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問診・見診と財務諸表による企業健全性速読術

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公開日付:2016.04.15

 企業は周囲の環境の変化に影響を受ける生き物であり、この変化に適応し得ない事業は永続発展しないといわれる。
 とりわけ近年のように、地球そのものの自然環境や気象状況が変化し、国際化・自由化の進展、科学技術の急速な進歩でモノ・カネ・ヒト・情報などの交流範囲が広く、ハイテンポになり、人類の意識変革以上に複雑・多様・高度化するようになると、その影響の伝播が一層早く、政治・軍事・経済・産業・社会・家庭の生活態様などあらゆる広範な分野に広まり、それに連れ世界の変動や社会秩序の混乱が激しく、それに伴う多様なリスクも増大することとなり、人類の棲息環境は益々不安定化し、安定した順調期間が短縮することとなった。
 例えば一昔前までは、世の中で活気があり脚光を浴びる期間とされるライフサイクル(万物の生誕から成長、繁栄、成熟、陳腐化、衰退、滅亡に到る一生涯の期間)は、地球の寿命が約50~75億年、人類文明の焦点が移転する期間は約400~600年、比較的に価値変動のテンポがゆっくりで安定しているが故に不動産と称された土地の価値寿命が、首都移転の遷都で約300~400年、商業繁華街(その都市地域での1等地)の寿命は約30~60年、時代を牽引する花形産業やヒット商品の寿命は、トン型からKg、g、ナノグラム、ゼログラムのソフト産業時代へと、重・厚・長・大から軽・薄・短・小へといった約30年~100年、ヒット歌謡として民衆に唄われ、タレントがスターとしてもて囃される期間が約5~10年、流行語やロゴの寿命は約1~3年とされていたものが、最近ではいずれも概して3割ほど短縮化の傾向を示し、流行り廃り、陳腐化のテンポが早くなった。
 前記したように、安定した資産価値として土地神話さえ生まれ不動産でさえ、バブル経済破綻後の昨今では、価格変動が激しく、低落さえもあるという「浮動産・負動産」と化し、低利だが元利保証で安心とされた銀行預金までが、市場変動金利となってマイナス金利という事態さえまで生じる時代になったのである。
 日本を代表する優良企業と評されてきた伝統ある三菱商事や三井物産までもが創業以来初めて赤字決算し、世界的にも有名であった大企業の東芝、ナショナル、シャープなども苦境に陥るという、このような大激動と変革のテンポが早い時代を生き抜き事業の存続発展を図るには、経営役員は当然のこと、全社員が、自社のみならず取引先企業の信用状態まで、常に敏感に察知する能力を必須条件として身につけておくことが肝要となる。
 そこで本稿では改めて、極めて実際的な問診・見診と財務諸表による企業の健全性と信用度を素早く読み取り見抜く要領について述べておこう。  上記したような厳しい世界環境と情勢の中にあっても、わが国は幸いにも、創業以来300年以上という長寿企業の比率が最も高い国として注目されており、その中でも特に、地味ながらも手堅い中小製造業が多い京都、滋賀在企業の健闘が目立ち、また世界的にも商売が巧みな民族は、ユダヤ人、中国人(華僑)、日本人(大阪商人で華僑に通じるところがあるので阪僑と俗称される)だとされている。
 その長寿を維持しえた共通点を探ってみると、
 先ず第1には、戦乱に明け暮れ、時の権力者が頻繁に代わり、住み慣れた土地から放遂され、仕方なく身の安全のために未知の他所に移住せざるを得なくなるなどと振り回されて、急激な環境の変化や逆境、苦難、切羽詰った状況に追い込まれた体験を重ねており、したがって自分の安全は自分で守るという自立・自衛心が強く、リスク管理に長けていること。
 第2に、見知らぬ土地で先住民に溶け込み融和を図る努力をしながらも、芯では自己の尊厳と生き様までは放棄しない頑固さで、和して同せず同して和せず、「和光同塵」の如才のなさを発揮していること。
