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正念場を迎える安倍政権とアベノミクス

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公開日付:2016.05.06

 6月1日の今国会会期末、そして恐らく7月10日が投票日と予定とされる参議院選挙を控え、いよいよ安倍政権と、首相自らが設定した経済再生のためのアベノミクスが正念場を迎えることとなる。
 安倍首相としては、状況次第では衆議院解散、衆参ダブル選挙もあり得るとの脅しや、与野党双方の主要議員の政治資金スキャンダルの暴露合戦をこれ以上拡大させない相殺的処理を暗黙の了解事項としてちらつかせつつ、その憶測で与野党議員が選挙対策で浮足立っているどさくさの機械を捉え、圧倒的多数の与党勢力の下で、残された諸法案を包括的に、審議は既に十分尽くされたとして一気呵成に賛成多数の可決に漕ぎつけ、近年の歴代内閣に比し、数多の新たな法案を成立させた実績として誇示し、来る選挙での人気取りと優勢の保持を画策しているようであり、またそういった自己の思惑の実現可能性には、既にマスコミや日銀、主要官僚、財界などを丸め込み抱き込んでいることから、かなり自信を持っているかのようである。
 このあたりは昨今のTV中継に見る、まとまりの悪い弱小与党をなめ、その追求質問の稚拙さを逆に諭すかのような横柄な首相の応答ぶりや、途中退席者や居眠り議員が目立ち、残務整理のセレモニー化した緊張感のない緩んだ国会審議風景からも窺い知れ、筆者が安倍政権の発足当初から懸念し警告を発した通り、「自民一党を大勝させ過ぎた民衆選択の弊害」がまさに顕現したものといえよう。
 しかし今国会の審議案件の中には、国内問題としては、本平成28年度予算、憲法解釈の是非や抜本的改正、新安保の内容と自衛隊海外派兵容認の条件、消費税10%への増率、マイナンバー・カード制導入、マイナス金利初導入、アベノミクスの仕上げ時期としての成果評価、国際問題としては、中国の軍事力強化と東・南シナ海での一方的領有宣言と軍事基地化、北朝鮮の核開発促進と挑戦的行動過激化、ISの無差別をテロ防止対策、TPP協定の批准、アメリカ大統領選挙の行方など、わが国の将来に重大な影響を及ぼす重要な議案が多く含まれ、慎重審議すべき困難な課題が山積していたはずであるが、いずれも肝心な点は、国際的信義と国益に関する極秘事項だから今は公表できる段階にないとか、実質的な武器輸出を防衛関連装備品の輸出と称するなど、まやかし表現の美辞麗句による曖昧な説明ではぐらかし、抜き打ち的拙速導入提案、強引な多数の論理による可決に終始してきたことが多かったに係わらず、十分慎重審議を尽くしたとし、アベノミクスの総括に関しても、諸外国の有識者がその成果を評価せず、むしろ今後の結果と反動を不安視していることなど無視し、アメリカ一辺倒の追従、大企業や富裕者優先・優遇策主導の政策、超金融緩和と赤字国債発行などによる人為的株価吊り上げ維持頼みのアベノミクスの成果演出、社会的弱者や民衆志向などに改めることもなく、やがてそれが下部にまで浸透し、景気に好結果をもたらすとしているが、果たしてその通りになるであろうか、些か疑問である。
 例えばマイナンバー・カード制度の導入にしても、昨年5月に制度導入方針が公表され、僅か5ヶ月間の審議や準備期間で早速に10月から施行開始とされる拙速導入であったが、実際はそれまでに密かに、管理機構の設立やシステム設計、PR冊子作成などの手配がなされていたのであり、しかもその間で不祥事が発覚したり、各個人宛番号通知書発送の混乱や大幅遅延があり、当然、国民や企業の理解不足や行政当局への不信頼が募り、企業側の受け入れ態勢整備、会計制度変更の遅れと経費負担もあり、施行後5ヶ月を経た現在でも、通知書未配達・未受領者率が総対象者数の約8%、カード化申請者に対する実際交付済み受領者の割合はまだ4%程度に過ぎず、カード化申請から受領までに要する期間は約3ヶ月と遅く、いつまでにカードを作成・配送するとの確答は出来ない状態にあるという。なぜこのカード制度の導入をこれほど急ぐ必要性があるのだろうか。
