関係が厳然と存在し、例えば社会や企業でも、有能・有益・成功者は2割、並みとそれ以下の層が8割で構成され、この2割の有益者の活躍で収益の8割を稼ぎ、それで弱者を養っていると自負し、決して法的にも、道徳的にも悪いこととは考えていないのである。問題は、その利益の社会還元がどの程度、どのような形で行われているかの公明さであるが、彼らに言わせれば、独自の努力才覚の結果の富であるから、その詮索は大きなお世話だということになる。
 実際、こういった傾向の現象は、各社の人材構成においても、日常も多く見受けられることではなかろうか。
 近代世界を主導した欧米流の物質文明の歴史は、地球の未開発の自然埋蔵鉱物資源や天然食糧・木造資源が無尽蔵に豊かに存在し、その地球に棲息する人口も少なく、現代ほどの爆発的な急速増加がみられず、地球総体としての需要と供給の関係はずっと「需要が供給を上回っていた」ので、機械文明や科学技術の発展による大量生産で大量需要に応え、需給関係から物価が高騰(インフレ)しがちなのを抑制するという政策が主要課題であり、従って、いかに自然地球の資源を人為的に開発し、収奪するかという歴史であったともいえ、それが領土拡大や植民地獲得競争の戦争を招いた弱肉強食の「物質文明優越的」時代、すなわち「自然の破壊的克服」の時代であったともいえよう。
 だから「Culture(文化)」の語源は、ラテン語のクルチュラ、即ち「耕された自然」を意味し、天然資源を採掘して人為的に加工し、実用に供するように形成されたものが「文化」、それに精神文明や芸術的な成果まで加味した広義が「文明」といわれるのである。
 それが現代では自然環境も科学技術や人間の機械文明も、すっかり様相が変わり、経済後進地域での人口減少、経済先進地域での少子高齢化という差はあるが、世界総体としては、大量生産体制の進歩が需要を上回り、「供給>需要」、従ってインフレよりデフレ経済傾向を招きがちな人類史上で初体験の時代、それも環境変化が多様でめまぐるしく、しかもそのスピードが昔と違って非常に速く短期間で急変することとなったので、従来の繁栄の尺度や幸福の価値観、政治や経済運営理念や手法を、根本的に大幅に革新する必要に迫られることとなった。
 便利な科学技術や道具そのものは能率的で有益だが、それも使い方次第では逆に殺人の凶器や武器になりかねないように、人間の良識と理性と公徳心による使い方が重要ということであるが、近代の政治や経済金融システムも全く同様であり、それがかえって人間の能力や意識の進化を防げ退化と成り、強者が弱者から富を搾り取る悪知恵のツールとされ、信頼を基盤に置く通貨を、モノの取引のように相場の社会で取り扱い、その過欲な思惑で投機的利鞘稼ぎの手段とすることなどは、決して好ましいこととはいえないので、やはり良識ある人間の理性である程度の道徳的自律と自主規制を求めることの自由さを認めることも必要であろう。
 社会主義についても、一頃は進歩的な有識者の間では、ドイツの社会学者テンニースが提唱したゲマイン・シャフト(共同社会)のようなものであれば、自由・資本主義成熟後の理想社会の姿としいて歓迎されるものであろうが、それが旧来ソ連や現中国の共産主義のように、本来の思想から逸脱して、特定者の独裁と強制による自由の制約や束縛性の強い実質的階級社会に変容して用いられると、これもまたその行き過ぎで弊害が生じる。
 こういったさまざまな多様な考え方や手法の、どれを、どのように選択・採用し、国家社会や国民の生活の向上と幸福の実現に役立てるかを考える、ある程度の自由さと理性により自主的の規制は、いつの時代にも何処の国でも民族で、必要不可欠ではなかろうか?
 いずれにしろ、システムや行動態様は所詮は人間の理念や意識で選択的に設定されるものだから、人類の意識変革と過欲の抑制こそが将来を決定づけよう。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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