 第3に、お金や土地がなくても自立・自生できるための独自の知識や技術の確保に注力していること。
 第4に、多種の国に一族を分散居住させ、リスクの分散を図ると同時に、常にリスク予防・回避のための情報収集に努め、民族間の情報交換や連携を強めていること。
 第5に、環境や状況の変化に敏感で、過去に執着せず、見極めと変わり身が早いこと、そのためいざの場合の移動の身軽さを考慮し、小型で高価、換金性のある貴金属を身につけ、また巨額の設備投資と、その回収に期間を要する製造業より、変化に対応しやすい販売業、情報産業、金融・証券などに主体を置き、自由さを求め、情報謀略が得意で、市場相場感覚と利鞘稼ぎに長じている。この点は現代にまで引き継がれており、アメリカ経済を実質的に主導するユディシュ・アメリカンの狡猾な経営戦略などからもご理解いただけよう。
 第6に、従って伝統の良い点は堅持しながらも、常に新感覚の導入を怠らないこと。
 第7に、他者が嫌がり手をつけたがらない独自の優越分野を手がけ保持すること。
 第8に、どのような状況になろうとも、社会が必要とする事業は栄え、顧客が欲しいと思う商品は売れるということを理屈でなく体得しており、そのニーズの先取りには敏感で、現代風に言えば、顧客満足志向とマーケティング・マインドに優れていること。
 第9には、消費の担い手は女性であり、本能は廃れず不況下でもこれだけは先ず満たそうとするので、女性の心と大衆の口を対象に、人間の本能に即した事業に主体を置き、格好の良い気取った商売より、身を粉にして働き、額に汗をかき、汚く暮らして清く食うことを信条としていること。
 第10に、それには目先の小利より、算盤勘定の速さと深さで大利を追及するという、所謂始末、算用、才覚に長けているということ。
などといった独特の経営理念と方針、戦略的手法を明確に持っているといえよう。
 ただし、西欧系のユダヤ商法と東洋系の華僑、阪僑との根本的な大きな違いは、前者が元来、狩猟遊牧民で、定住せず常により良いと土地を求めて移動する侵略型、積極的で、自然の克服、進取の気性に富むのに対し、後者は元来、農耕民族であるから、定住型で保守的、自然との共生や周囲との協和に重点を置く点である。
 企業の健全性と信用度を調査・判断する方法としては、社会公共性が強く、お金の貸し手と借り手といった立場上からの優位性を有し、しかも所轄官庁の指導でもそれを推奨されている大手銀行なら、企業の財産目録書、業績の通信簿ともいえる最高機密書類である財務諸表(決算書)の提出を顧客に求めることも出来ようし、調査部などの専門機関による臨場調査も可能であろうが、その他の一般民間企業では、余程の支配力の差や合理的理由がない限り、いかに近代経営では事前の情報収集と調査が必要だとはいえ、自ずと制約や限界があり、従って通常は、営業担当者などの日頃の営業訪問と、平素の取引振りを通じた見診や問診による調査・信用判断に委ねざるを得ないであろう。
 そこで以下にその要点を列挙しよう。
 1.定例の取引先の注文取りや表敬・ご機嫌伺い訪問であっても、マンネリ化した雑談訪問でなく、目的を持った有意義な訪問を心がけ、ただ映像的に「見る」のでなく、意識して観察する「観」、実態を鋭く見抜く看破の「看」、現状から表面現象の奥に潜む実態や将来を見抜き読み取る洞察・先見力の「察」、現状の実態や問題現象を鋭く感じ取り、是非を判断する問診・見診の「診」などといったものの見方・感じ方を身につけ習慣化することこそが重要である。
 2.時には担当者を入れ替えたり、意識的に代理人に訪問させたり、上司や担当部門外の者に、違った目や感覚での訪問をさせ、相互情報交換を密にすること。
 3.時折、訪問の時間や場所を事務所でなく工場や倉庫を見てから面接する、面会相手を意識的に変えるなど、「時・場・人・雰囲気・環境」に変化をつけた訪問を心がけること。
 4.わが国では警察や監督官庁がよくやるような「明日、本社と工場の査察に入る予定である」といった予告訪問などは相手に迎え入れの準備と身構えを整えさせ、ありのままの実態を捉え難くするので愚の骨頂である。予想外の抜き打ち訪問こそが実態査察においては重要である。