 これでは利用者率が伸びず巨額の経費無駄遣いとなった住民基本カードと同じような結果になりかねない。
 国家運営や行政に携わる為政者は、現実の問題解決に適切・機敏に対応し、目先の懸案に予防的な手を打たねばならないと同時に、常に10・30・50・100年先を見通し、これに対処する理念を明示し、将来のビジョン設定や理想実現への長期戦略を確立し、その実現への挑戦を心がけねばならず、在任中の人気獲りより、退任後にその先見性と先手を打った施策の的確さを大多数の国民から評価されてこそ、真に偉大な為政者といえよう。
 未開の地であった関東への移封を受け入れ、戦国乱世を完全に終結させて、以後260年余におよぶ泰平な江戸時代の基礎を築いた徳川家康、廃藩の危機を乗り切り、見事に藩政の建て直しをした米沢藩主上杉鷹山公、明治維新の英傑達、近代日本産業興隆を主導した渋沢栄一翁、敗戦後の米国占領下に、混乱する日本の進路を定めた幣原喜重郎、吉田茂などがこれに該当する名リーダだったといえよう。
 確かに近年は昔と違い、国内外の環境や情勢の激動テンポが速くなり、問題が複雑多様化し、先が見通し難いし、多事多難で苦労が多い時代であり、それでも戦後の歴代首相の中では、安倍総理はフットワークがよくまめに動き、現場に臨み、諸懸案の解決や新法の制定、社会制度の変革などには積極的な部類の方であることは評価し得るであろうが、安倍政権とアベノミクスに欠けているのは、最も肝心なこの長期ビジョンに立脚した理念と政治基本方針の設定という点ではなかろうか。

 安倍首相の姓と経済を意味するエコノミーを組み合わせた安倍首相による奇抜な経済再生策「アベノミクス」という合成語や、「景気回復への3本の矢」といったキャッチフレーズが、供給過剰の過当競争でデフレ傾向にあり閉塞状態にあった世界から、政経分離で中立性を重んずべき中央銀行と一体になった、全く異次元の超金融緩和という思い切った経済政策、実験的な試みとして注目を集め、これが流行語にもなるほど有名になり、大いに期待されながら、これほど、文字通り有名無実で、その具体的内容や施策、理論的説明と実例による立証がなく、抽象的であり、ごく一部のこの恩恵に浴して甘い汁を吸っている分野を除けば、世界諸国の有識者や、大多数の日本国民に、よく理解されておらず、信頼されず、支持されず、安倍総理のお手並み拝見と冷ややかに見られ、国策に納得して積極的に協調しようとしないばかりか、政府の美辞麗句を本気で当てにせず、むしろ逆に、真実が公明に知らされず、実感するところと乖離しているので、疑心暗鬼、自己生活の防衛に駆り立てているというケースも少ないのではなかろうか。
 この奇策の恩恵に預かる、たとえばアメリカの大手金融投資業界や国内の財界など、ごく一部の分野の煽り立てに乗せられ、安倍総理一人だけが自画自賛して、してやったりとばかり悦に入っている、筆者が当初に予言し駄洒落で表現した「安倍のみがクスッとほくそ笑む”アベノミクス”」となっていないだろうか。
 そもそもアベノミクスといった前例のない大胆な施策は、安倍首相の独創的な発想による機知に富んだ経済施策、勇気ある決断で実施されたものではなく、実は、日本経済の破綻、世界の経済混乱、株価の暴落を危惧したアメリカ政府が、極秘扱いされているが今でも実在し、毎年、アメリカ政府が日本政府に突きつけている「アメリカ政府の日本政府への年次改革要望書」、英語名を直訳すると「日米規制改革及び競争政策イニシアティブ(主導的指示権)に基づくアメリカ政府から日本政府への毎年の改革への要望」という大変高圧的な要求(もう少し善意で解釈すれば入れ知恵、差し金ともいえようか)により唆され、責付かれた結果、安倍首相が決断を迫られたものであったのだ。
 だからこそアメリカは、「安倍首相の偉大で勇気ある歴史的決断である」などと大層に褒め称え、おだて上げたのであるが、その本音と真の狙いは、自国も日本と同じようなというよりも、日本に先駆けた、財政赤字と貿易赤字の双子の赤字、ITバブルの頓挫とその軟着陸的解決策の模索、低所得者層を対象とした無担保融資競争の過熱や信用限度を超えた借金による消費経済依存の是正、自由で健全な金融投資市場というより、投機的マネーゲームと化した金融投資市場の過熱の抑制、自由・資本主義経済の歪としての貧富格差の増大が危険ラインに達しつつあること、相対的な国際貿易競争力や政治・経済的威信の低下、為替相場や株式市場の乱高下幅の増大と不安定化、根幹産業の海外脱出・無国籍化、インフレに対する経済対策の理論武装は過去の体験例も多くかなり進んでいるが、デフレ対策については体験例も少なく経済理論武装が遅れているなどといった悩みを抱えていたので、かっての原爆実験と同じく、日本をこれらの対策研究の実験台にしようとしたこと、超金融緩和政策で溢れ出る豊富な手元余裕の円資金を、リスクが伴い回収まで長期間を要する実体経済の企業設備投資より、情勢の変化に敏感に対応し易く、且つ手っ取り速く差益稼ぎや危機回避も可能で、アメリカがその相場形成に長じ、勝負に勝てると自身を持つ投資金融市場に引き込み、その活性化と価格維持を図ること、劇薬投与の荒療治で日本経済の長期的不振からの脱却を支援し活性化させることで恩を売り、日本をパートナーとして巧みに利用した日米連携の政治・軍事・経済力強化で、急速に台頭した中国への牽制と対抗力を強めること、円貨の大量発行をさせることで、その需給から円安・ドル高を招き、それで国際的威信低下気味のドルの信頼回復を図ること、中国市場進出を巡り、中国との融和策に進みかねない日本を牽制し、アメリカ隷属国、防衛軍事同盟国として確保、アメリカに対する恩義を感じさせ、忠誠度を高めることなど、あくまでも自国本位の一石二~五鳥の利益を得るという狡猾な思惑や謀略を秘めたものであり、決して対等のパートナー国としての純粋な日本への友好的支援ではなく、アメリカは冷徹な打算の国であり、どのような状態になろうとも日本を守ってくれる存在だと考えることは甘過ぎるであろう。
 アベノミクスでは、明確な法の規定で、政府に支配されず、あくまでも中立的立場と見識で、国家や家庭経済、物価や市場相場価格の健全性と安定性を監視し、その異常に対して警告を発し、金融面から調整を図ることを通じ、間接的に政府の国家政策とも協調するといった良識の機構である中央銀行(日本銀行)の専門管理領域を、政府が逸脱して浸食し抱き込んで、本来は禁じ手とされてきたので、初体験である大胆で無制限という異例の超金融緩和策を強引に実行させた。
 その結果、これで日本銀行のお金の面からの景気調節手段とされる3つの蛇口、つまり第1の、金利の高低でお金を借り易くしたり借り控えさせ、景気を調整する公定歩合操作、第2の、市中に出回るお金の流量を調整する支払準備率操作、第3の、同じく市中銀行が保有する国債などの有価証券を日銀が買い取ったり売りつけたりする(売りオペ、買いオペ)公開市場操作を全て開放することとなった上に、その後更にマイナス金利という有史以来初の手法、即ち日本銀行が市中銀行に経営安全性保持のために必要な支払い準備金を貯金させ金利をつけていたのを、その一定比率以上の多額な貯蓄をすると、金利が支払われないだけでなく、逆に預かり手数料が徴収されるということで、市中銀行の金庫に眠る資金を一般企業への融資に回させ、実体経済の浮上を支援しようと意図するものまで導入することとなったのである。
 しかし日本銀行を通じての従来からの金融政策は、心理的アナウンスメント効果に主体を置くものであり、前記した3種の景気調節手段を段階に応じて漸次使い分け、それで市中銀行や、その預金・貸し金の企業や個人利用者への警告的示唆と指導という一時的対処策とし、市中銀行の良識での協力に期待するという程度の法的強制力がないもの、実体経済への直接的関与や介入にまでは踏み込まないものであったが、それでも企業経営や家庭運営への意識、方針転換への刺激、景気調整の安全弁としては十分に機能し有効であった。
 それがこのたびの超金融緩和策は、かなり大胆で無謀な無制限の超緩和、劇薬投与のショックで甦生させる緊急処置ともいうべきものであるから、従来は禁じ手とされてきた手法であり、それだけに一か八かの即効性が期待され、その後の副作用や常習的継続利用により免疫性が生じて効果が薄れる危険性を覚悟しなければならないし、投薬や輸血を中止した後の反動も厳しい。