 5.質問攻めの尋問調とならないよう、気楽な世間話や冗談を交え、「楽しい商談は笑談である」といった雰囲気でさりげなく用談を進め、探りを入れること。
 6.「売上げは予定通り順調に伸び、収益は向上してますか」などといったようなズバリの直接話法や質問を避け、間接話法で婉曲に聞き出す工夫をすること。
 たとえば、売上や収益額などを一つ一つを全てズバリと聞いたのでは答えづらくても、経営の努力を褒め、販売促進や節税の好例などを世間話的に三人称話法で話せば、相手はその話に乗せられ、「弊社は馬鹿正直に申告しているから、規模的に小さいのに税務署から高額納税者上位ランク入りで表彰された」などと打ち解けて本音を漏らし、そこから逆算すれば、どの程度の納税額か、課税対象収益額であったかなどが推計し得る。
 7.直接に実権を有する当事者と面接するより、周囲の者から間接的に聞き出す方が、案外本当のことが覗えるものである。
 8.同業界の従業員一人当たり平均売上生産性、収益率、売場1平方メートル当たり売上額などといった常識的な単位数値を予め理解しておけば、それらを組み合わせ、一情報から二、三の情報が得られ、それで業績の概算が、財務諸表を見せてもらえなくても推計把握し、頭の中でざっと組み立てることが出来るようになる。
 9.現状から将来を予見するためにも、一時点の静止的数値や情報でなく、少なくとも3期間以上の過去・現在の時系列的推移から未来を予見する必要がある。
 10.生きた情報は座して待つだけでは手に入らず、思いつき訪問でなく、長期計画的な、いろいろな時期を捉えた意識的訪問と、足と頭と心の眼で観察し、皮膚感覚で実感することが信用調査の要訣であり、その能力の優劣が業績にも比例するといえる。
 大阪の商人は、店先を通り過ぎる人の流れを見ても、単なる通行人と見過ごさず、将来の潜在見込み客であると捉えて気軽に挨拶の言葉を掛け、その歩行姿勢やスピード、服などから有望見込み度を察し、家並みを見ても、仕舞屋の密集地だとマイナス発想をせず、仕事に結びつけた発想で、何億円のマーケットだと算盤をはじき、夏は暑く冬は寒いお陰で、多様な季節商品がよく売れると感謝すべきだなどいうのを、筆者自身、社会人になったばかりの銀行員時代に目の当たりにし、店先に自転車を止めては「商売の邪魔をしにきたのか」と叱られ、椅子に座ると「この椅子は大事なお買上げ客の優先席であり、銀行員の座る席ではない」と突き飛ばされ、また「今日は良いお天気ですね」と挨拶すると、「そんな下らないお世辞より、儲け話を持って来い」と皮肉られつつも、なるほどこれこそが大阪のプロ商人の根性とお金にガメツイと俗称される商売上手さであり、京都や近江商人とも通じる、華やかさはなくとも手堅くしぶとく、変化や逆境を進化へのチャンスと捉える関西商法、鋭いといわれる商魂の真髄なのかと大いに関心させられ、学ばせてもらったものである。
 現場の実務や事情、企業の財務に精通しておらず、それらはそれぞれ担当の部下や公認会計士、税理士任せで、自らは会社の財務諸表が素早く読み取れず、第一線の現場に足を運ばず、ハイヤーの送り迎えで、市場を自分の足で歩き回ることもなく、豪勢な社長室でコンピューターの数値や報告資料を見るだけという経営者や、職場でスリッパに履き替えて執務し、メールに懸りきりといったよう社員は成功しないし、こういう企業の繁栄は望めないといわれる。
 こんなちょっとした所作からでも、鋭いビジネスマンなら重要な信用情報を得て判断することは出来るものであるから、一企業の信用は社長以下全社員で築き上げ、守るものだと心がけること。
 要はそれを習慣的に継続実践しているかどうか、平凡な当たり前のことを、当たり前のように、正しく行えることが非凡なのであり、大きな差がつくこととなる。
 次に、経営者としては、自社の経営実態を財務面から明確に認識・把握し、経営意思決定や戦略立案の正しい判断に役立て、健全経営の計器とするため、営業マンにとっては、取引先の信用度を認識し販売促進や売掛債権の保全・回収に役立て得る計器としての財務諸表の分析的速続法につき、その要点を列挙しておこう。