 したがってその頻繁で無制限な活用、恒常的導入は厳に慎まねばならず、永続性に欠ける。また、国家財政の赤字解消や健全性とは相反する二律背反で、その両立を望むことは不可能で、アクセルとブレーキを同時に踏むような矛盾がある。
 いくら安い金利でお金を貸しますから、どんどん消費活動や投資をして下さいといわれても、実体経済市場での実需や投資金回収の見込みがないとなれば、借金をしてまで積極的に消費や設備投資をしようとはせず、国民はそういったまやかし政策の危うさを既に見抜いているから、それなら情勢に適した機敏な対応やリスクの分散・回避がし易い証券投資や、安全な海外への避難に向けたり、庶民は、無駄使いをしないで自己防衛に専念しようとするのも当然であろう。
 事実、資金的に余裕のあるものほど、こういった意向が強いことは、目下世界的話題となり、経済倫理観や政治問題にまでなっている、パナマ文書の暴露で明らかにされたタックスヘイブン諸国への巨額の金融資産移転の増加が立証するが、この点がアベノミクスの危うさ、抜け道というか落とし穴ともいえる問題点の第1である。

 アベノミクスの成果に疑問を抱く第2の問題点は、目先の小手先対応や、後手後手の彌縫策でしかなく、将来を展望した長期戦略的国策、根本的な国家構造の変革や経済体質強化に連なる政策でないばかりか、その反動や副作用の危険性を孕み、将来に不安と負担を先送りする「今だけ良い、酔い、明日が怖い♪」といったものであること。
 第3の問題点は、好ましい政治や経済の理念や原理に反する悪知恵の足掻きであり、また、大多数の弱者を食い物とし犠牲にして見殺し、一部の優越者だけを優遇して益々富ませ、それで総体的な外観と表面的平均値の大きさだけでその成果を演出し、人為的な株価の吊り上げによる見せ掛けの膨張的景気回復で良しとし、実体経済発展の裏づけや底辺から燃え上がる力強さを欠き、将来に向けた布石としての長期戦略的な施策や、根本的な経済体質の強化、内容的・質的充実に連なるものでなく、目先の人気取と7月に迫った選挙対策でしかなく、その結果次第では、一時休戦で棚上げとしてきた消費是率のアップや、新安保による自衛隊の海外派兵と戦闘力の強化、沖縄の米軍基地問題、憲法改正、TPPの蜜約、高齢者や児童福祉などが、二枚舌でどのような態度の豹変となるか計りかねるという不信感が払拭しきれないこと。
 第4は、アメリカ流の巨大国アメリカにとっては好都合な行過ぎた自由・資本主義経済、市場経済万能主義、投資金融主義、収益至上の拝金主義、恵まれた環境にある巨大国の水準を基準としたグローバル・スタンダードの押し付け、軍事力による威圧外交などに関しては、既に世界中が、各国にはそれぞれなりの事情があること、貧富格差の増大、過当競争、財物的繁栄の一方で精神文明の荒廃を招くこと、テロの頻発など国際的争乱の根本的要因となっていることなどという問題性を指摘し、その修正を求める意向が高まりつつあるにもかかわらず、相変わらず日本だけが、アメリカ志向一辺倒で盲目的に追従し、その亜流に甘んじていることである。
 国土面積、エネルギーや産業基礎資源の豊富さなど、環境条件の差異が大きいにもかかわらず、同じ歩調や政策では適応し得ないのは当然であるから、独立主権国として、良い点は謙虚に学びつつも、日本は日本独自なり理念や方策を打ち出すべきであろう。
 アベノミクスが当初に掲げたデフレからの脱出、物価水準の引き上げ、赤字国債依存率の低下、実体経済の景気回復による税収増加を通じた国家財政の健全化、社会福祉の合理化などの目標値達成は、その期限までには困難なようだが、もし達成できたとしても、それは経済成長推力低下で失速しかけたロケットの姿勢の建て直しをしたまでのことであり、その後の正しい軌道乗せこそが日本の将来を決定付ける。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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