 1.財務諸表とは、貸借対照表、損益計算書、製造原価報告書、利益処分明細書などで構成される企業の財務的実態報告書といえ、俗に決算書と称され、国家財政では国民経済計算がこれに該当する、最高位機密の財産目録とも言える重要書類であるから、完全に信頼されない限り、部外者に内容を話したり見せたりするものではないので、これに関して話を触れる場合には、慎重な配慮と、知り得た秘密の保護、応答への協力謝意とこれまでの経営努力や成果への賞讃に留意することが大切である。
 2.財務諸表は事業活動の結果が数値で表現されているので、その分析からの経営診断では、①収益性(各段階・各分野での利益率、事業経営に投入した価値に対する利益率など)、②安全性(資金の調達と資産のバランス、資金繰り状態など)、③活動性(商品や設備の回転率、資金循環の効率性など)、④生産性(数値的の捉え表現し難い社員の能力や効率的な働きぶりなどは、この労働力量に対する売上げや収益の比率、投入した設備投資や機械装備の効率的活用成果などから覗い知ることが出来る)といった4面から、その全体的なバランスを分析・評価し、その他に数値だけでは判断し難い⑤経営者の人格や手腕、市場競争力、経営環境、組織力、社員の士気・能力などを総合的に加味して判断・評価する。
 3.企業の信用度や健全性を理解する上で最も大切なことは、人体の健康診断書でも血圧やその循環状況が重視され、いくらよく食べ(生産)、よく消化し(消費)、良く働いても(営業活動状況を測定する諸経費)、結果として下痢などで栄養が身につかない(最終利益の確保、剰余保留の貯金)のでは健全な状態とはいえなのと同じで、先ずは損益面に関心を持ち、生産・販売額-製造・仕入原価=粗利益、そこから営業諸経費を差し引いた営業利益、さらに営業外の損益を加減した純利益、税金を納付した後の税引き後純利益、配当などの社外流出経費を差し引いた当期繰越純利益などを段階的に追跡・分析するが、要領のよい速読術では、最終的純利益(最下段に結論的に記されている)から追求し、それに問題なければ他は追求する必要がなく、問題があれば、どの段階で経費がかかり期待通りの収益が得られなかったかを逆に辿って追求する。この点は下品な例えの表現で恐縮だが、解り易く「尻を見てから顔(生産・売上高)を見て惚れよ」とご記憶願いたい。
 4.貸借対照表は企業の財産目録書といえ、左欄の資産の部(簿記では借方)、右欄の負債・資本の部(簿記では貸方)が対照的に比較し易い一覧性に記され、それぞれ、換金性のある流動資産から換金性のない固定資産、直ぐに支払わねばならない短期流動負債、長期にわたり返済すべき長期流動負債、返済の必要がない安定した元金の自己資本といった順に表記されている。借方は、調達した資金をどんな資産にしたかという資金の使途が、貸方は、その資金をどんな方法で調達したか、短期の掛買いか、金利のかかる短期か長期の借金か、安定した自己の元入れ金や利益の蓄積かが理解できる。最近は帳簿上だけでなく、実際上の資金繰り重視で、勘定合って銭足らずとならないための関心が強くなっている。故にここでは右側の資金調達に重点を置いて分析し、わかり易く「右は左のスポンサー」とご記憶下さい。
 以上のような信用調査の方法は、そんなに専門的で高度な知識や技能が必要とされるものではなく、誰でもこれまで、日常的に実施してきたことである。例えば信用できる友人かどうかを判断する場合、無意識的に、持ち物や服装、住居、マイカーの車種、お金使いなどから、あいつは金回りが良いようだなどと判断されてきたであろう。
 要はちょっとした物事への新鮮な興味と意識の持ち方次第であり、その差が大きな成果の差となるのだ。


著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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